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「開始10分で離脱しそう…」初回放送から“賛否巻き起こる”も…「めっちゃハマった」“異質な脚本”で魅せた名ドラマ

  • 2025.10.21

多くの視聴者が期待を抱き、議論を生んだ作品たち。賛否両論の中で独自の個性を発揮し、観る者に強烈な印象を残す、特別な力を持っています。今回は、そんな"衝撃走る名作ドラマ"の一つとして、2024年放送のドラマ『ギークス〜警察署の変人たち〜』(フジテレビ系)をご紹介します。

松岡茉優さん、田中みな実さん、滝沢カレンさんという「ありそうでなかった」トリオが、頭は切れるのに人間関係に難アリな警察署勤務の女ギークたちを演じた本作。ノー残業をモットーとする3人が、週末の居酒屋での井戸端会議で事件解決をスーパーアシストしてしまう、新感覚の"井戸端謎解きエンターテイメント"です。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です。
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます。

あらすじ

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「ポロ ラルフローレン×MLBローンチイベント」に登場した松岡茉優(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):『ギークス〜警察署の変人たち〜』(フジテレビ系)
  • 放送期間:2024年7月4日〜9月19日

小鳥遊警察署に勤める3人の女ギークたち。優れた記憶力と証拠分析能力を持つ鑑識官・西条唯(松岡茉優)、心理分析のプロである産業医・吉良ます美(田中みな実)、地域の地理情報を完璧に把握する交通課員・基山伊織(滝沢カレン)。彼女たちは毎週金曜日にお決まりの居酒屋に集まり、職場や人間関係の愚痴に花を咲かせるのが日課だった。

そこに、刑事の芹沢直樹(中村蒼)が頭を悩ませている事件を持ち込むと、3人のギークがそれぞれの専門知識を元に捜査の違和感や矛盾点を指摘。井戸端会議が、いつしか事件解決をスーパーアシストしてしまう。しかし、そんな知識の持ち主のギークでも、プライベートでは悩める普通の女性。不器用すぎる恋愛や、コミュニケーション下手ゆえの人間関係のトラブルの方が、彼女たちにとっては難解すぎる大事件だった。

初回放送から巻き起こった賛否

本作の脚本を担当した大林利江子さんは、『ギルティ〜この恋は罪ですか?〜』などを手がけた実力派。演出は山内大典さん、村上正典さん、本間美由紀さんが担当し、音楽は鈴木真人さんと半田翼さんが手がけました。プロデューサーは共同テレビの森安彩さんと貸川聡子さんです。

そんな実力派制作陣によって制作され、期待が寄せられた第1話は、元サッカー日本代表選手の柘植仁(味方良介)と令嬢の浜辺理子(石川恋)の豪華な結婚披露宴が舞台。余興の最中、赤いひょっとこのお面を付けた男が飛び出し、理子にナイフを突きつけて「今すぐ5000万円を用意しろ」と要求します。参加者たちが犯人に"帰れコール"を送ると、その瞬間会場が真っ暗に。電気が点くとひょっとこの姿は消えていました。披露宴が安堵の空気に包まれたのもつかの間、会場の外から叫び声が。トイレで、スタッフの男が血を流して死んでいたのです。

この衝撃的な導入シーンに対し、視聴者からは賛否両論の声が寄せられました。開始10分で離脱しそう…というSNSコメントに代表されるように、ドラマの独特なトーンや展開に戸惑いを覚える視聴者がいた一方で、「想像と違ってたけど面白い」「笑い要素があって面白そう」と評価する声も上がりました。

この賛否両論の背景には、本作が既存の刑事ドラマとは一線を画す“ゆるさ”を持っていたことがあります。正義感に燃える熱血刑事ではなく、定時で帰りたいと考える現実的な女性たちが主人公。事件解決への執着よりも、自分たちのプライベートを大切にする姿勢が、従来の警察ドラマを期待していた視聴者には物足りなく映ったのかもしれません。

"ギーク"トリオの魅力と人間ドラマ

初回放送に賛否が巻き起こったものの、「かなり好きなドラマ」と称される本作の最大の魅力は、3人のギークたちのキャラクターとその関係性にあります。

フジテレビのゴールデン・プライム帯の連続ドラマで初主演を果たした松岡茉優さん演じる西条唯は「正義感ゼロの鑑識官」と呼ばれ、やるべき仕事をこなしたらサクッと定時に帰ってしまう女性。しかし、その頭脳明晰さと観察眼の鋭さで、居酒屋での何気ない会話の中から事件の真相に迫っていきます。隣の部屋に引っ越してきた謎のイケメン・安達順平(白洲迅)との関係も物語の重要な要素となり、最終回では感動的な展開を見せました。

田中みな実さん演じる吉良ます美は、「人の心を見透かす医務室の魔女」という異名を持つ産業医。人間心理を読むことに長けており、行動や表情から瞬時にその人の心の内を読み取ってしまいます。イケメンが大好きで常にアンテナを張っているものの、本気の恋愛に対しては踏み込んでいかない事情を抱えています。木曜劇場『あなたがしてくれなくても』に続き、3年連続で木曜劇場にレギュラー出演した田中さんは、心理分析のプロ役で新境地を切り開きました。

滝沢カレンさん演じる基山伊織は、「地図だけが話し相手」と言われるほど地理に精通した交通課員。小鳥遊町の地理は全て頭に入っており、常に最短ルートを知っているため、逃走した容疑者を先回りして捕まえることもできます。3人の中では最も論理的で、曲がったことを許さないきまじめな性格です。バラエティー番組での明るいキャラクターとは異なる、地理好きのギークという独特の役を滝沢さんが演じました。

また、3人を悩ませる男性陣として、中村蒼さんが正義感の強い刑事・芹沢直樹を、白洲迅さんが謎の隣人・安達順平を、泉澤祐希さんが先輩刑事・杉田翔を演じました。さらに、あのさんが小鳥遊署の事務職員・河井リリカ役でレギュラー出演し、クセ強メンバーを真っ向から叱り飛ばすSキャラで存在感を発揮しました。

井戸端会議で事件解決、その先にあるもの

本作の特徴は、居酒屋での井戸端会議を通じて事件解決に貢献するという斬新な設定です。高い正義感と泥臭いハードワークのイメージが強い警察という組織の中で、なるべく効率的に、ドライに生き抜こうと振るまう「省エネ3人組」。彼女たちは事件解決の手柄には興味がなく、あくまでも自分たちの日常を大切にしながら、その専門知識で捜査をサポートしていきます。

主題歌はサンボマスターが書き下ろした『自分自身』。『電車男』以来となる木曜劇場の主題歌として、"自分自身取り戻せる 自分自身新しく光る!"というメッセージが、3人のギークたちの生き様とシンクロしました。

最終回では、西条の父・西条真(堀部圭亮)の遺品に残された「カッパの真ん中 605」という謎の暗号が重要な意味を持ちます。放送終了後、SNS上には「最終回、全てがつながった」「続編を絶対にやってほしい」「めっちゃハマった」という声が寄せられ、西条と安達の関係についても「ロマンチック」「ニヤニヤしちゃう」と好意的な反応が多く見られました。

考えるきっかけを与えてくれる名作

ドラマ『ギークス〜警察署の変人たち〜』は、松岡茉優さん、田中みな実さん、滝沢カレンさんという個性的なトリオが、従来の警察ドラマの枠を超えた新感覚の作品を作り上げました。「開始10分で離脱しそう」という声が上がる一方で、登場人物同士の会話のテンポや、事件解決とプライベートのバランス感を評価する視聴者も多く、賛否両論を巻き起こした意欲作です。

頭は切れるのに人間関係に難アリな3人のギークたちが、井戸端会議で事件解決をスーパーアシストしながら、自分たちの人生を模索していく姿は、多くの働く女性たちの共感を呼びました。正義感よりも効率を、手柄よりも定時帰りを選ぶ彼女たちの生き様は、現代社会に生きる私たちに、仕事とプライベートのバランスについて考えるきっかけを与えてくれる作品となりました。


※執筆時点の情報です