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30年前、日本中に鳴り響いた“進化する幻想的ダンスビート” 売上130万枚を超えた“ただ者ならぬ名曲”

  • 2025.9.29

1995年。街にはイルミネーションが輝き、雑誌やテレビには華やかな広告や大型CMが溢れていた。見かけの明るさに包まれながらも、心の奥底では何かざわめきのような感覚が漂っていた時代でもある。

そんな空気の中で流れたこの曲は、きらびやかな光と影の両方を抱きしめるように、人々の記憶に強烈な印象を残した。

trf『masquerade』(作詞・作曲:小室哲哉)——1995年2月1日発売

きらびやかさの奥で揺れる“仮面の素顔”

『masquerade』は、trfにとって9枚目のシングル。小室哲哉プロデュースによって生み出された楽曲は、華やかに彩られたダンスビートを基盤としながら、表層的な明るさとは異なる「冷ややかな質感」をまとっていた。キラキラとした煌めきの中に、仮面で隠された素顔をのぞかせるような緊張感が漂い、聴く者に一筋縄ではいかない余韻を残す。

当時のtrfといえば、『BOY MEETS GIRL』『CRAZY GONNA CRAZY』など、開放感と楽しさを前面に押し出したナンバーが人気を集めていた。そんな中でこの『masquerade』は、4枚目の『Silver and Gold dance』に近い“都会的で硬質なサウンド”をまとった一曲として、グループの幅広さを示す存在となったのだ。

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TRF-1998年撮影 (C)SANKEI

宝石の輝きと重なった“幻想の旋律”

この楽曲を広く世に知らしめたのは、「カメリアダイヤモンド」のCMに使用されたことだった。豪華な映像に流れる『masquerade』の音は、まるで宝石の輝きを音楽に変換したかのように耳に残り、視聴者に「特別な時間」を予感させた。

街角の大型ビジョンや深夜のテレビから流れるそのサウンドは、当時の若者にとって“憧れと大人びたムード”を象徴するものとして強く印象づけられた。

シングルは発売と同時にランキング初登場1位を記録。累計では130万枚を超える大ヒットとなり、trfの存在感をさらに確立する結果となった。ポップさだけでなく、クールさを武器にできるユニットだということを示した点で、この曲の持つ意味は大きい。

ポップの影に潜んだ“異彩のクールネス”

YU-KIのボーカルは、力強さと透明感を兼ね備え、華やかなリズムに飲み込まれることなく鮮烈に響く。その一方で、どこか抑制された緊張感が漂い、仮面の奥に秘められた感情を想像させる。聴き手はその声に導かれるように、曲の奥にある物語を思い描いたのではないだろうか。

ステージでは、SAM・ETSU・CHIHARUが織りなすダンスが、YU-KIの歌声とDJ KOOのビートに重なり合い、幻想的でありながら力強い空間を作り出した。

『masquerade』は、trfの多面的な魅力を象徴する楽曲だ。開放的でポジティブな楽曲が世間に広く受け入れられていた中で、こうしたクールでストイックな一曲を放つことで、グループは単なる「パーティユニット」にとどまらない奥行きを示した。

小室哲哉のプロデュースは、クラブミュージック的なエッセンスを大胆に取り入れながらも、J-POPの枠組みできちんと成立させる絶妙なバランスを備えていた。その挑戦が、trfの存在をより立体的にし、90年代J-POPの進化そのものを体現していたといえる。

時を越えてよみがえる“光と影の記憶”

30年という時を経ても、『masquerade』を耳にすれば、当時の街のネオンや煌びやかな広告、そして未来に揺れる気持ちを抱えた自分自身の姿が鮮やかによみがえる。

明るさと影、解放感と緊張感。その両方を内包していたからこそ、この曲はただのヒットナンバーではなく、90年代半ばの空気を刻む“象徴”となったのだ。

trfの楽曲群の中で“異彩を放つクールナンバー”として、『masquerade』は今も確かに輝きを放ち続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。