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「安易にオススメできない」“覚悟して観たい”至高の一作…「本物の映画」と称される“圧巻の完成度”

  • 2026.1.6

人は、どこまで追い詰められたときに“本性”をさらけ出すのでしょうか。正義や理性、常識や倫理ーー。それらが一枚ずつ剥がれ落ちていった先に残るものは、人間らしさなのか、それとも醜さなのか。世の中には、観ている最中ずっと心を締めつけられ、鑑賞後もしばらく立ち上がれなくなるような映画があります。本記事では「人間の業を描いた名作映画」を厳選。今回は第1弾として、2025年公開の映画『爆弾』をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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サントリー新商品&新CM発表会に出席した伊藤沙莉(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『爆弾』(ワーナー・ブラザース映画)
  • 公開日:2025年10月31日
  • 出演者:山田裕貴、伊藤沙莉、染谷将太、坂東龍汰 ほか

酔い潰れて逮捕されたごく平凡な男。スズキタゴサク(佐藤二朗)と名乗る男は、「霊感で事件を予知できます。これから3回、次は1時間後に爆発します」と不気味なことを淡々と告げました。場所も、時間も、目的も明かさないまま、男は挑発的な態度で警察を翻弄していきます。警察は半信半疑のまま捜査を開始しますが、やがて街の各所で不穏な兆候が現れ始めて……。刻一刻と爆発のタイムリミットが迫るなか、スズキの言葉一つ一つが、現実とリンクしていきます。なぜ男は爆弾を仕掛けたのか。その動機は、単なる犯罪欲求なのか、それとも社会への歪んだ復讐なのか。

「でも爆発したってべつによくないですか?」挑発的な言動を繰り返すスズキ。しかし彼の挑発にはあるヒントが隠されていたのです――。

極限状態が暴く「人間の業」…怪演が生み出した逃げ場のない緊張感

本作は、「このミステリーがすごい!2023年版」で第1位に選ばれた呉勝浩さん原作のベストセラー小説『爆弾』の実写化作品です。

取調室という密室と、外の世界で進行する緊急事態。二つの空間が同時進行で描かれる中で、警察、犯人、そして名もなき市民たちの感情が交錯していく。誰かが無差別殺人の被害者になるかもしれない。そんな状況下で、人は冷静さや倫理をどこまで保てるのかを観ているこちら側にも問われる構造が、この映画の最大の特徴です。

本作には、明確なヒーローはいません。描かれているのは、恐怖に怯え、責任から逃れようとし、それでも選択を迫られる“人間”だけです。観ている側もまた、安全な位置から裁くことを許されず、「自分ならどうするか」という問いを突きつけられる構造になっています。「正義のため」「多くを救うため」という言葉が、いつの間にか“切り捨てる理由”へとすり替わっていく過程は、あまりにも生々しいです。恐怖にさらされたとき、人がどれほど簡単に他者を切り捨て、自己保身に走る存在なのかという、冷酷な真実。

さらに特筆すべきは、伊藤沙莉さんの存在感です。彼女が演じるキャラクター、交番勤めの巡査・倖田は、感情を抑えながらも次第に追い詰められていく内面を繊細に表現し、物語に強烈なリアリティを与えています。声の震え、視線の揺れ、沈黙の間。伊藤沙莉さんならではの演技が、「理性と恐怖の狭間で揺れる人間」をこれ以上ないほど生々しく映し出します。派手な演出に頼らず、俳優の演技そのものが緊張感を生み出している点も、本作の完成度を高めています。

過激すぎてSNSでも分かれる賛否…娯楽の枠を超えた衝撃作品

単なるサスペンス映画とは一線を画す映画『爆弾』。劇場公開が開始されると、SNSでは賛否を含め、強烈な感想が相次ぎました。「過激な描写が大丈夫な人はぜひ観に行って見て欲しい映画」「史上最悪のドM野郎って感じ」「終始歯を食いしばって観た」どれも、この映画が“楽しい”では済まされない体験であることを物語っています。観る覚悟が必要な作品である一方、確実に心に残るという点で、多くの観客の記憶に刻まれています。また一方で、「批評できないくらい感情を揺さぶってくるものこそ本物の映画」「安易におすすめできないが、おすすめできない理由を聞かれるとネタバレになってしまうから苦しい」と、映画としての完成度に唸る声が相次いで投稿されています。

映画『爆弾』は、決して万人向けの映画ではありません。観終わったあとに残るのは、カタルシスよりも、重たい問いです。それでもなお、本作が名作と呼ばれる理由は、人間の醜さから目を逸らさず、最後まで描き切った誠実さにあります。

恐怖の中で露わになる本性。正義の名のもとに行われる選別。そして、そのすべてを生み出す“人間の業”。このシリーズの第1弾として、映画『爆弾』はあまりにも相応しい一作だと言えるでしょう。心に余裕のあるとき、そして覚悟ができたときに。ぜひ一度、この息苦しい傑作と向き合ってみてください。きっと、忘れられない体験になるはずです。


※執筆時点の情報です