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25年前、日本中を驚かせた“光と影の異質なロック” バージョン違いで4曲収録した“実験的シングル”

  • 2025.9.27

「25年前、あなたはどんな音楽に未来を重ねていた?」

2000年1月。ミレニアムという言葉が日常にあふれ、街には新しい時代を迎える高揚感と、少しの戸惑いが混じり合っていた。冷たい空気に包まれた夜、ネオンが瞬く都会の隙間から流れてきたのは、どこか異質で、けれども強く耳を惹きつける旋律だった。

THE YELLOW MONKEY『聖なる海とサンシャイン』(作詞・作曲:吉井和哉)——2000年1月26日発売

それは、既に日本のロックシーンを代表する存在となっていたバンドが放った、20枚目のシングル。前作『バラ色の日々』に続き、外部プロデューサーとしてUAのプロデュースなどで知られるRam Jam Worldの朝本浩文を迎え、Co-Produceという形で完成した楽曲だった。

揺らめく旋律が描いた“光と影”

この曲に触れた瞬間、まず感じるのは一筋縄ではいかない空気感だ。吉井和哉が描き出すメロディは、明るさと陰りが入り混じる不思議な質感を持ち、聴く人の心を揺さぶる。バンドのラフな衝動をそのまま鳴らすのではなく、プロデューサー朝本の手によって緻密に磨かれ、独特のリズムアプローチが織り込まれていた。

結果として『聖なる海とサンシャイン』は、従来のTHE YELLOW MONKEYらしさに新しい解釈を加えた一曲となった。作品全体が「光」と「影」のコントラストを帯びて響く。

ひとつの曲に宿した“終わらない実験”

もうひとつ見逃せないのは、カップリングに収録された内容だった。シングル盤には、同曲のバージョン違いがさらに4曲も並んでいたのだ。バンドの歴史の中でも異例といえる構成であり、「1曲をとことん掘り下げる」という挑戦的な姿勢がそこにあった。THE YELLOW MONKEYのような骨太なロックバンドが、バージョン違いで1つのシングルを複数も含めることはかなり珍しいことだろう。

90年代を駆け抜け、数々のヒットを生み出したバンドが、2000年代の幕開けにあえて「実験」を選んだこと。その姿勢は、単なるシングルリリース以上に意義深いものとして記憶される。聴き手にとっては、作品を何度も繰り返し聴きながら、曲の新しい側面を発見できる楽しみをもたらした。

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『ジョン・レノン スーパーライブ2009』に登場したTHE YELLOW MONKEYのボーカル・吉井和哉 (C)SANKEI

時代の狭間で鳴り響いた“異質な鼓動”

『聖なる海とサンシャイン』が発表された2000年初頭、日本の音楽シーンはまさに変革期にあった。CDセールスのピークを迎える一方で、新しいサウンドやプロデュース手法が次々に試され、リスナーの嗜好も多様化していった。

そうした背景の中で、このシングルが持つ「異質さ」や「実験性」は、セールス面で突出することはなくとも、確かに時代の空気を映し出していた。人気や数字を超えたところで、音楽そのものの可能性を追求する――その意思こそが、この作品に刻まれている。

冬の海に差し込んだ“静かな陽光”

『聖なる海とサンシャイン』を聴き返すと、そこには2000年の街の匂いとともに、未来へと進もうとする音楽の姿勢が重なる。時代の潮流に迎合するのではなく、バンドとしての歩みを確かめるように刻まれたこの一枚は、華やかなヒットソングとは異なる記憶の残り方をしている。

それはまるで、冬の海に差し込む陽光のような存在感。強烈に照らすわけではないが、確かに心を温め、静かにその余韻を残す。25年経った今もなお、耳にすればあの頃の空気が蘇るのは、その光と影のバランスが永遠に変わらないからだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。