1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 【うつわ楓 島田洋子さん推薦】陶芸家・上田浩一さんの“陶胎漆器”に宿る、漆と陶の新しいかたち【目利きの視線】

【うつわ楓 島田洋子さん推薦】陶芸家・上田浩一さんの“陶胎漆器”に宿る、漆と陶の新しいかたち【目利きの視線】

  • 2025.11.14

各界の目利きが注目する器やアート、暮らしの道具を紹介。今回は、漆で仕上げた陶胎漆器について、「うつわ楓 」島田洋子さんに教えていただきました。

漆の衣をまとった上田浩一さんの陶胎漆器

漆がもたらす機能美に脱帽主役にも脇役にもなる器

「私自身は料理を盛る云々以前に、器に触れているだけで落ち着くというか、手の中でいいなぁと眺める時間が好きなんです」と笑う島田洋子さん。器好きが高じて、店を開いて四半世紀。使い勝手がよくコーディネートしやすい、使う人にやさしい器揃えに定評があり、スタイリストなどプロの信頼も厚い目利きです。 そんな島田さんが「常々、取材の機会をいただいたら、紹介したかった作家のひとり」というのが、陶芸家・上田浩一さん。多彩な技法の使い手で、なかでも陶胎漆器の作品に「ひと目惚れ」してしまったそう。 陶胎漆器とは陶磁器の素地に漆を塗り、低温で焼きつけた器のこと。その歴史は古く縄文時代にまで遡るといわれます。上田さんの陶胎漆器は本焼きした陶器に漆を塗りつけ布で拭き取ったり、ペインティングナイフで引っ搔いたり、削ったり。 「納得のいく質感になるまで塗っては焼きを繰り返し、途方もない時間と労力で作られています。シンプルながら趣があり、板皿なんてまるで抽象絵画のよう。オブジェのように壁に飾る方もいらっしゃいます。それでいて料理や果物、お菓子などなにをのせても似合うし、引き立つ。脇役としての実力も確かです」 素材が土ゆえ、木製の漆器では不可能な形が作れるのも魅力。「特に上田さんの作るポットや急須は、サイズから持ち手と注ぎ口の角度、蓋の収まりまで文句のつけどころがありません。そもそも水切れのいい形のうえに漆が水を弾くので、お茶を淹れるたびに惚れぼれするようなキレのよさ」と島田さん。汚れがつきにくく、落としやすいのも美点です。 器は暮らしのなかでこそ生きるもの。島田さんの目利きの先には常に心地よい日々があり、上田さんの作品もその風景のなかにありました。

上田さんの物作りの「軸」という急須。機能美と愛嬌を大切にしているそうで、茶壺(ちゃふう)と呼ばれる中国茶用の急須もどことなくユーモラス。胴径7×H6.5㎝ 16,390円。盃にも使える茶杯は各φ7×H5.5㎝ 4,730円。板皿W41×D13×H1.5㎝ 18,700円。背面にフック用の穴があり、壁に飾ることもできます。(φ=直径、W=幅、D=奥行き、H=高さ)

何層にも塗り重ねた漆のテクスチャーが食卓のアクセントに

いつもの副菜やお菓子がドラマティックに見えるどら鉢。φ19.5×H3 ㎝ 12,540円。ひっくり返してステージのように使っても素敵です。

形のいい石や美しい枝ぶりなど、自然が織りなす無作為の美を目指しているという上田さん。何げない皿もリムと見込みのバランスが絶妙で、和洋を問わず料理が映えます。左上からφ 23.5 × H1.5 ㎝ 11,550円。中央のふき漆の皿φ20×H1.5㎝、下φ15×H1.5㎝ 各6,600円。

貫入が美しい新作。白化粧を施した後に無色透明の釉をかけ、さらに漆を塗るという手の込みようです。φ20×H2.5㎝ 9,900円。「漆をふいてあるので、通常の貫入よりもゆっくり経年変化するはず。その過程も楽しみながら使っていただきたいですね」と島田さん。

上田浩一さん
1991年、東京生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科陶磁専攻卒業。同大学研究室で教務補助員を務め、2016年、神奈川県小田原市に開窯。陶器に漆を焼きつけた陶胎漆器を中心に、さまざまな景色の作品を制作している。

【SHOP DATA】うつわ楓

店名は春の若葉、秋の紅葉など四季折々の姿を見せる「楓」にちなんでいるそう。器を選ぶ、使う、合わせる楽しみを提案しながら、長年通うお客様の「買い足したい」というリクエストに応え、定番と呼べるアイテムも多く揃えています。

東京都渋谷区神宮前4-8-6
メイプルハウスF-1
☎03-3402-8110
営業時間/12:00〜19:00
定休日/月曜・火曜(個展会期を除く)
http://utsuwa-kaede.com 撮影/松村隆史 構成・文/早川ちかこ ※素敵なあの人2025年12月号「目利きの目線 第28回」より
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

この記事を書いた人 素敵なあの人編集部

「年を重ねて似合うもの 60代からの大人の装い」をテーマに、ファッション情報のほか、美容、健康、旅行、グルメなど60代女性に役立つ情報をお届けします!

元記事で読む
の記事をもっとみる