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20年前リリース→初登場1位を飾った“脆くて繊細なのに壮大な”異質ソング 着うたミリオンヒットを達成した“祈りが届く名曲”

  • 2025.10.21

「20年前、あの曲を初めて聴いた瞬間を覚えてる?」

2005年の秋、街はケータイの着信音やメール音が飛び交い、ポケットから鳴り響く“着うた”が日常に浸透していた。そんな時代に、ひときわ静かな旋律で人々の心を掴んだバラードがあった。

浜崎あゆみ『HEAVEN』(作詞:ayumi hamasaki・作曲:Kazuhito Kikuchi)――2005年9月14日発売

彼女にとって37枚目のシングルとなるこの楽曲は、映画『SHINOBI-HEART UNDER BLADE-』の主題歌として届けられ、ランキング初登場1位を記録。フィジカルCDで30万枚以上、さらに“着うた”ではミリオンヒットを達成するなど、時代を象徴するヒットを記録した。

歌姫が託した“祈り”のような歌声

当時の浜崎あゆみは、すでに“平成の歌姫”として絶対的な存在感を誇っていた。しかし『HEAVEN』は、その華やかさを脱ぎ捨てたように、透明で脆い歌声がストレートに響く。力強いシャウトも巧みな装飾もない。ただ祈るように紡がれる声は、彼女の作品群の中でも異彩を放っていた。

作曲を手がけた菊池一仁は、Every Little Thing『fragile』など数多くの名曲を生み出してきたメロディメーカー。本作でも、壮大でありながらも繊細さを失わない旋律を描き出し、浜崎の声を最も美しく映す舞台を用意している。

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2001年、「日本レコード大賞」で歌う浜崎あゆみ (C)SANKEI

時代を映した“着うたミリオン”の衝撃

この楽曲が主題歌となった映画『SHINOBI-HEART UNDER BLADE-』は、宿命に翻弄される若い忍たちの戦いを描いた作品。その世界観と『HEAVEN』の儚さが響き合い、劇場で流れた瞬間、観客の胸に強烈な余韻を残した。

2005年は、音楽の聴き方が大きく変わった時期だった。CDからデジタル配信、携帯電話の“着うた”へ。『HEAVEN』はその象徴とも言える存在で、着うたでミリオンヒットを達成した作品のひとつだ。街のどこかで必ず耳にしたメロディが、日常の風景に静かに染み込んでいた。

フィジカルのセールスとデジタルの両方で結果を残したことは、浜崎あゆみという存在がアナログとデジタルの狭間に立ち、時代をつなぐアーティストであった証でもある。

静寂の余韻が刻んだ“永遠”

『HEAVEN』の魅力は、派手さや技巧ではなく、聴く者の心に静かに深く入り込んでいく力にある。華やかなヒットソングが並ぶ彼女のディスコグラフィの中で、この曲はひときわ異質でありながら、普遍的な輝きを放ち続けている。

あの頃、イヤホン越しに聴いた人も、劇場で涙した人も。20年の時を経ても、『HEAVEN』が流れれば、誰もがあの日の“心のざわめき”を思い出すのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。