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「青空が似合うバンド」30年後も不動の“夏を呼び覚ますポップチューン” 40万枚超を売り上げた“不変の名曲”

  • 2025.10.1

「30年前の春、あなたはどんな音を待ち望んでいた?」

1995年4月。街には新生活のざわめきが満ちていた。制服に袖を通したばかりの学生、真新しいスーツ姿の社会人、誰もが少し緊張した足取りで歩き出す季節だった。そんな春の空気の中、まるで季節を先取りするかのように、太陽の匂いをまとったポップチューンが流れてきた。

TUBE『ゆずれない夏』(作詞:前田亘輝・作曲:春畑道哉)――1995年4月26日発売

春に訪れた“真夏”の気配

『ゆずれない夏』は、タイトルに「夏」とあるものの、リリースはまだ春の盛りだった。春風に混じって届いたこの曲は、聴く人に「もうすぐ夏が始まる」という期待感を一気に呼び起こした。夏を象徴するバンドが、敢えて春に夏を持ち込む。その遊び心と自信が、楽曲全体に溢れていた。

6月にリリースされた同名アルバム『ゆずれない夏』の先行シングルでもあり、アルバム全体の方向性を示す旗印のような存在となった。

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TUBEのボーカル・前田亘輝-1997年撮影 (C)SANKEI

弾ける旋律が描いた“夏の予告編”

作曲を手がけた春畑道哉による軽快なギターリフは、イントロから一気に青空を描き出す。前田亘輝の歌声は、余計な飾りを排したストレートな響きで、まるで真夏の波打ち際に立っているかのような臨場感を生み出していた。メロディの爽快さと歌詞の熱量が重なり合い、春という季節を軽やかに飛び越え、聴き手を“夏”へと連れ出していく。

アレンジはシンプルでありながらも、ドラムとベースがしっかりとした推進力を生み、バンド全体のエネルギーが真っ直ぐに前へ突き進んでいく構造となっていた。TUBEらしい「開放感」が、ここで見事に結晶化している。

セールスが物語る支持の厚さ

このシングルは40万枚以上を売り上げ、90年代半ばのTUBEがまだ多くの支持を集めていたことを証明した。派手なタイアップがあったわけではなく、それでも数字を残したのは“夏の代弁者”としての彼らの立ち位置がすでに不動だったからだ。

さらに、夏をテーマにした数多くの楽曲の中でも、『ゆずれない夏』は「夏を待ちきれない気持ち」を最もストレートに映し出した作品として記憶されるようになった。

時代とともに刻まれた余韻

1995年は、音楽シーンが次々と新しいスタイルを模索していた時期だった。ビーイング系、そして小室ファミリーが席巻していく中で、TUBEはあえて変わらぬ「夏」を歌い続けた。その姿勢は、流行を追うのではなく、自らの季節を築くという強い意志の表れだったといえる。

春にリリースされた『ゆずれない夏』は、「今年も夏がやってくる」という合図のように人々の心に届き、季節感を先取りする喜びを与えた。それはTUBEが単なるヒットメーカーではなく、“夏の風物詩”として存在していたことを示す象徴的な瞬間だった。

春から夏への橋渡しとして

今でも『ゆずれない夏』を耳にすると、春の終わりから夏への移ろいを思い出す人は少なくないだろう。真夏の眩しさに憧れながら、まだ肌寒さが残る季節に聴いたあのサウンドは、待ち遠しい時間さえも輝きに変える力を持っていた

30年前の春、TUBEは音楽で季節を先取りし、私たちに未来の夏を贈ってくれた。『ゆずれない夏』は、そんな記憶をいつまでも呼び覚ます一曲なのだ。

令和7年を迎えた今もなお「こんなに青空が似合うバンドはやっぱりTUBEだけ」「本当に良い曲」「この曲でドライブしたら最高」「ダントツですき」と評する声が少なくない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。