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ヴィヴィアーノ、究極のモノトーンで魅せる“ネオロマンティシズム”【2026年春夏 東京コレクション】

  • 2025.9.6

9月5日、ヴィヴィアーノ(VIVIANO)が東京・渋谷ヒカリエで2026年春夏コレクションを発表した。今シーズンのテーマは“ネオロマンティシズム”(新ロマン主義)。会場はベロアのカーテンで覆われ、床も天井もすべて黒で統一されている。これまでのヴィヴィアーノは多彩な色で奥行きを持たせ、チュールを最大限に活かしたデザインで服の個性を際立ててきたが、今回はあえてすべての色を取り除き、白と黒のみで構成された。そこにはどういった心境の変化があったのか。インスピレーション源についてデザイナーのヴィヴィアーノ・スーはこう明かす。「AIの発達によって世の中が便利になりつつあるなか、人間にしかできないことを再定義したかった。そこで目をむけたのが1930年代から60年代のオートクチュールの世界。一点一点手作業で仕上げられた服は時を経て再解釈され、永遠に残っていく。未来に残したいクリエイションとはいったいなんなのか。服を通して再定義したかった」

ファーストルックはウエストを高めに設定したクラシックなロングドレスだ。光沢のある生地が漆黒の空間に浮かび上がる。バックトレーンはやや長めにデザインされ、歩くたびに揺れる優雅な裾が女性らしさを香らせる。続々と登場するオールブラックのルックは決して単調になることなく、素材やシルエットを変えて豊かな表情を魅せる。

クラシックとは対極的にスポーティな要素も。パフスリーブトップスやドレスの背面には“CIRCOLO 87”のナンバリングロゴを配し、カジュアルでありながらも端正なシルエットで洗練された表情に仕上げている。ブランドのアイデンティティともいえる薔薇のモチーフも随所にちりばめられた。

ヴィヴィアーノといえばダイナミックなチュール使いが印象的だが、今シーズンはやや控えめだ。あくまでひとつの素材として装飾的な効果を引き出すうえで用いられている。素材のバリエーションを複雑に取り入れ、ウエストをギュっと絞りヒップ回りにゆとりをもたせることで、より女性らしさを強調。ソフトな光沢が美しいオフホワイトの生地はオリジナルで染めあげたものだ。

ジャケットは肩周りに丸みをもたせることで首もとに抜け感をつくった。胸もとからウエストに流れるようにあしらわれた薔薇の刺繍はまるで歩くアートのようだ。手作業で作り上げた装飾はクチュールならではのぬくもりが伝わってくる。

胸もとにフリルをあしらったドレスはウエストをやや高めに設定。しなやかに揺れる裾やボリュームのあるパフスリーブ袖によって、優雅な重厚感を引き出している。レトロな趣を感じるこのスタイルは、1930年代の女性のナイトガウンがインスピレーション源だという。

ミシェル・ルグランの「リラのワルツ」が会場に響き渡るショーのラストではクチュールドレスが登場。顔はベールで覆われ、透け感のあるチュールとレースをふんだんに組み合わせることで流れるような美しいシルエットを描いた。妖艶なブラックドレスはインにジャンプスーツをしのばせ、歩くたびにフラワースパンコールがさりげない輝きを魅せる。ヴィヴィアーノらしいウィットと愛らしさは今シーズンも健在だ。あらゆる情報や物であふれる現代において普遍的な美しさ、ロマンとは何か。ショーを終えた彼に改めて聞いてみた。「服の楽しさは表面の華やかさだけではない。手の込んだクチュールに袖を通したときの高揚感、そしてぬくもり。それこそが普遍的、かつ美しいロマンを感じる瞬間なのではないでしょうか」

Photos: Gorunway.com

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