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20年前、日本中が痺れた“5人の応酬ラップソング” ジャンルの壁を壊した“唯一無二のパーティーチューン”

  • 2025.9.29

「20年前の冬、あなたはどんな音楽に心をあずけていた?」

2005年1月、コンビニのBGMやテレビの音楽番組からは新年を彩るポップなナンバーが次々と流れていた。冷たい風が頬をかすめ、人々はマフラーを巻き直しながらも、心のどこかで「今年はどんな一年になるのだろう」と小さな期待を抱いていた。そんな中、ラジオから、思わず手を叩きたくなる軽快なリズムと無邪気な掛け声が響いてきた瞬間、多くの人は思わず笑顔になった。

nobodyknows+『シアワセナラテヲタタコウ』(作詞:g-ton、CRYSTAL BOY、ヤス一番?、HIDDEN FISH、ノリ・ダ・ファンキーシビレサス・作曲:DJ MITSU)――2005年1月13日発売

名古屋の街から響いた祝祭のリズム

この作品は、nobodyknows+にとって4枚目のシングル。大ヒットした前作『ココロオドル』、アルバム『Do You Know?』のリリースを経て約半年ぶりに届けられた新曲だった。

名古屋を拠点に活動していたnobodyknows+は、ヒップホップの硬派なイメージを軽やかに飛び越え、ポップでキャッチーな響きを重ねていくことで独自の立ち位置を築いていた。5人のMC(現在は4MC)とDJが織りなすユニークなアンサンブルは、まさに“宴”そのもの。

DJ MITSUが生み出すメロディアスでダンサブルなトラックは、聴くだけで気持ちが解けていくような明るさをまとい、耳にした人を自然とその世界に誘い込んでいった。

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2006年、nobodyknows+のライブより (C)SANKEI

言葉が音に変わる“躍動のフロー”

『シアワセナラテヲタタコウ』の最大の魅力は、何といっても5人のMCによるラップの掛け合いにある。

それぞれの声色やキャラクターを活かしながら、テンポ良くリレーしていくスタイルは、まるでステージ上での即興セッションをそのまま録音したかのような臨場感を生んでいた。時にユーモラスに笑いを誘い、時に流れるように疾走するそのフローは、言葉そのものが音楽になって弾け飛ぶ感覚を味わわせてくれる。

一見シンプルに聴こえるトラックも、耳を澄ませば随所に仕掛けが潜んでいる。小気味よいリズムの裏で跳ねるように鳴る音、ふとした瞬間に入り込む効果音。そのひとつひとつが空気をさらに華やかにし、クラブでもラジオでも家庭のスピーカーでも映える普遍性を実現していた。タイトルのキャッチーさと相まって、誰もが気づけば体を揺らし、自然と手を叩いてしまう――そんな力があった。

胸に鳴り響く“心の手拍子”

『シアワセナラテヲタタコウ』は、パーティーソングとしての楽しさと、nobodyknows+が掲げる「誰もが楽しめる音楽」という信念を、最もわかりやすい形で体現していた。

2000年代半ば、日本のヒップホップは次第に市民権を得ていく過程にあった。そのなかでnobodyknows+は、ストリートの感覚を大切にしながらも、ポップスとして広く受け入れられる音楽を提示することに成功した。本格的でありながら遊び心を忘れない彼らの姿勢は、単なる流行を超えて、ジャンルの垣根を越える魅力を持っていた。

20年が経った今でも、この楽曲を聴けば、真冬の澄んだ空気の中で弾けた掛け声や、仲間と並んで笑いながら手を叩いた記憶がよみがえる人も多いだろう。華美な装飾ではなく親しみやすさ、技巧の誇示ではなく遊び心。そのバランスが、この曲を唯一無二のパーティーチューンへと押し上げている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。