1. トップ
  2. 「控えめに言って天才的」公開から8年 “神作”として君臨する完成度…「終わった瞬間呆然」席を立てない視聴者が相次いだワケ

「控えめに言って天才的」公開から8年 “神作”として君臨する完成度…「終わった瞬間呆然」席を立てない視聴者が相次いだワケ

  • 2026.1.14

一度観ただけなのに、なぜか心の奥に残り続ける作品があります。衝撃的な展開や忘れがたいラスト、登場人物たちの選択や感情が、時間が経ってもふとした瞬間によみがえり、観た当時の気持ちまで思い出させる――そんな体験をしたことはありませんか。今回は、“一度観ると忘れられない作品”をテーマに、強烈な余韻と深い印象を残した名作をセレクトしました。

第3弾として取り上げるのは、東野圭吾原作、加賀恭一郎シリーズの集大成とも言える一作『祈りの幕が下りる時』(東宝)です。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

undefined
大正製薬の総合感冒薬「パブロン」のCMキャラクターに起用された松嶋菜々子(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『祈りの幕が下りる時』(東宝)
  • 公開日:2018年1月27日

東京都葛飾区、荒川沿いの古いアパートの一室で、死後20日ほど経過した腐乱死体が発見されます。顔も年齢も判別できず、分かっているのは“女性の遺体”という事実だけ。警視庁捜査一課の松宮脩平(溝端淳平)は、鑑識も引き払われた簡素な部屋で、カレンダーに書き込まれた“橋の名前”に気づきます。やがてDNA鑑定により、遺体は滋賀県在住の押谷道子(中島ひろ子)であることが判明します。

遺体の発見された部屋には、9年前から越川という男が住んでいました。捜査班は越川を容疑者と見て捜査を進めますが、松宮は同時期に発生した新小岩河川敷でのホームレス放火殺人事件との奇妙な共通点に気づきます。越川と、焼死したホームレスは同一人物なのではないか――。

生活感のない部屋、複数の偽名、そして“橋の名前”に隠された意味。なぜ、押谷道子は滋賀から東京へ向かったのか。松宮は滋賀へ赴き、聞き込みを進める中で、押谷の中学時代の同級生浅居博美(松嶋菜々子)の存在に辿り着きます。

東京・明治座の演出家として成功を収める博美。彼女は、押谷が老人ホームに入所している母・厚子(キムラ緑子)のことで訪ねてきたことは認めますが、事件当日のアリバイもあり、捜査は行き詰まります。そんな中、松宮は博美の事務所で、彼女と一緒に写る一枚の写真を目にします。そこにいたのは、日本橋署勤務であり、自分の従兄でもある刑事――。加賀恭一郎(阿部寛)だったのです。

点と点が静かに、しかし確実に結ばれていく。その先に待っていたのは、あまりにも切なく、祈ることしかできなかった真実でした。

ミステリーの皮を被った、親子の物語

映画『祈りの幕が下りる時』は、連続殺人事件を追う刑事ミステリーでありながら、その本質は、親と子の人生が交錯した物語にあります。

なぜ人は、嘘を重ねるのか。なぜ罪を背負い続けるのか。そこにあるのは、自己保身ではなく、“守りたかった誰か”の存在です。事件の真相に近づくほど、謎はほどけていくのに、心はどんどん重くなっていく。

解決=救い、ではない。その現実を、この作品は容赦なく突きつけてきます。

松嶋菜々子が体現する、沈黙の痛み

本作で強烈な印象を残すのが、松嶋菜々子さん演じる浅居博美です。感情を露わにすることはほとんどなく、終始、凛とした態度を崩さない彼女。しかし、その静けさの奥には、長年抱え続けてきた後悔と祈りが、確かに存在しています。

松嶋菜々子さんは、台詞ではなく、視線や間、沈黙によって博美の人生を語ってみせます。だからこそ、物語が終盤へ向かうにつれ、その“何も語らない姿”が、痛いほど胸に迫ってくるのです。

視聴後「席を立てなかった」ワケ

本作が“忘れられない映画”と語られる理由の一つが、タイトルの意味が明らかになる瞬間にあります。

SNSでは、「タイトルの意味が分かった時どうしようもなく切ない」「終わった瞬間呆然としてしまった」「エンドロールが終わっても暫く席を立てなかった」「しばらく放心状態」といった声が多く見られました。それは、どんでん返しの驚きではありません。派手な展開でもありません。ただ、積み重ねてきた人生と想いが、静かに腑に落ちた瞬間の、圧倒的な切なさ。『祈りの幕が下りる時』という言葉が、そのまま観る者の心を表しているかのようで、あまりの没入感に“席を立てない”視聴者が相次いだのではないでしょうか。

救われないからこそ忘れられない映画『祈りの幕が下りる時』は、観終わったあと、爽快感も達成感もありません。あるのは、どうしようもない切なさと、それでも誰かを想ってしまう人間の弱さ。けれど、その感情こそが、この作品を“忘れられない一本”にしています。SNSでは「開始5分で引き込まれた」「間違いなく人生で一番の名作」「神作に出会えた」「控えめに言って天才的」などの声が見られ、公開から長い時間を経てもなお、絶大な支持を得ていることがうかがえます。

誰かの人生を思い、誰かの選択を思い、自分自身の“祈り”と向き合ってしまう。静かに、深く、心を締めつける映画体験。もしまだ観ていないなら、ぜひ覚悟を持って触れてみてください。きっとあなたも、エンドロール後の客電がつく中で、しばらく立ち上がれなくなるはずです。


※執筆時点の情報です