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29年前、大人気アニメEDが放った100万ヒット タイアップ以上に大ヒットしたワケ

  • 2025.12.11
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

「29年前のあの冬、どんな気持ちでテレビの前に座ってた?」

寒さの中でも、妙に胸が熱くなる瞬間があった。放課後の体育館、消えかけた夕焼け、仲間の笑い声。うまくいかない日も、コートに立てば全部が報われるような気がしていた。そんな“青春の体温”を、そっとすくい上げた曲がある。

ZARD『マイ フレンド』(作詞:坂井泉水・作曲:織田哲郎)――1996年1月8日発売

テレビ朝日系アニメ『SLAM DUNK』最終期エンディングテーマとして知られ、発売と同時にトップに駆け上がり、最終的には100万枚以上を売り上げた。文字通り、時代の空気を変えた一曲だ。

乾いた冬の空に響いた、あの透明な声

『マイ フレンド』は、ZARDとして17枚目のシングル。作品を語るときに外せないのが、坂井泉水の声が持つ“温度”だ。決して強く押しつけるわけではないのに、気づけば心にふっと居場所を作ってしまう独特の優しさがあった。

どこか冬の空気みたいに澄んでいて、シンプルに刻まれるバンドサウンドと調和して、青春の一場面をそのまま映し出しているようだった。

編曲を担当した葉山たけしによるサウンドは、過剰さを排したバランスの良さが際立つ。ギターとドラムがストレートに鳴りながら、坂井の声を包み込むように広がっていく。その“透明感と力強さの同居”が、この曲をZARD屈指の名曲へと押し上げた。

“SLAM DUNKの終わり”とともに刻まれた記憶

『マイ フレンド』が多くの人の記憶に残った理由のひとつが、『SLAM DUNK』エンディングテーマだという点だ。青春の苦しさも、喜びも、悔しさも全部味わわせてくれた作品。そのラストシーンに流れるこの曲は、視聴者の心にまるで“卒業証書”のようにそっと沈んでいった。

「あぁ、終わっちゃうんだ」

そう感じた瞬間の胸の痛みと、この曲が寄り添うような余韻。その組み合わせが、聴く人の記憶を強く結びつけた。

ただのタイアップ以上に、作品世界と曲の“気配”が奇跡的に合っていたからこそ、今でも当時を思い出すたびに、ふいに胸がきゅっとするのだろう。

100万枚超の背景にあった“ZARDらしさ”

ミリオンセールスを記録した『マイ フレンド』は、ZARDの人気がピークへと向かう象徴的な作品でもあった。

織田哲郎によるメロディは、流れるようでいてほどよく切なさを含み、聴く側の心に余白を残す。坂井泉水の詞とメロディの相性は抜群で、この時期のZARDが持つ“芯の強さ”をストレートに示していた。

ただし、この曲が特別だったのはヒットしたからではない。

聴く人それぞれが、自分の“あの頃”をそっと重ねられる余白があったこと。

この“余白”こそ、ZARDが時代を越えて愛され続ける理由のひとつだ。

時代とともに過ぎ去っても、青春の光は消えない

1996年のリリースから29年。部活帰りに聴いていた人も、テスト勉強の合間に流れてきた人も、アニメで初めて耳にした人も。それぞれの場所で青春があり、そのそばに『マイ フレンド』があった。

今、改めて聴いてみると、曲が持つ“まっすぐさ”が驚くほど新鮮に響く。時代が変わっても、心の深いところで反応する何かがある。

それは、この曲が青春そのものを直接描いたわけではなく、“青春が終わる瞬間の静けさ”を抱えていたからかもしれない。

終わりは寂しい。だけど、その寂しさこそが思い出を輝かせてくれる。

『マイ フレンド』は、その気持ちの温度を、29年経った今も変わらず届けてくれる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。