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30年前、日本中が心を躍らせた“海辺で聴きたい爽快ポップチューン” マルチヒロインが放った“真夏のビールCMソング”

  • 2025.10.1

「30年前の夏、あなたはどんな景色の中で日々を過ごしていた?」

1995年の真夏。アスファルトから立ち上る熱気、蝉の声にかき消されるような子どもたちの笑い声、そして夕暮れの海辺を赤く染める太陽。そんな情景の中、街のあちこちから耳に届いたのが、弾むように軽やかで、聴いた瞬間に心を夏色に染めてしまう一曲だった。

西田ひかる『人生変えちゃう夏かもね』(作詞:湯川れい子・作曲:羽田一郎)――1995年5月24日発売

この曲はアサヒビール「Z」のCMソングとして放送され、爽快感と華やかさを併せ持つサウンドで一気に夏のイメージソングとして広がっていった。

ビールの泡のように弾けるリズム

『人生変えちゃう夏かもね』の魅力は、何といってもそのリズミカルな軽やかさにある。羽田一郎が描いたメロディは、まるで海辺に吹く潮風のようにしなやかで、聴き手の体を自然と揺らしてしまう。バックに広がるエキゾチックなアレンジは、ビールの泡が弾ける瞬間のように爽快で、夏の開放感を音楽そのものに閉じ込めている。

そこに西田ひかるの印象的な歌声が乗ることで、曲はさらに鮮やかに輝いた。彼女の声は決して力強く押し出すタイプではないが、素直でまっすぐな響きがリスナーの心を清涼に包み込み、夏の記憶を呼び起こす。シンプルで明るい表情の中に、聴く人それぞれの「特別な夏」を投影できる余白が残されているのだ。

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西田ひかる-1998年撮影 (C)SANKEI

湯川れい子の言葉が紡いだ夏の物語

作詞を手がけた湯川れい子は、数多くのヒットソングを生んできた名作詞家。この作品でも、夏の眩しさと恋の予感を軽やかな言葉で織り込み、聴く人の想像を広げている。言葉数を多く詰め込むのではなく、風に乗せて流れるようなフレーズが特徴的で、その余韻が音楽と見事に呼応していた。

一方、作曲の羽田一郎はポップスを基調にしながらも、耳に残るキャッチーさを絶妙に加えている。西田ひかるの持ち味を最大限に引き出すこの組み合わせは、当時の音楽シーンにおいても特筆すべき化学反応だった。

夏の広告とともに広がった一曲

この楽曲が持つもうひとつの大きな特徴は、CMソングとしてのインパクトだ。本人が出演したアサヒビール「Z」の映像と共に流れることで、「ビール=夏=音楽」というイメージが強固に結びつき、聴いた瞬間に季節を思い出す曲として浸透した。街角のテレビから、居酒屋のBGMから、そしてラジオから――至るところで流れていたため、多くの人にとって忘れられないサマーソングになったのである。

西田ひかるは、歌手だけでなく女優・タレントとしても幅広く活動しており、そのマルチな存在感が楽曲への注目度をさらに押し上げた

今も色褪せない“夏の代名詞”

シングルの売上は20万枚手前と、当時としては爆発的な大ヒットとはいかなかったものの、数字以上に「夏の記憶を彩った歌」として語り継がれているのが、この曲の最大の価値だろう。

夏が来るたびに耳にしたくなる、爽やかで無邪気なポップチューン。西田ひかるが歌い上げた『人生変えちゃう夏かもね』は、まるでアルバムに挟んだ古いポラロイドのように、聴くたびに鮮やかな季節の記憶を蘇らせる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。