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「すごく平成が恋しくなるなあ」20年後も心に刺さる“直球リリックの青春ソング” 40万枚超で刻まれた“学園ドラマ主題歌”

  • 2025.10.3

「20年前、土曜の夜、感動したドラマを覚えてる?」

2005年2月。街は受験や就職を控えた張りつめた空気に包まれ、コンビニの灯りと白い吐息が交わる交差点には、期待と不安が同居していた。テレビの前に腰を下ろすと、制服の青春群像が始まり、物語の熱量に呼応するように、まっすぐなビートが胸の鼓動を速めていく。ふと気づけば、サビの言葉が自分自身の合言葉になっていた。

D-51『NO MORE CRY』(作詞:吉田安英・作曲:生熊朗)――2005年2月2日発売

作品とアーティストの輪郭

沖縄出身のボーカルデュオ、D-51にとってメジャー3枚目となるシングルが『NO MORE CRY』だ。日本テレビ系ドラマ『ごくせん』第2シリーズの主題歌に起用され、毎週土曜21時の放送枠で幅広い層へ届いた。初のドラマ主題歌での全国的な浸透は、彼らの名を一気に前に押し出す契機となった。

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D-51 2009年撮影 (C)SANKEI

まっすぐ届く、疾走と開放の設計

この曲の魅力は、“前へ”と身体を押し出す直線的な推進力にある。打ち込み主体のソリッドなトラックに、手触りのあるコーラスワークが幾重にも重なり、サビでは声が一斉に空を切り裂く。テンポは軽快、ビートはタイト。歌い出しからサビの解放に至る“助走とジャンプ”の比率が絶妙で、聴き手は息を合わせるように自然とフレーズを重ねてしまう。

ボーカルは過度に感情を塗り込めない。むしろ音価の切り替えがシャープで、語尾まで輪郭を立てる発声が、“泣かない”という宣言の背筋をまっすぐに見せる。アレンジ含めて疾走と整合のバランスがポップスの心地よさを底上げしている。

ドラマ主題歌としての機能美

学園ドラマの季節感に寄り添うように、曲は“決意の瞬間”を切り取っている。物語の区切りで流れるイントロの数小節が、視聴体験と強く結びつき、映像と音の“連帯感”を生み出した。

1話ごとに積み上がる感情を、次回へ受け渡すためのブリッジとして、誰もが口ずさめるサビが機能する。結果として、視聴後の夜道や、週明けの通学路でも自然に鳴り続ける“外部拡張”が起きたのだ。

数字が物語る浸透のスケール

シングルはランキングで自己最高の位置へ食い込み、累計で40万枚を超えるセールスを記録。年末には第56回NHK紅白歌合戦に初出場を果たし、その年の空気に曲名をしっかり刻み込んだ。テレビとの相乗が王道ポップスの強度を証明した例でもある。

同時代との響き合い

2005年前後のチャートには、ダンスビートやR&Bの質感を取り込んだポップスが並んでいた。『NO MORE CRY』はその潮流のど真ん中にいながら、誰もが合唱できるフレーズの強さで一段と輪郭を際立たせた。“難しくしない勇気”が、メロディの普遍性を引き上げる――それが結果として、テレビの前から日常に至るまで、長い距離を走り続けた理由だろう。

あの冬の息と、今の呼吸がつながる

20年という時の幅は、街の景色を少しずつ塗り替えた。でも、胸の奥で“走り出すよ”とつぶやく感覚は、あの頃の自分と今の自分を静かに結ぶ。

決意は派手な言葉より、身体が前へ出る一歩の中にある。土曜夜の画面の光、窓に映る自分の顔、鼓動と重なるビート。『NO MORE CRY』は、“次の瞬間に踏み出すための呼吸法”として、今も確かに有効だ。

現に令和7年を迎えた今もなお「ごくせん世代にはたまらない」「聞いたら元気になる」「綺麗な声と直球な歌詞、今聴いても良いです」「聴いてたらすごく平成が恋しくなるなあ」など称賛の声が止まない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。