1. トップ
  2. 27年前、再始動の大人気バンドが放った70万ヒット 復帰作にとどまらず1位を獲ったワケ

27年前、再始動の大人気バンドが放った70万ヒット 復帰作にとどまらず1位を獲ったワケ

  • 2025.12.9

冬の冷たさがゆっくり溶けて、空気の色が変わりはじめる1998年4月。通りを歩く人々の足取りも、どこか軽やかだった気がする。そんな季節に、ひとつの“音の再会”が日本中をざわつかせた。あの沈黙の先に、どんな鼓動が待っていたのか。覚えているだろうか。

LUNA SEA『STORM』(作詞・作曲:LUNA SEA)――1998年4月15日発売

約1年にわたる活動休止を経て放たれたこのシングルは、まさに“再始動の狼煙”だった。ランキング初登場1位、そして70万枚以上のセールスという記録が、その衝撃を雄弁に物語っている。

風が走り抜けた瞬間のような“疾走感”

『STORM』というタイトルが示す通り、この曲は聴いた瞬間に風が吹き抜ける。

冒頭からギターが鋭く切り込み、タイトなリズムが一気に景色を塗り替えていく。再始動を宣言するような推進力。その勢いは、“戻ってきたというより、さらに遠くへ飛び越えていく”ような感覚さえあった。

RYUICHIの声は透明度と力強さを同時に宿し、SUGIZOとINORANのギターが織りなすレイヤーは、軽やかさの中に凛とした緊張感を与えていた。Jと真矢のリズムセクションもまた、曲全体のスピードを底から支え、止まることなく前へ前へと押し出していく。

undefined
1998年、横浜スタジアムでおこなわれたLUNA SEAのライブより(C)SANKEI

“休止期間”を越えたからこその音

この曲が放たれた背景には、約1年間の活動休止がある。

1996年末のツアー終了後、それぞれがソロ活動に取り組んだ彼らは、個々の表現を磨きながら、バンドとして再び集う瞬間を待っていた。その“充電期間”があったからこそ、この曲には張りつめたエネルギーと、鮮やかな解放感が宿ったのだろう。

再開第1弾シングルでここまでの破壊力を見せつけたバンドは、決して多くない。その意味で『STORM』は、“ただの復帰作”ではなく、“次のフェーズへ向かう宣言”として捉えられていた。

90年代後半、ロックとポップの境界を越えた存在感

1998年は、音楽シーン全体が多様性を増し始めた時期。ダンスミュージックやポップスが勢いを増していく中で、ロックバンドがどのように存在感を示していくのかが問われていた。

その渦中で『STORM』が提示したのは、“重くてしなやか”という、新たなバランス。ハードなギターリフにポップなメロディが乗ることで、ジャンルの垣根を越える開放感が生まれ、幅広い層へ鮮烈に届いていった。

“激しさなのに聴きやすい”“速いのに温度がある”

この絶妙な温度感が、当時のリスナーの心を一瞬でとらえた。

その後の快進撃を告げた“序章”

このシングルを機に、LUNA SEAは再び加速していく。6枚目のアルバム『SHINE』による全国ツアー、さらに大規模な展開へと繋がっていく流れの“スタートライン”に立っていたのが、この『STORM』だった。

活動休止明けというプレッシャーを跳ね返し、むしろ“より強い姿”で戻ってきたことを証明した一曲。今振り返ると、この曲が持つ光のような疾走感は、あの時代の空気を今も鮮やかに呼び起こしてくれる。

春風のように、いつも新しい

27年という時間が経っても、『STORM』は古びることがない。むしろ、あの瞬間に感じた“始まりの匂い”や、“もう一度走り出す勇気”が、聴くたびに新しく胸に宿る。

季節が巡るように、人は何度でも立ち止まり、また歩き出す。その繰り返しの中で、この曲は今も、そっと背中を押してくれるような存在だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。