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20年前、国民的グループが放った“逢いたくて”の旋律 ダンスナンバーをやめて50万ヒットしたワケ

  • 2025.11.29

「20年前の冬、どんな気持ちで街を歩いていたか覚えてる?」

年の瀬が近づくにつれ、空気は澄んでいくのに、心だけは少しざらついていく。白い息がゆっくりと昇る都会の夜、イルミネーションの下をすり抜けるようにして家路を急いでいたあの頃。そんな“冬の静けさ”が、ふいに胸に刺さる瞬間がある。2005年の12月も、まさにそんな空気が街を包んでいた。

EXILE『ただ…逢いたくて』(作詞:SHUN・作曲:春川仁志)――2005年12月14日発売

KDDI「au×EXILE」のCMに乗せて流れたこの曲は、華やかな年末の空気とは裏腹に、誰もが心の奥に抱えていた“言葉にできない想い”をそっと照らし出した。

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2003年、「キダム」東京追加公演公開リハーサルに来場したEXILE(C)SANKEI

途切れた想いが、そっと揺れた冬の夜

当時のEXILEは、すでに国民的グループとしての存在感を確立していた。『ただ…逢いたくて』は、彼らのダンスナンバーのイメージとは少し違う、“歌が前面に立つバラード”だった。

CMの映像とともに流れたメロディは、まるで冷えた夜風に混ざり込むようで、耳に入った瞬間に情景が立ち上がってくる。

静かに始まり、ゆっくりと温度を上げていく旋律。その上でATSUSHIとSHUNの透明度の高い歌声が、まるで吐く息の白さのように消えていきそうで消えない余韻を残していく

その“消えそうで消えない”質感こそが、この楽曲が冬の定番となった理由のひとつだ。

バラードとしての強度を決定づけた、緻密なサウンド

この曲の特徴は、派手な展開を排した“引き算の構成”にある。春川仁志によるメロディは、最初から最後まで感情の波を過剰に煽らず、あくまで穏やかに進む。だからこそ、一つひとつの言葉が胸に落ちていく。

ピアノが中心となるアレンジに、ストリングスが重なり、最後にほんの少しだけスケールを広げる。その慎ましさが、楽曲全体にどこか“手が届かない温もり”のような雰囲気を与えている。

感情を爆発させるのではなく、抱えたままそっと佇む。その姿勢が、当時のリスナーに強く響いた。

冬と携帯電話とEXILE──時代が生んだ特別な必然

2005年は、いわば“携帯メールで恋が動く”時代だった。デジタルのコミュニケーションが普及し、言葉が瞬時に届くようになったことで、「伝えられない想い」の輪郭が逆に濃くなった。

KDDI「au×EXILE」のCMでこの曲が流れたことで、“離れていても繋がりたい”という当時の価値観と、曲が持つ切なさが深く結びついた。初登場1位、50万枚以上を売り上げた背景には、そうしたタイムリーな空気もあったのだろう。

冬の街、携帯電話の光、静かなメロディ、その全部がひとつの記憶として溶け合っている。

“冬の名曲”として語り継がれる理由

『ただ…逢いたくて』が今も冬になると聴かれるのは、恋の形が変わっても、“会いたい気持ち”だけは変わらないからだ。大きなドラマがあるわけではない。派手なメッセージを打ち出すわけでもない。ただ、胸の奥に沈めていた想いを、そっとすくい上げてくれる。

「誰かを思い出してしまう」その瞬間のために存在している曲。

冬になると心が少しだけ柔らかくなるのは、この曲の旋律が、あの頃の自分や消えてしまった気持ちに光を当ててくれるからかもしれない。そして20年経った今、あの時の冬の空気を思い出すように、そっと再生ボタンに手が伸びる。

そのたびに、“逢いたい”という気持ちの普遍さを、静かに教えてくれる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。