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「朝ドラ史に残る名作」38年前のNHK連続テレビ小説に“相次ぐ絶賛の声”、再放送で“新たなファン”が続出中

  • 2025.9.12

現在、再放送中のNHK連続テレビ小説『チョッちゃん』(1987年)は、黒柳徹子の母・黒柳朝をモデルにした、「チョッちゃん」という愛称で呼ばれるヒロイン・北山蝶子(結婚後の姓は岩崎)の人生を描いた朝ドラだ。黒柳朝の自伝『チョッちゃんが行くわよ』を原作とし、金子成人が脚本を担当。登場人物の心情や行動が非常に丁寧に描かれていると絶賛されている。

長年、朝ドラを観続けている筆者も、本作が最も好きな朝ドラになりつつある。再放送を楽しんでいる視聴者からも、「朝ドラ史に残る名作」「すごい脚本、すごい演技」「脚本・演出・演技が繊細」「脚本の人物造形が丁寧」といったコメントが連日SNSに書き込まれており、夢中で観ている人が後を絶たない模様だ。

※この記事にはネタバレが含まれています。

『チョッちゃん』概要

黒柳徹子といえば、自伝『窓ぎわのトットちゃん』が有名で、彼女のユニークな子ども時代の出来事が綴られているが、そんなトットちゃんの母親はどこで生まれ育ち、どんな人生を送ったのか。それを描いているのが、朝ドラ『チョッちゃん』だ。

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古村比呂(C)SANKEI

ドラマは、16歳の蝶子(古村比呂)が北海道・岩見沢の女学校に通い、寄宿舎暮らしをしているところから始まる。自宅は道内の滝川で、医師の父・俊道(佐藤慶)と、熱心に教会に通うクリスチャンの母・みさ(由紀さおり)のもとに生まれ、兄と弟がいる蝶子。歌うことが大好きで、声楽家になる夢を抱くが、俊道には反対されている。

好奇心旺盛な蝶子は、制服のスカートを短くしたり、買い食いしたりして、よく校長から呼び出しを食らうも、問題児というほどではない。だが、俊道にとっては悩みの種ではある。友達とかしましく女学校時代を過ごし、卒業後は俊道の反対を押し切って、東京の音楽学校に入学。みさの弟・野々村泰輔(川谷拓三、途中から前田吟)と妻・富子(佐藤オリヱ)の家に下宿する蝶子。

歌劇の舞台のコーラスに参加するようになった蝶子は、天才バイオリニストと呼ばれる岩崎要(世良公則)に見初められる。要から声楽家になる才能はないと断言され、プロポーズされた蝶子は要と結婚するが、後に、結婚を承諾してほしいあまり、要が嘘を言って、蝶子に声楽家の夢を諦めさせたのだと発覚する。女性にモテる要は、何かと女性問題を起こしたりしていたが、蝶子と結婚するにあたって、女性関係はすべて清算し、飲酒もやめて妻一筋に。だが、気性が荒く、怒りっぽい要の性格は、父親になってからも変わらず、蝶子が子どもを連れて家出することもしばしばだった……。

登場人物は1人も脇役感がない

恋愛に疎い蝶子が、徐々に要の良さに気づき、恋に落ちていく様子が、とても詩的に描写されたのが、多くの視聴者の心をつかんだ。結婚後は、夫に対しても理不尽だと思うことはハッキリと口にする蝶子は、観ていてスカッとする。夫婦ゲンカをして、蝶子が家出をすると、ばつが悪そうに野々村家に妻を迎えに行く要が何とも可愛らしく、どうしても憎めない。

遠く離れた北海道で、東京に暮らす蝶子を心配する俊道とみさ。世話を焼きながら、温かく支える野々村夫妻。ほかにも、ヒロインを取り巻く人物は、1人も脇役感がなく、全員にスポットが当たっているようで、雑に扱われることがないのも本作の魅力だ。

徹子にあたる長女・加津子(椎野愛、後に藤重麻奈美)や、長男、次男を育てるうちに、蝶子と要が夫婦として、親として成長していく様子も、とても丁寧に描かれていく。そんな中、蝶子の親友の田所邦子(宮崎萬純)が、女学校の担任だった神谷容(役所広司)と東京で同棲することになったり、幼なじみの彦坂頼介(杉本哲太)が、ずっと蝶子に片想いしていたことが発覚したりと、恋愛要素も描かれる。

1つ1つの描写が繊細で、決して大げさではないのも本作の魅力。心に染み渡るように、感動が広がっていき、思わず涙がこぼれるのは、毎エピソードの演出と、主演の古村比呂をはじめとする出演者の演技が秀逸だからだろう。説明台詞のようなものがなく、登場人物の言葉が多くなくても、しっかりと物語が伝わってくるのは、表情演技が素晴らしいからこそだと思う。

日本の映画やドラマに欠かせない有名俳優たちが名演技を披露

日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞を何度も受賞し、海外の作品でも活躍している、日本を代表する俳優・役所広司が、とてもユニークなキャラクターで出演しているのも見どころの1つだ。役所が演じる神谷は、蝶子が校長に叱られるようなことをしても、彼女の個性を認め、生徒たちを否定するようなことはしない、生徒思いの教師だ。

邦子と同棲したことには驚いたが、彼女が自分との暮らしを解消し、女優へと羽ばたいていくのを見守り、後に童話作家になるという、観ていてとても面白い役柄の神谷。ずっと独身の恩師を心配した蝶子や邦子が、頼介の妹との結婚を勧め、ようやく実を固めた神谷を、役所は喜々として快演している。

本作のナレーターは、2024年に惜しくも他界した西田敏行が務めている。穏やかで、時にコミカルに、そして視聴者の気持ちを代弁するような西田のナレーションも、『チョッちゃん』の魅力の1つとなっている。

前田吟、笹野高史、片岡鶴太郎、杉本哲太といった、現在もTVドラマなどに欠かせない面々が、1987年の朝ドラですごく良い味を出し、蝶子たちを支えるキャラクターを好演しているのも、観ていて楽しい。筆者は子どもの頃、名優・佐藤慶が大好きだったのだが、本作で気難しくて子どもっぽいところもあるが、とても家族思いの父親で、近所の人に慕われる医師の俊道を演じている佐藤を、ぜひ多くの人に観ていただけたらと思う。2010年に他界した彼の名演技を観ることができる本作は、非常におすすめだ。

黒柳徹子の母方の祖母は家事が一切できない!?

由紀さおりが、家事が一切できない母親を演じているのも、朝ドラ史上、珍しい設定と言える。夫の俊道は呆れながらも仕方ないと諦めているし、娘の蝶子はみさを反面教師にして、家事や裁縫、日曜大工まで何でもこなせるようになった。でも、いつでも味方になってくれる優しい母のみさは、常に蝶子の心の支えだし、周囲を明るくする存在だ。由紀は、みさ役がとても良くハマっている。

放送当時、20代前半だった古村比呂と、30代前半だった世良公則が、主人公夫婦を素敵に演じ、全国のお茶の間を楽しませてくれた朝ドラ『チョッちゃん』は、今またファンを増やしている。黒柳徹子は、本作のヒロインに伸び伸びと育てられたから、『窓ぎわのトットちゃん』で描かれているような子ども時代を送ることができたし、日本を代表するタレントとなって、現在も大活躍し続けていることが納得できる。『チョッちゃん』は、朝ドラ史に残る必見の名作だ。


ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP