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『妊娠糖尿病』になりやすい人には共通点があった…医師が教えるポイントとは

  • 2025.11.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

妊娠中に血糖値が高くなる「妊娠糖尿病」。特別な人だけがなる病気ではなく、妊娠によるホルモン変化が誰にでも影響し得ます。とはいえ、多くのケースは食事や運動など生活習慣を整えることで予防・管理が可能です。本記事では、妊娠糖尿病にないための基本知識と、生活の中で実践できる予防ポイントを医師の視点からまとめました。

妊娠糖尿病とは?妊娠中に起こる血糖値のトラブル

妊娠糖尿病とは、それまで糖尿病と診断されたことがない人でも、妊娠をきっかけに血糖値が高くなってしまう状態のことです。妊娠後期に向け、胎盤から分泌されるホルモンが増えることで、体は自然と血糖値を上げやすくなります。これは、赤ちゃんに十分な栄養を届けるための生理的な変化です。

しかし、ホルモンの影響が大きくなると、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」という状態に陥り、血糖値が必要以上に上がってしまう場合があります。妊婦健診で血糖値の異常が疑われた場合には、「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」という検査によって詳しく調べられます。

妊娠糖尿病が見つかった場合、適切に管理しないと母体では妊娠高血圧症候群や羊水量の異常が起こる可能性があり、赤ちゃんにも巨大児や出生後の低血糖などの影響が出ることがあることも。そのため、早期の発見とケアが極めて重要です。

妊娠糖尿病になりやすい人とは?“体質・年齢・妊娠歴”が鍵

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

妊娠糖尿病は誰にでも起こりうる疾患ですが、発症しやすい人にはいくつかの共通した特徴があります。自分がどれに当てはまりやすいかを知っておくことで、妊娠初期から意識的に生活習慣を整えることができ、予防にもつながります。

 生まれ持った体質・遺伝的背景

まず大きな要因として挙げられるのが、遺伝的な体質です。家族に糖尿病の人がいる場合、とくに両親や兄弟など近い親族が糖尿病である場合は、インスリンが効きにくい体質を受け継いでいる可能性があります。太りやすい体質や、もともと血糖値がやや高めの傾向がある人は、妊娠をきっかけに血糖値が上がりやすくなるため注意が必要です。

加えて、妊娠前にBMIが25以上の肥満傾向にある場合もリスクが高くなることがわかっています。脂肪細胞が増えるとインスリンの作用が弱まりやすく、妊娠によるホルモン変化が重なるとさらに血糖値が上がりやすい状態になります。

年齢による影響

35歳以上での妊娠も、妊娠糖尿病のリスクを高めます。加齢とともにインスリンの働きが弱まりやすく、同じ生活をしていても若い頃より血糖値が上がりやすくなるためです。近年は妊娠の高年齢化が進んでいることから、このリスクに該当する妊婦さんが増えており、妊娠初期から血糖値の管理が必要なケースも少なくありません。

過去の妊娠・出産経験

過去の妊娠で妊娠糖尿病と診断されたことがある場合は、次の妊娠でも再び起こる可能性が高いとされています。また、原因不明の流産が続いたり、過去に4,000g以上の赤ちゃんを出産した経験がある人も、妊娠糖尿病の傾向が潜んでいる可能性があります。以前の妊娠の情報は、今回の妊娠における大切なヒントになるため、医師に詳しく伝えておくことが重要です。

妊娠経過での変化

妊娠初期から尿糖が出やすい、急激に体重が増えている、羊水過多と診断されたなど、妊婦健診で何らかの点を指摘された場合にも注意が必要です。これらは「血糖値が上がりやすい状態に入ってきている」というサインであり、早めに見直すことで発症を防ぎやすくなります。

こうした特徴に当てはまる場合でも、妊娠期間を通じた食事や運動の工夫によって、妊娠糖尿病を防いだり、早期に発見して適切に管理することは十分に可能です。

気づくことと予防することが大切

妊娠糖尿病は、妊娠中の自然な体の変化で誰にでも起こる可能性があります。しかし、発症しやすい体質や年齢、過去の妊娠歴といった特徴を知っておくことで、日常生活の中で意識すべきポイントが明確になり、予防の精度も高まります。

妊娠初期から自分のリスクを把握し、食事・運動・体重管理を継続することが大切です。まずはチェックポイントを1つずつ確認してみてはいかがでしょうか。


監修者:浅草橋西口クリニックMo 頴川 博芸

静岡県沼津市出身。日本大学医学部中退、東海大学医学部卒業、順天堂大学大学院医学研究科修了。順天堂大学医学部附属静岡病院で初期臨床研修修了後、順天堂大学医学部附属順天堂医院、越谷市立病院、順天堂大学医学部附属練馬病院などを経て現在は浅草橋西口クリニックMo院長、順天堂大学医学部附属順天堂医院食道・胃外科非常勤助手。資格は日本専門医機構外科専門医、日本温泉気候物理医学会温泉療法医、日本医師会認定産業医など。趣味は旅行。