1. トップ
  2. 20年前、インディーズからメジャーデビューへ飛躍した“機械的なのに高揚する”近未来サウンド アイドル像を超越した“出発点の一曲”

20年前、インディーズからメジャーデビューへ飛躍した“機械的なのに高揚する”近未来サウンド アイドル像を超越した“出発点の一曲”

  • 2025.10.20

「20年前、あなたはどんな未来を思い描いていた?」

2005年の秋。携帯電話は折りたたみ式が主流で、着うたのダウンロードが流行していた。まだSNSも一般的ではなく、インターネットは限られた場で盛り上がっていた時代。そんな空気の中、広島出身の3人組ユニットが“近未来”を掲げてメジャーデビューを果たした。

Perfume『リニアモーターガール』(作詞:木の子・作曲:中田ヤスタカ)――2005年9月21日発売

この曲は、当時のヒットチャートを賑わせたわけではなかった。だが、ここから彼女たちの物語が静かに、しかし確実に動き始めたのだ。

undefined
2015年、メルセデス・ベンツの新型Aクラスの公式パートナーとして登場したPerfume (C)SANKEI

サイボーグのような美学に包まれて

このシングルのプロモーションビデオは、インディーズ期のアイドル色が強いカラフルで元気な映像から大きく舵を切っていた。黒い衣装に身を包み、メイクも硬質な印象に。サイボーグを思わせる彼女たちは、従来のアイドル像から大きく踏み出していた。

映像の中のPerfumeは“ぎこちなさすら美しい”ロボット的な存在感を放った。当時のJ-POPシーンでは異端とも言える挑戦だった。だが、この実験精神こそが、のちにPerfumeを唯一無二の存在へと押し上げるエッセンスとなった。

インディーズから続く“中田&木の子ライン”の深化

Perfumeにとって中田ヤスタカとの出会いは、”ぱふゅ〜む”から現在の”Perfume”へと改名した頃までさかのぼる。2003年にインディーズで発表したシングル『スウィートドーナッツ』から、木の子が詞を、中田が曲を手がける形で作品を発表していた。『モノクロームエフェクト』『ビタミンドロップ』と続いた3枚のインディーズシングルは、その後へ続く助走路でもあった。

『リニアモーターガール』は、その延長線上にありながらも、“インディーズでの実験がメジャーの場で結晶した最初の瞬間”と言える。これまでの作品で培った近未来的サウンドとアイドル的な親しみやすさをさらに研ぎ澄ませ、ここからPerfumeは「ただの新人ユニット」ではなく、「未来を鳴らす存在」として歩み始めたのだ。

未来を切り開く“走り続ける存在”

『リニアモーターガール』はセールス的に大きな結果を残したわけではない。だが、その後の『コンピューターシティ』『エレクトロ・ワールド』へと続く布石となり、のちにPerfumeの代名詞となるサウンドを確立していった。メジャー初期のこの3作が“近未来三部作”と呼ばれるのは、ただ音楽性が一貫していたからではなく、「Perfumeが未来に進んでいく物語」を提示していたからにほかならない。

2026年の“コールドスリープ”へ

そして20年を経た今、Perfumeは2026年から“コールドスリープ”に入ることを発表した。長い年月を駆け抜け、世界を舞台に活動してきた彼女たちが選んだのは、未来へとバトンを渡すかのような静かな休眠。その姿は、まさにリニアモーターのように走り続け、ついに次の時代へと滑り込む少女たちの物語の延長線上にある。

ファンにとっては寂しさもあるだろう。だが、この決断すらもPerfumeらしい。未来を見据え、常に新しい表現を選び取ってきた彼女たちだからこそ、「眠りにつく」という行為さえも鮮烈なアートとして響く。

永遠に続くリニアの余韻

ランキングの数字やセールスよりも、『リニアモーターガール』が持つ価値は“出発点”としての象徴性にある。この曲がなければ、その後の世界ツアーも、東京ドーム公演も存在しなかっただろう。

今聴き返すと、その音は少し無骨で、荒削りに響くかもしれない。だが同時に、“ここから始まったんだ”という胸の高鳴りを呼び起こしてくれる。未来を夢見て疾走する少女たちと、その走りに寄り添ったリスナーの記憶が重なり合い、20年を経てもなお色褪せない輝きを放っているのだ。

そして私たちは知っている。彼女たちが眠りについたとしても、あのビートと映像、そして“近未来の夢”は、永遠に走り続けていることを。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。