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「極めてシンプルだからカッコいい」25年経っても痺れる“余裕ある暴走ソング” 華やかポップ時代に逆らった“異色の迫力ロック”

  • 2025.10.2

「25年前、どんな音があなたの耳を震わせていただろう?」

2000年の冬。ミレニアムを迎えた街には、未来への高揚と不安が入り混じったざわめきが漂っていた。ポップスやバラードがランキングを彩る一方で、ライブハウスからは汗と煙にまみれた爆音ロックが響きわたり、音楽の熱はまだ生々しく鼓動していた。そんな空気を切り裂くように現れたのが、この一枚だった。

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『GT400』(作詞:チバユウスケ・作曲:THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)――2000年2月2日発売

4人組ロックバンド、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが放った11枚目のシングルは、バンドのキャリアの中でも独特の存在感を放つ楽曲だった。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

轟音のバンドが示した“余白”

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、通称ミッシェル。彼らの名を聞けば、まず思い浮かぶのは暴走するエンジンのような爆音と疾走感だろう。チバユウスケの鋭いボーカル、アベフトシのギター、ウエノコウジの低音、クハラカズユキの力強いビート。そのアンサンブルは、ただ聴くのではなく、浴びるものとして人々を魅了してきた。

しかし『GT400』は、そのイメージの只中にありながら、意外にも「ゆったりめ」に感じる曲だった。彼らの他の代表曲のような爆走感ではなく、余白を感じさせるグルーヴが特徴。刻まれるギターリフは切れ味を保ちつつも、どこか余裕があり、轟音の中に漂うクールな温度がリスナーの耳を惹きつける。

“間”が生み出す迫力

『GT400』の魅力は、疾走するだけではない。イントロのストロークからボーカルが滑り込むまでのサウンド、ギターソロに入る前の緊張と緩和。音と音の隙間にこそ、ミッシェルならではの迫力が宿っていた。

爆音に押し潰されるのではなく、むしろその中で呼吸を感じさせる構造。シンプルなリフとリズムが反復されることで、聴き手は自然と体を揺らし、いつの間にかその熱量に巻き込まれていく。

この曲が放つのは、“爆発力”というよりも“持続する熱”。ライブハウスのフロアで、観客が拳を振り上げながらも一拍置いて全体のうねりに身を任せる――そんな光景が浮かぶ楽曲だった。

2000年という時代の中で

2000年の音楽シーンといえば、宇多田ヒカルや浜崎あゆみらがポップスを席巻し、華やかなメロディとドラマの主題歌が次々にヒットを記録していた。その中で『GT400』は、流行の光とは対照的な“黒光りするエンジン音”のように響いていた

シングルとして大きなセールスを意識したわけではない。だがそれこそが、当時の若者たちに強く突き刺さった。流行歌に飽き足らないリスナーにとって、『GT400』は「ここにしかない熱」を示していたのだ。

残された轟音の記憶

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTは2003年に解散するが、『GT400』は彼らの多彩な楽曲群の中で、異彩を放ち続けている。速さや爆音だけではなく、大人な“余裕のある暴走”を鳴らした一曲

それはまるで、街道を走る黒いバイクのエンジン音のように、静かで、しかし抗えない力を帯びていた。25年経った今も、「最高にスタイリッシュ」「極めてシンプルだからカッコいい」「いつ聴いてもカッコいい」など評する声があるように、その轟音は耳の奥に残響し、リスナーの心を揺さぶり続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。