1. トップ
  2. おでかけ
  3. 「総合開館30周年記念 ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」が東京都写真美術館で開催中

「総合開館30周年記念 ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」が東京都写真美術館で開催中

  • 2025.10.8

こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。価値観や表現方法が多様化しているアートの世界を、ニュースや展覧会、作家や作品に注目したコラムにしてお届けする「今どきのアート」。近頃気になったのがこちら。

日本で最大規模!東京では初めての個展となる「総合開館30周年記念 ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」が東京都写真美術館で開催中!

出典:シティリビングWeb

ペドロ・コスタ《溶岩の家 スクラップブック》2010年 スライドショー 作家蔵

インナーヴィジョンズ

映画監督の作品を展示した東京都写真美術館の展覧会。写真と映像の持つ多様な性格や表現を幅広く紹介することができる東京都写真美術館ならではの企画だと感じました。

同展は、ポルトガルを代表する映画監督ペドロ・コスタによる日本最大規模で、東京では初めてとなる美術館での個展。

ペドロ・コスタは、2018年にポルトのセラルヴェス美術館で開催された「Companhia(コンパニア)」(ポルトガル語で「寄り添う」および「仲間」の意)展や、2022年から2023年にかけてスペイン各地を巡回した「The Song of Pedro Costa」展など、映画だけでなく展覧会という形式においても国際的に高い評価を受けてきたのです。

同展は、ペドロ・コスタが10代の頃に出会い深い影響を受けた、スティーヴィー・ワンダーのアルバム『インナーヴィジョンズ(Innervisions)』(1973)と同名のタイトルを掲げています。

出典:シティリビングWeb

《ジ・エンド・オブ・ア・ラヴ・アフェア》2003年 シングルチャンネル・ヴィデオ・プロジェクション 作家蔵

音楽を通して社会と個人の関係に迫ろうとしたこのアルバムの精神は、彼の映像制作の方法論とも深く響き合っています。

旧ポルトガル領アフリカのカーボ・ヴェルデから移住し、ポルトガルの首都リスボンのスラム街フォンタイーニャス地区で暮らす女性の過酷な日常を映し出した『ヴァンダの部屋』(2000)は、日本では2004年に劇場公開され、新たなドキュメンタリー表現として、大きな反響を呼びました。

出典:シティリビングWeb

ペドロ・コスタ《火の娘たち》2019年 5チャンネル・ヴィデオ・プロジェクション 作家蔵

集大成ともいえる初の大規模な個展

ドキュメンタリーとフィクションの境界を揺るがす独自の映像表現で、現代映画の最前線を切り開いてきたペドロ・コスタ。

これまでに発表された数々の作品は、カンヌをはじめとする国際映画祭で高く評価され、日本でもコスタの映画は多くの支持を集めてきました。近年は、映画だけでなく世界各地で展覧会も開催し、表現の領域を広げており、同展はペドロ・コスタのこれまでの活動の集大成ともいえる展覧会。

ペドロ・コスタのつくる映画は、暗闇と光の強いコントラストと、静謐かつ緻密な画面構成のなかに、現実の断片をすくい上げ、社会構造に鋭く切り込み、新たな視座を提示します。

今回の展示では、ポルトガルで暮らすアフリカ系移民の歴史を照らし出した『ホース・マネー』(2014)など、ペドロ・コスタ作品において重要な役割を担う、ヴェントゥーラをはじめとする登場人物たちや、彼らが生きる場所に関わる映像作品に加え、東京都写真美術館のコレクションも紹介。

出典:シティリビングWeb

ペドロ・コスタ《少年という男、少女という女》2005年 2チャンネル・ヴィデオ・プロジェクション 東京都写真美術館蔵

ペドロ・コスタの映像表現とその背景にある歴史的・社会的文脈に触れることで、「インナーヴィジョンズ」という主題を考察していきます。

インナーヴィジョンズという言葉には「内面のヴィジョンであり、内面から現れるヴィジョンでもある」という二重の意味があるようです。

ペドロ・コスタ

ペドロ・コスタは1958年、ポルトガル・リスボン生まれ。リスボン大学で歴史と文学を学び、映画学校では詩人・映画監督アントニオ・レイスに師事しました。

1989年の長編デビュー作《血》がヴェネチア国際映画祭で注目を集め、その後《骨》(1997)や《ヴァンダの部屋》(2000)で国際的評価を確立。カンヌ国際映画祭やロカルノ国際映画祭など受賞歴多数。《ホース・マネー》(2014)でロカルノ国際映画祭最優秀監督賞を受賞。《ヴィタリナ》(2019)はロカルノで金豹賞を受賞。アントン・チェーホフの戯曲『三人姉妹』に着想を得て制作した短編ミュージカル映画《火の娘たち》(2023)は第76回カンヌ国際映画祭で特別招待作品として上映され、各国で高い評価を得ています。

出典:シティリビングWeb

ペドロ・コスタ《火の娘たち(2022)》2022年 3チャンネル・ヴィデオ・プロジェクション 作家蔵

担当学芸員によるギャラリートーク(手話通訳付)

2025年10月17日(金)14:00~

2025年11月28日(金)14:00~

東京都写真美術館 地下1階展示室

参加費|無料(要チケット提示)

※当日有効の本展チケット(「TOPMUSEUM PASSPORT 2025」「東京・ミュージアム ぐるっとパス」を含む)または、展覧会無料対象の方は各種証明書等の提示が必要です。

必見の特集上映も!

今回の展覧会では、ペドロ・コスタ監督の初期作品から最新作まで全11プログラムを特別上映。これはぜひとも観たいですね!

2025年11月27日(木)~12月7日(日)

東京都写真美術館1階ホール 一般1,800円ほか ※本展チケットの提示で割引あり

出典:シティリビングWeb

ペドロ・コスタ《アルト・クテロ》2012年 2チャンネル・ヴィデオ・プロジェクション 作家蔵

学芸員からのメッセージ

「ポルトガルにおける移民や都市の記憶、個人の声に寄り添ってきたペドロ・コスタ監督の映画世界を、映像の断片、写真、音響によって、展示空間でしか味わえない体験として実現した展覧会です。初めて見る方にも楽しんでいただけます」(担当学芸員 田坂博子さん)

2025年12月7日(日)まで。

出典:シティリビングWeb

混沌と不安というカオスが取り巻いている現在の世界情勢の中で、インナーヴィジョンズというキーワードから展覧会の鑑賞者に語りかけるペドロ・コスタの展覧会は新たな知見と人間とは何かを深耕できる良い機会になるのではないでしょうか。

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。

OBJECT東京展入選 From A The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議

ETDA展参加など。

元記事で読む
の記事をもっとみる