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TBS、“前代未聞の挑戦”に高まる期待 重要な連ドラ放送枠の脚本家に“期待の新人”を大抜擢 『フェイクマミー』

  • 2025.9.12

秋ドラマの情報が出揃うなか、これまでにない背景で制作が進められているのが、TBS金曜ドラマ『フェイクマミー』だ。本作は、TBSが2017年以来6年ぶりに開催したシナリオコンクール「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE 2023」の大賞作の映像化となる作品だ。

唯一の連ドラコンクールの映像化

近年、テレビ局主催のシナリオコンクールの映像化が活発に行われている。フジテレビが主催する「ヤングシナリオ大賞」や日本放送作家協会とNHKが共催している「創作テレビドラマ大賞」などは古くから映像化されているが、テレビ朝日主催の「テレビ朝日新人シナリオ大賞」の2023年大賞作『スプリング!』も今年の3月に映像化された。日本テレビ主催の「シナリオライターコンテスト」の2023年大賞作「217円の絵」も、映像化予定だ。

大賞作の映像化は、各局が見つけた新人脚本家のデビュー作となる。プロデューサーとの相性、新人脚本家の力量によっては、局との強いパイプを持った脚本家を育成することにつながる。例えば、第33回ヤングシナリオ大賞を受賞した生方美久は、受賞以降審査員のひとりであったプロデューサー・村瀬健と共に、『silent』『いちばんすきな花』『海のはじまり』とフジテレビでヒット作を続々と生み出している。

そんな新人脚本家の作家性を生かしたドラマが制作されるなか、開催された「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE 2023」は、他局のように単発ドラマの脚本を求めるのとは異なり、唯一の連ドラコンクールだ。提出するのは、連ドラの企画書と10話分の全体構成、第1話の脚本。脚本の技術だけでなく、連ドラの企画力、10話分の展開力などを審査する内容になっている。

また、「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」は受賞者が多いのも特徴だ。2023年は、大賞、優秀賞、佳作、チャレンジ賞を含め、8組が受賞している。このメンバーはTBSが運営するライターズルームに参加し、受賞者の養成、企画開発、脚本の共同執筆などを行っているそうだ。2023年に優秀賞を受賞した澤田航太は、夏ドラマ『初恋DOGS』のサイドストーリーの脚本を担当しており、ライターズルームの成果といえるだろう。連ドラの企画執筆ができる原石を探しつつ、新しい脚本家を育成するためのコンクールなのだ。

前代未聞の挑戦は吉と出るのか

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波瑠 (C)SANKEI

前述の通り、他局が主催するコンクールの大賞作は映像化されているとはいえ、どれも1時間程度の単発ドラマだ。また、放送時間もお昼や深夜など、いわゆるゴールデン・プライム帯ではない。

今回の『フェイクマミー』の放送枠は、金曜22時。これまで『MIU404』や『俺の家の話』、『最愛』『不適切にもほどがある!』など、ヒット作を連発してきたTBSの重要なドラマ放送枠だ。その枠で、無名の新人脚本家が企画・執筆したドラマを放送するわけだ。これがどれだけ挑戦的なことか理解してもらえるだろう。

『フェイクマミー』は、名門私立小学校のお受験のために、主人公・花村薫(波瑠)が日高茉海恵(川栄李奈)と“ニセママ契約”を結ぶところから始まる物語。脚本を担当するのは、園村三。月刊ドラマに掲載された受賞時のコメントを見るに、園村自身が生活の中で感じた現代女性の生き方の難しさを反映したテーマになっているようだ。なぜ本作が大賞に選ばれたのかという観点から見ることで、TBSが現代にどんなドラマを送り出したいと考えているのかを、見つめることもできそうだ。

数々の名作ドラマを生み出してきたTBSの新たな挑戦。日本のエンタメをより充実させるためにも、ぜひ成功を収めてほしい。


ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202