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「このリミックスが1番好き」30年後まで語り継がれる“美しい浮遊感ポップ” 伝説的グループが放った“異色のシンプルソング”

  • 2025.10.2

「30年前の空に、どんな“虹”がかかっていたか覚えてる?」

1995年。レコードショップの試聴機には常に新しいCDが並び、深夜のクラブではアナログ盤を抱えたDJたちがフロアを揺らしていた。雑誌やラジオが音楽の入口で、ストリートには“未知の音”を探す空気が漂っていた。そんな時代に、電子音の奔流からひときわ美しい旋律が浮かび上がった。

電気グルーヴ『虹』(作詞・作曲:石野卓球)――1995年4月21日発売

前年にリリースされた6枚目のオリジナル・アルバム『DRAGON』のラストを飾ったこの曲は、アルバムからのリカットシングルとしてシーンに送り出された。電気グルーヴのディスコグラフィーの中で“最もストレートで美しい曲”と評される存在であり、今なお語り継がれる名曲である。

美しさに導かれた“異色の瞬間”

電気グルーヴといえば、『N.O.』のようなダンスチューンや、『富士山』のようなコミカルな作品群によって、彼らは日本のテクノシーンを唯一無二の形で切り開いてきた。

しかし『虹』は、そんなイメージを覆すように登場した。シンセサイザーの粒子が漂うように広がり、緩やかなビートに重なる旋律は、聴く者をまるで空へ吸い込むような“浮遊感”へと導いていく

そこに乗るのは、石野卓球が描いたシンプルで普遍的なメロディライン。派手さをそぎ落としたからこそ浮かび上がる透明な美しさは、彼らの楽曲の中でも異彩を放っていた。

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2015年、映画「DENKI GROOVE THE MOVIE?~石野卓球とピエール瀧~」初日舞台挨拶に登場した電気グルーヴ (C)SANKEI

五島良子の声が開いた扉

この曲に不可欠なのが、ゲストボーカルとして参加した五島良子の存在だ。彼女の透明感ある声は、機械的なサウンドに温度を与え、曲全体を優しく包み込む。石野や瀧のユーモラスな声色とはまた違う、純度の高い響きが加わることで、『虹』は単なるテクノではなく、ポップソングとしても成立する力を持った。

五島はその後『Nothing’s Gonna Change』でも再び電気グルーヴの楽曲に参加し、グループにとって重要な声のひとつであったことを示している。彼女の歌声は、『虹』の美しさをさらに際立たせてくれたと言っていいだろう。

“DRAGON”を締めくくるラストトラック

1994年発表のアルバム『DRAGON』は、ダンスミュージックと実験精神を融合させた濃厚な作品群が並ぶ。そのラストに配置された『虹』は、緊張感の余韻を解き放ち、まるで夜明けの光のような解放感をもたらしていた。アルバムを聴き終えた後に訪れるその“静かなカタルシス”こそ、作品全体を完成へと導く鍵だった。

リカットされ、アルバムの枠を越えて『虹』は広がり、電気グルーヴの新たな顔として受け止められていくことになった。

90年代半ば、時代の空気と共鳴した音

1990年代半ばの日本の音楽シーンは、小室哲哉プロデュースやビーイング系の快進撃で派手さを極めていた。同じ時期に、クラブカルチャーやテクノは“アンダーグラウンド”から少しずつメインストリームへと顔を出し始める。その狭間に現れた『虹』は、華やかなヒットソングとは対照的に、静かで広大な世界を提示した。

「大きな声で主張しなくても、人の心を震わせることができる」――そんな価値を示した曲だった。

永遠のアンセムとして

『虹』はリリースから30年を経た今も、フェスやライブで流れると観客をひとつに包み込む。電子音のループと浮遊感を感じさせるサウンドが重なり合い、フロア全体に“無重力の空気”を生み出す。その瞬間、会場はただの音楽イベントではなく、参加者全員が同じ夢を見ているような共有体験の場になるのだ。

だからこそ、『虹』は電気グルーヴにとっての“永遠のアンセム”であり続けている。挑発と笑いの裏側に、こんなにも普遍的で美しい音を秘めていたこと。その事実が、彼らの幅広い表現力を物語っている。

30年前に放たれた音の虹は、今もなお空に架かり続け、世代を越えて人々を結びつけている。

令和7年を迎える現在も「間違いなく一生聴く!」「このリミックスが1番好き」「マジでこの曲最高」「何度聴いてもいい曲」「カッコ良すぎるよ」など称賛の声で溢れている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。