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20年前、日本中が沸き立った“異質の高速ラップ” 時代の先を駆け抜けた“日&英の未来系サウンド”

  • 2025.9.27

「20年前の新年、あなたはどんな音に心を震わせていた?」

2005年1月。初売りでにぎわう繁華街には華やかな広告が並び、ラジオからは最新のヒット曲が次々と流れていた。夜になればクラブイベントやカウントダウンライブの熱気がまだ残っており、街全体が新しい年のエネルギーに包まれていた。そんな高揚感の真っ只中で、ひときわ異彩を放つサウンドが響きわたる。

SOUL’d OUT『To All Tha Dreamers』(作詞:Diggy-MO’、Bro.Hi・作曲:Diggy-MO’、Shinnosuke)――2005年1月1日発売

熱気をまとったSOUL’d OUTの存在感

SOUL’d OUTはDiggy-MO’、Bro.Hi、Shinnosukeの3人からなる音楽ユニットとして2003年にシングル『ウェカピポ』でメジャーデビューを果たした。彼らの武器は、日本語と英語を縦横無尽に行き来する高速ラップと強烈なキャッチーさにあった。

当時、日本語ラップはすでに広く市民権を得ていた。しかしSOUL’d OUTはその潮流とは違う地点に立っていた。Diggy-MO’とBro.Hiの異なる高速ラップが交錯し、Shinnosukeの未来的なサウンドが支える。結果として生まれたのは、「時代が追いつけなかった」と後年評されるほどの異質さだった。

『To All Tha Dreamers』は、そんな彼らがシングルヒットを重ねた後、新しい年の幕開けと同時に放った通算8枚目のシングル。同名アルバム『To All Tha Dreamers』に先がけてリリースされた先行曲でもあり、まさに“次のステージ”へと進む宣言のような作品だった。

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『MTV THE SUPER DRY LIVE 2005』記者発表会に登場したSOUL'd OUT (C)SANKEI

魅力の核心――異なる質感が交差した“強力な一曲”

この曲の最大の特徴は、SOUL’d OUTがこれまで培ってきた要素が凝縮されている点にある。Diggy-MO’の滑らかで鋭いフロウと、Bro.Hiの乾いた響きを持つラップ。質感の異なる二人の高速フロウが交差することで、息をつかせぬ推進力が生まれていた

さらにShinnosukeが手がけるトラックは、硬質なビートの中にシンセサウンドを散りばめ、疾走感とスケール感を兼ね備えていた。イントロからリスナーを一気に引き込むエネルギーは圧倒的で、サビに向かうブレイクの瞬間には、ライブの熱気すら感じさせる迫力があった。

クラブの床を震わせるようなビートと、ポップシーンに届くメロディ感の両立こそが、この楽曲を特別な存在にした理由だろう。

シーンを広げたSOUL’d OUTの軌跡

当時、彼らは『ウェカピポ』『Flyte Tyme』など、強烈な個性を持つシングルでシーンをにぎわせていた。『To All Tha Dreamers』は、その流れの中で生まれた“集大成的な強度”をもった楽曲だ。

日本のラップシーンはすでに広がりを見せていたが、SOUL’d OUTはそのどこにも収まりきらない存在感で異彩を放った。その広がりは、後の世代のラッパーたちがメインストリームに進出していくための道筋を示したともいえる。

余韻としての“夢追いの時代”

2000年代半ば、日本の音楽は着うたや配信といった新しい形が広がっていた。音楽の聴かれ方が大きく変わろうとしていた過渡期に、『To All Tha Dreamers』は“夢を追い続けること”を肯定する象徴として響いた。受験や就職、新生活を迎えようとする世代の背中を押すようなエネルギーが、この曲には宿っていた。

今聴き返せば、Diggy-MO’とBro.Hiのラップは時代の空気を切り裂くように鋭く、Shinnosukeのビートは今なお色あせない強度を保っている。

20年前の新年に鳴り響いたその熱量は、SOUL’d OUTの頂点を象徴するだけでなく、日本のラップシーンがメインカルチャーに食い込んでいくうえで欠かせないターニングポイントでもあった。あの頃夢を追っていた人々の記憶とともに、今もなおリスナーの胸に残り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。