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ムッシャンが初ランウェイ。2025年7月5日の“あの予言”が着想源【2026年春夏 東京コレクション】

  • 2025.9.2

AIによる不穏な音声がリフレインされ、鮮烈なレッドライトがランウェイを照らす。タイトフィットで透け感のある、とはいえ身体をことさらセクシュアルに視線に晒すわけでないムッシャンMUKCYEN)らしいセカンドスキンを纏い、枕のようなアイテムを携えた裸足のモデルが登場しショーが始まった。

「今年7月5日に大災害が起こるという予言を受けて、限りある時間どう生きるかを考えました。そして、いつか突然やって来る何かにどう向き合うのかにフォーカスしました」とデザイナーの木村由佳は語り、ファーストルックは起き抜けの姿を思わせ、何人かのモデルが抱えるシューズやぬいぐるみ、ライトは「迫り来る何か」から逃げ出す際の持ち物を彷彿とさせた。

シグネチャーのセカンドスキンシリーズは、キュプラ地を重ね、長時間着用を見越したルームウェアのような着心地にアップデート。そして「女性にとってもっと良いものを届けたい」という思いから、スキンケア効果のある素材をあらたに開発したという。

「様々な場面で着られる服をイメージして作りました」と木村。とはいえベーシック然としたアイテムでミニマルを志向する訳でなく、昨シーズンに続き、ムッシャンらしいレイヤリングやドレーピングを効かせたリアルクローズを目指している。

中盤以降には、序盤のセカンドスキンのルックとは趣が異なる、退廃的なSF作品、ないしは鎧のようなディテールやコルセットなど中世を想起させるルックがつづく。真っ赤な舞台装置が近未来のムードを加速させる一方で、ライトだけでなくハーネスでも時折アクセントとして使用される「赤」というカラーが、デザイナーのルーツが中国にもあることを思い起こさせる。

今シーズン、「NEXT BRAND AWARD」のグランプリを受賞したことで、ブランド設立時から“待望だったショー”を実現させ東京コレクションに初参加。ショー直後のバックステージで木村は「実感はありませんが、多くの人たちとお互い尊重し合って、この一瞬を作り上げたことの素晴らしさに感動しています。この過程を経て、ブランドの未来が見えてきたように思います」と感情をにじませた。

ショーの1週間前に行ったインタビューで木村は「ブランド名は、デザイナー苗字の中国語表記を元にした造語。検索しても他のものが出てこない、何かに属さない新しいカテゴリーを作りたいという思いから名付けました」と話していた。デビューショーでは、散り散りに広がる多様なエッセンスと、形容しがたいムードが、およそ10分間のランウェイに収斂されることで、確かな“ムッシャンらしさ”を観客に示していた。

Photos: Courtesy of MUKCYEN

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