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公開から14年「最高傑作と言われるだけある」「観て損はない」称賛止まない『至高映画』

  • 2026.1.18

一度観ただけなのに、なぜか心の奥に居座り続ける作品があります。物語の衝撃的な展開や登場人物の選択、言葉にならない感情の揺らぎ――それらは鑑賞が終わった瞬間で完結するものではなく、時間が経つほどに静かに思い出され、観る者の記憶に深く刻まれていきます。

今回は、そんな「一度観ると忘れられない作品」をテーマに、強烈な余韻を残した名作をセレクトしました。観終えたあとも心から離れず、ふとした瞬間に思い返してしまう――そんな体験をもたらしてくれる作品たちをご紹介します。

第3弾として取り上げるのは、映画『麒麟の翼 劇場版・新参者』(東宝)です。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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クリネックスの新CMに出演する、新垣結衣(C)SANKE
  • 作品名(配給):『麒麟の翼 劇場版・新参者』(東宝)
  • 公開日:2012年1月28日

東京・日本橋。日本橋の象徴とも言える、翼のある麒麟像の下で、一人の男性が胸を刺され、命を落とします。

被害者は、自動車部品メーカーに勤める青柳武明(中井貴一)。事件を担当する刑事・加賀恭一郎(阿部寛)は、ある一点に強い違和感を覚えます。致命傷を負いながら、青柳はその場で倒れず、助けを求めることもなく、8分間ものあいだ歩き続けていたのです。なぜ彼は、縁もゆかりもない日本橋まで辿り着いたのか。なぜ、誰にも助けを求めなかったのか。

容疑者として浮上したのは、青柳のバッグを持って逃走中に事故に遭い、意識不明となった青年・八島冬樹(三浦貴大)。警察は金品目的の犯行と見て捜査を進めますが、冬樹の恋人・中原香織(新垣結衣)は、彼の無実を必死に訴えます。

一方、独自に捜査を進める加賀は、次第に“事件の裏にある、いくつもの人生のすれ違い”に気づき始めます。真実に辿り着いたとき、そこに待っていたのは、あまりにも残酷で、あまりにもやるせない結末でした。

「なぜ、そこまで歩いたのか」という問い

本作を貫く最大の謎は、「なぜ青柳武明は、命を削りながら8分間も歩き続けたのか」という一点です。それは、推理によって解き明かされる“トリック”ではなく、人間の選択と後悔が積み重なった結果でした。

家族のこと。仕事のこと。そして、伝えられなかった想い。加賀が真相に近づくほど、事件は“誰か一人の罪”では済まされない形を帯びていきます。SNSで「なんだこの辛すぎる話は」という声が多く見られるのも、この構造ゆえでしょう。

怒涛の展開と、現実に引きずり込まれる感覚

物語は、決して派手なアクションで加速するわけではありません。しかし、一つの事実が明らかになるたび、別の人生が浮かび上がり、感情の波が静かに、しかし確実に押し寄せてきます。

SNSでも、「怒涛の展開」「リアルで引きずり込まれる」と語られるように、観客は気づけば登場人物たちの選択の重さをそのまま背負わされているのです。

加賀恭一郎という刑事は、決して感情を露わにしません。それでも、その静かな視線は観る者に問いを投げかけ続けます。「もし、知ろうとしていたら」「もし、あの時話を聞いていたら」――結果は変わったのではないだろうか、と。

新垣結衣が体現する“信じる側の痛み”

本作で強い印象を残すのが、新垣結衣さん演じる中原香織です。彼女は、世間から“犯人の恋人”として冷たい視線を向けられながらも、ただ一人、八島冬樹の無実を信じ続けます。

彼女は感情的に叫ぶわけでもなく、悲劇のヒロインを演じるわけでもありません。それでも、その佇まいから伝わってくるのは、“信じることをやめなかった人間の痛み”です。

新垣結衣さんは、その繊細な感情の揺れを、過剰な演技に頼らず、静かに、確実に表現しています。その静けさの中にこそ、声にならない叫びとなった感情が宿っているように感じられるのです。だからこそ、物語の終盤、彼女が背負う現実は、観客の胸に深く突き刺さります。

真実は、救いになるとは限らない

『麒麟の翼 劇場版・新参者』は、事件が解決した瞬間にカタルシスを与えてはくれません。むしろ、すべてが分かったからこそ、どうしようもない後悔と哀しみが残ります。

それでも、この作品は語りかけてきます。知らなかったこと。向き合わなかったこと。その一つひとつが、どれほど大きな結果を生むのかを。

観終わったあと、しばらく余韻から抜け出せない。そして、自分自身の“誰かとの距離”を考えずにはいられなくなる。だからこそ、『麒麟の翼 劇場版・新参者』は、一度観ると忘れられないのです。SNSでは「最高傑作と言われるだけある」「観て損はない」と今なお語られるほど、静かで、重く、それでも確かに心に残り続ける映画体験です。


※執筆時点の情報です