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美の源泉に迫るファッションデザイナーのドキュメンタリー3選

  • 2025.11.3

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』
©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE


おしゃれが楽しい季節になりました。今回は、著名なファッションデザイナーのドキュメンタリー映画を紹介します。服やアクセサリーを通じてそれぞれが持つ美の哲学を表現した彼らの生き方に、きっと感銘を受けるはず。当時のコレクションの映像なども楽しめます。

信念と美しい生活が創り出す“持ち主と一緒に成長できる服” 『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

2024年6月に自身の名を冠するブランドのデザイナー職を退任したドリス・ヴァン・ノッテン。現在、その職は新クリエイティブ・ディレクターであるジュリアン・クロスナーに引き継がれていますが、ドリス自身もブランドやアートの活動は続けているようです。

草花のモチーフや刺繍を施したエスニックなデザインで知られるドリスですが、その美しさの源泉を知ることができる貴重なドキュメンタリーが本作です。

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

パリのグラン・パレで開催された2015春夏レディースコレクションからオペラ座で発表した2016/17秋冬メンズコレクション直後までの約一年間、それまで一切の密着取材を断ってきたドリスに初めてカメラが迫り、ショーの舞台裏、アトリエやインドの刺繍工房など手作業の現場を映し出します。

ドリスが語る「持ち主と一緒に成長できる服」を作りたいという信念や、「自由なクリエイションのため」に広告を否定してスポンサーも持たずに独立性を保ったことなど、仕事への真摯な想いに心打たれます。

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

さらには、まるでお城のようなアントワープ郊外の邸宅にもカメラが入り、草花に囲まれた美しい暮らしぶりを披露。

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

完璧主義者で知られるドリスは庭で摘んだ草花の活け方ひとつにもこだわりますが、そんな彼を公私ともに支えるパートナーのパトリック・ファンヘルーヴェも登場し、二人の馴れ初めを語る微笑ましいシーンも。時間があれば自分たちで料理をし、花を育て、犬や小鳥もいて、旅をして、そんな日常を大切にしているからこそ、優しくて繊細なデザインが生まれるのでしょう。ただただ美しさに見入ってしまいます。

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』

栄光と転落。ファッション界の革命児のスキャンダラスな半生 『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』

『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』© 2023 KGB Films JG Ltd

今から十数年前の2011年、ジョン・ガリアーノが逮捕されたというニュースが世間を賑わせました。

革新的なデザインで知られたガリアーノは、1995年にジバンシィが自身のブランドを引退した際に後任デザイナーとして抜擢され、英国人デザイナーとしては初めてフランスのオートクチュールメゾンを率いました。続いて96年にはジャンフランコ・フェレの後を継いでクリスチャン・ディオールのデザイナーに就任。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったガリアーノでしたが、2011年にパリのカフェで反ユダヤ主義的暴言を吐いた動画が拡散し、有罪となり、関係するブランドからも解雇され、すべてを失くしたのでした。

『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』© 2023 KGB Films JG Ltd

本作では、ガリアーノの栄光の過程を当時の貴重なコレクション映像とともに振り返るほか、事件から13年を経たガリアーノ本人がカメラの前に座り、洗いざらい語ります。暴言の背景には何があったのか、大切な人の相次ぐ死やアルコール依存症の問題などを自ら暴露したほか、ケイト・モスやナオミ・キャンベルなど親交のあるモデルや著名人が彼の人となりを明かします。

『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』© 2023 KGB Films JG Ltd

その一方で、ケヴィン・マクドナルド監督は、今も心の傷が癒えないという事件の被害者にもカメラを向けます。ガリアーノの栄光と転落、贖罪を通じて、人間の複雑な内面について考えさせられるドキュメンタリーです。

『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』

自由でパワフルでチャーミング、生涯現役を貫いた女性の生き様 『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』

『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』© VWI FILMS LTD 2018. All rights reserved.

2022年12月に81歳で逝去したヴィヴィアン・ウエストウッドは、生涯現役を貫いたデザイナーとしてだけでなく、信念のままに行動するパンクな生き方も含めて、今なお多くの人々に愛されている存在です。英国ブランドの「ヴィヴィアン・ウエストウッド」は1990年代に日本に上陸して大人気となりましたが、最近はZ世代の間で人気が再燃しているといいます。

本作は、そんなヴィヴィアンの生き様に迫った2018年製作のドキュメンタリーです。密着したカメラが映し出すのは、2016年2月のロンドン・ファッション・ウィーク秋冬ショーを控えた前夜。アトリエで行われていた最終チェックでは77歳にして現役のヴィヴィアンが厳しい指示を飛ばしており、その真剣さには感服するばかり。

若かりし頃、セックス・ピストルズと共にパンクムーブメントを生み出したヴィヴィアンですが、それまでの秘話やファッションデザイナーとしての躍進と挫折、無一文からの再出発など、波乱万丈な道のりが秘蔵映像と本人の自由で痛快な言葉で明かされます。さらに、二度の離婚や25歳年下のパートナーとの関係などプライベートな話題、環境保護アクティヴィストとしての活動など、あらゆる面からヴィヴィアン・ウエストウッドの魅力を知ることができます。

『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』

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構成・文

ライター 中山恵子

中山恵子

ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。

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