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日本テレビで放送中の『ESCAPE』最大の魅力とは? 誘拐犯と人質の“奇妙な逃避行”を描いたヒューマンドラマ

  • 2025.11.27

桜田ひよりと佐野勇斗がW主演を務める連続ドラマ『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(以下『エスケイプ』)は、誘拐犯と人質の奇妙な逃避行を描いた物語だ。

以下本文には放送内容が含まれます。

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『ESCAPE それは誘拐のはずだった』第4話(C)日本テレビ

大手製薬会社・八神製薬の社長令嬢である八神結以(桜田ひより)は、20歳のバースデーパーティー終了後に、ホテルの控室に戻ったところ、斎藤丈治(飯田基祐)、山口健二(結木滉星)、林田大介(佐野勇斗)たち3人の誘拐犯に拉致されてしまう。
誘拐犯は娘を返して欲しければ今日の18時までに3億円を用意しろと八神製薬の社長で結以の父親・慶志(北村一輝)を脅迫。
しかし、結以にはGPSが付けられており、誘拐犯たちの隠れ家にセキュリティーガードが乗り込んでくる。

主犯の斎藤は心臓発作を起こし、その場に倒れてしまい、林田は結以を連れて車で逃亡。
先に隠れ家を出て身代金を受け取るための準備をしていた山口とも連絡が取れなくなり、林田は計画が失敗したことを悟る。

途方にくれる林田だったが、その時、結以は、自分にGPSを付けたのは父親で、犯罪者のように厳しい監視下に置かれていたことを告白する。

その後、林田は警察から逃げるため、結以は父親から逃げるため、行動を共にすることになる。
そして、正体を隠すため、二人はお互いのことを、ハチ(八神結以)、リンダ(林田大介)と呼び、逃走劇を繰り広げることになる。

現代的な犯罪劇と普遍的なヒューマンドラマの絶妙なバランス

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『ESCAPE それは誘拐のはずだった』第4話(C)日本テレビ

『エスケイプ』は、ひかわかよ脚本のオリジナルドラマだが、とにかく物語のバランスが良いため、観ていて心地が良い。

本作はロードムービー型の逃亡劇で、ハチとリンダが追手から逃げながら、行く先々で困っている人々を助けるヒューマンドラマとなっている。

1963~67年にかけてアメリカで放送され大ヒットした連続ドラマ『逃亡者』を筆頭に、逃亡する主人公が行く先々で人助けをしていく物語は昔から人気だが、そこにGPS、SNS、動画配信といった現代的なアイテムを加えることで、現代性を備えた普遍的な物語を生み出すことに成功している。

この面白さは、途中から二人の仲間に加わるガン(志田未来)の登場によって、より加速する。

彼女はリンダが過去に関わっていた闇バイトの指示役で、無線傍受やハッキングで二人を援助する。
当初はいつ裏切るかわからない悪役かと思ったら、想像以上に良い人で驚いたが、悪そうに見えて実は優しいガンは、本作を象徴する存在だ。

犯罪を題材にした作品は、現代社会の闇を描くため、救いのない殺伐とした展開になりがちだが、本作は誘拐を通して社会の闇を描きながらも、逃走中のハチとリンダが困っている人たちを助けるヒューマンドラマとなっているため、人間の優しさを信じたいという気持ちが強く打ち出された善意の物語となっている。
社会の暗部をしっかりと描きながらも、その闇に呑まれずに、ギリギリのところで立ち止まり善意が勝る物語を書ける作家は、中々いない。
その意味でも、ひかわかよの脚本のバランス感覚の良さに何より驚かされたというのが、本作に対する印象だ。

ドラマを支える桜田ひよりと佐野勇斗の演技。

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『ESCAPE それは誘拐のはずだった』第4話(C)日本テレビ

そして、ドラマに華やかな魅力を与えているのが、W主演の桜田ひよりと佐野勇斗の若々しい勢いのある演技だ。

桜田ひよりは、子役時代から活躍している若手女優で、近年は『silent』や『家政婦のミタゾノ(第6シリーズ)』といった話題の連続ドラマに次々と出演している。
昨年放送された連続ドラマ『あの子の子ども』では、同級生の彼氏の子を妊娠してしまい、出産するかどうかで葛藤する女子高生の心情を見事に表現し、女優としてのポテンシャルの高さを証明した。
年齢よりも幼く見える子供っぽい表情の中に、生々しい感情を込めた演技ができるのが彼女の魅力だ。 『エスケイプ』のハチも、当初は清楚な社長令嬢に見えたが、誘拐犯に捕まると芯の強さを見せて、ハチと対等に渡り合う勝気な姿を見せており、積極的に行動する力強い女性を好演している。

一方、佐野勇斗は、ボーカルダンスユニット・M!LK のメンバーとして活躍する一方で、俳優としてのキャリアを着々と積み上げてきた。
作品ごとに印象がガラッと変わるのが佐野の特徴で、2023年の連続ドラマ『トリリオンゲーム』では人と話すのが苦手なパソコンオタクの青年を演じ、2024年度後期の連続テレビ小説『おむすび』では、野球選手を目指す明るく爽やかな男を演じた。
そして、今年の夏クールに放送された連続ドラマ『ひとりでしにたい』では、複雑な家庭環境で育ったエリート官僚の青年を演じたのだが、今回の『エスケイプ』では、誘拐犯の青年という、これまでとは打って変わって、髪を染めた元不良の荒々しい青年を好演しており、見事にハマっている。
リンダを演じる佐野の勢いのある力強い演技を観ていると『池袋ウエストゲートパーク』や『タイガー&ドラゴン』といった宮藤官九郎脚本の連続ドラマに出演していた20代の頃の長瀬智也を思い出す。

社長令嬢で頭脳明晰に見えるが実は世間知らずで年齢の割に幼いハチと、元不良で自動車工場で働いていた荒々しいリンダのやりとりは観ていてとても楽しい。
二人とも喧嘩腰で喋り、お互いを警戒しているのだが、次第に相手を信用するようになっていき、悪口を言っている時も、兄妹喧嘩をしているようで微笑ましい。
また、正体を隠して逃げているため、二人の衣装は、毎回変わっていく。そのためファッションショーを観ているような楽しさもある。

様々な魅力が散りばめられたバラエティ豊かなドラマだが、何よりW主演の桜田ひよりと佐野勇斗の若々しいキラキラとした芝居が観られることが、本作最大の魅力だと言えよう。


日本テレビ系 『ESCAPE それは誘拐のはずだった』毎週水曜よる10時〜

ライター:成馬零一

76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)がある。