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「中毒性あるなぁ」「ズルい声」25年後も愛される“無関係タイトルの脱力ポップ” シンプルなのにクセになる“最強の一曲”

  • 2025.9.30

「25年前、あなたはどんなふうに音楽を聴いていた?」

2000年の幕開け。ミレニアムという言葉が街を飛び交い、人々は新しい時代の気配を半信半疑で受け止めていた。どこか肩の力が入った空気のなか、ラジオやテレビから流れてきたのは、拍子抜けするほどにシンプルで、なのに耳から離れない一曲だった。

奥田民生『マシマロ』(作詞・作曲:奥田民生)――2000年1月19日発売

サントリー「角瓶」のCMソングとしても広く知られるこの作品は、20万枚以上を売り上げるヒットとなった。

ふわりと届いた“マシマロ”の響き

『マシマロ』は、タイトルからしてユーモラスで「スピッツの曲っぽい」と思った民生が、なんとなくでつけたほどの軽さだったという。しかしマシマロという言葉が歌詞とまったく関係ないことから、最終的に歌の最後に「マシマロは関係ない 本文と関係ない」と歌う。このあたりの脱力感も民王流だ。考えてみれば、スピッツの『ロビンソン』もタイにある百貨店からつけた仮タイトルがそのまま採用されたもので、本文とは関係ない。

それでも、ふわふわと漂うようなこのタイトルは、曲のイメージと不思議なほどぴたりとはまった。柔らかく、甘く、どこか脱力した空気感。それは新時代の始まりを大げさに飾り立てることなく、日常に寄り添う音楽の在り方を示していた

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奥田民生-2000年撮影 (C)SANKEI

奥田民生が見つけた“肩の力を抜く”瞬間

転調を駆使したり、複雑な展開を盛り込んだりしたユニコーン時代からの歩みを経て、民生にとっては「こんなシンプルでいいのか」と思わせた作品こそ『マシマロ』だった。

そのシンプルさが逆にリスナーの心に届き、売れたこと自体が彼にとって大きな発見となった。過剰に技巧を凝らさなくても成立する音楽の自由さを体得したターニングポイントだったのだ。

サウンドの軽妙さが生んだ中毒性

楽曲自体は、跳ねるようなビートと、繰り返しの多いメロディが特徴。特別に派手な展開があるわけでもなく、終始シンプルな進行を保ち続ける。だがその単調さが逆に耳に残り、無意識に口ずさんでしまう。「あれ? もう一回聴きたい」――そう思わせる不思議な吸引力が『マシマロ』にはあった。

そして、この“気楽さ”こそが当時のリスナーの心にマッチしていた。2000年代を迎えて社会がどこか張り詰めていたなかで、力を抜いて楽しめる歌が、ささやかな安らぎを提供していたのだ。

余白が残した時代の匂い

『マシマロ』はCMソングとしての露出効果も大きく、20万枚以上のセールスを記録した。その一方で、この曲は単なるヒットにとどまらなかった。その後の彼の活動スタイルを決定づけた一曲でもあった。飾らず、背伸びせず、自然体で音楽を鳴らす。『マシマロ』はまさにその象徴だったのだ。

2000年の冬に流れてきた『マシマロ』は、未来への不安と期待が入り混じる空気をやさしくほぐしてくれた。何も大げさに語らず、ただ“そこにある”ことで安心をくれる音楽。それはまさしく奥田民生の存在感そのものであり、今もなおファンの記憶に残り続けている。

現に、令和7年の今も「こういうのを天才と言うんだろうな」「シンプルなのにこの『最強感』」「本当にかっこいい」「中毒性あるなぁ」「ズルい声」など称賛の声で溢れている。

2000年代の幕開けに、最もシンプルで最も肩の力の抜けた一曲。それが『マシマロ』だった。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。