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夏の内見で即決した「南向きリビング」の家。秋になったら午後3時には…妻に毎日責められる“後悔の日々”【一級建築士は見た】

  • 2025.10.9
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出典元;photoAC(画像はイメージです)

「南向きリビングだから明るくて快適」――そう信じて購入した新築が、実際には“真っ暗なリビング”だったとしたら、あなたはどう感じるでしょうか。

Aさん(30代・男性・夫婦+子供1人)は、昨年、念願のマイホームを購入しました。
夏の内見の際、南向きの大きな掃き出し窓から光が差し込み、明るいリビングに一目惚れしたといいます。

「日差しが気持ちよくて、“ここなら明るい家になる”と思いました。営業担当の方にも“南向きは日当たり抜群ですよ”と言われて、迷いなく契約を決めました。」

しかし、秋を迎えたころから、Aさんは違和感を覚え始めました。
「午後になると急に部屋が暗くなります。おかしいと思って外を見たら、隣の家の2階バルコニーが太陽の方向にあって、リビング全体に影を落としていました。」

夏の眩しさに惹かれて即決した家は、季節が変わると午後3時で照明が必要な“暗いリビング”に変わってしまったのです。

“南向き”でも光が入らない理由

Aさんの家のように、「南向きなのに暗い」というケースは決して珍しくありません。
その原因は、意外にも身近なところにあります。

  • 隣家のバルコニーや軒が太陽の光を遮っている
  • 建物同士の距離が狭く、1階まで光が届かない
  • 秋から冬にかけて太陽高度が下がるため、長い影がリビングにかかる

特に都市部では、隣家との距離が1メートル前後しかないケースも多く、日射の角度によっては「南向きでも陽が入らない家」になってしまいます。
設計図や現地見学の段階では、こうした影の落ち方まで確認するのは難しく、入居して初めて気づく人が少なくありません。

Aさんの後悔――「リビングが一番暗い場所になるとは」

「南向きだから大丈夫だと思い込んでいました。まさか隣のバルコニーの影で、こんなに日が入らないなんて…。冬場なんて午後を過ぎたらもう照明なしでは過ごせません。」

Aさんは肩を落としながら話します。
リビングの明るさに惹かれて購入したはずが、結果的に家の中で最も暗い空間になってしまいました。
家族も「昼間なのに寒い」「リビングが暗い」と不満を漏らすようになりました。

なんとか明るくしたいと思っても、今から建物の位置や窓の高さは変えられません。

日照は「方角」より「角度」で決まる

一級建築士の立場から見ると、「南向き=明るい」という考え方は半分正解で、半分は誤解です。
本当に大切なのは“方角”ではなく、“太陽の角度”と“周辺建物との関係”です。

冬至の時期には、太陽の高さ(太陽高度)はおよそ30度前後まで下がります。
そのため、隣家のバルコニーや屋根が少しでも南側に張り出していると、日射が簡単に遮られてしまうのです。

たとえリビングが真南を向いていても、南側の空が十分に開けていなければ光は入りません。
「南向きの窓がある家」よりも、「南側にどれだけ空が見えるか」――これが日照を左右する最大のポイントなのです。

“影を読む”家づくりのポイント

Aさんのような後悔を防ぐためには、購入前の“確認”が重要です。
3つのポイントを押さえておくと、入居後の後悔を減らすことができます。

現地を複数の時間帯で確認する

午前・午後・夕方に現地を訪れ、実際の影の動きを確認します。
できれば冬の時期に見学できるとベストです。

南側の建物・バルコニー・塀をチェックする

日射を遮る要因は、思いのほか低い位置にもあります。
隣家との距離やバルコニーの形状、屋根の勾配なども見ておきましょう。

設計段階では窓の位置を工夫する

日射角度を考慮して高い位置に窓を設けることで、より安定した採光を確保できます。

“方位だけ”では光は読めない

Aさんは今も「南向き=明るい」という思い込みが失敗の原因だったと感じています。
「リビングが暗いだけで、家の印象がこんなに変わるなんて思いませんでした。あの時、もう少し光の入り方を調べていれば……と後悔しています。」

多くの人が「南向きだから安心」と思い込みがちですが、実際の明るさは“方角”よりも“環境”に左右されます。
隣家の高さや距離、太陽の角度、季節の違い――それらを踏まえてこそ、本当に明るく快適なリビングがつくれるのです。

“南向き神話”を信じた結果、真っ暗なリビングに悩む――。
そんな後悔を防ぐために、家づくりでは“季節と影”を読む目を持つことが何より大切です。
それが、光に包まれた理想の住まいを手に入れるための第一歩になるのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。