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朝ドラで“派手さはなくても”強く印象を残す演技力「大人になって」「めっちゃ成長」静かに話題を呼んでいる新たな“カメレオン俳優” 

  • 2025.9.9
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『あんぱん』第23週(C)NHK

朝ドラ『あんぱん』第101回で再登場し、視聴者を驚かせたキャラクターを覚えているだろうか。かつて戦争孤児で、現在は八木(妻夫木聡)が立ち上げた九州コットンセンターで働く木月アキラだ。年月を経て、幼いころの目の輝きを宿しながらも、野心あふれる立派な青年として画面に現れた彼に、『あんぱん』が持つ物語の魅力や感動が一気に引き立てられた。木月アキラを演じる齊藤友暁の存在感や演技は、決して派手なものではない。しかし、彼が纏う“自然体の空気”が、作品全体に深みを与えているのも事実なのだ。

※以下本文には放送内容が含まれます。

『あんぱん』における木月アキラ役の魅力

かつて戦争孤児として描かれた木月アキラ。生き抜くために物を盗むことが、もはや手癖のようになってしまっていた彼だが、その心根は、かつて八木が読み聞かせた物語やのぶ(今田美桜)から受けた教育により、少しずつ本来の瑞々しさを取り戻していく。

そんな彼が、社会に出て働く青年へと成長し、ふたたびのぶや嵩の前に姿を現した。SNS上でも「アキラくん大人になって」「めっちゃ成長してる!」と話題を呼んだこの“再会”の場面は、『あんぱん』における時間の流れを明確に示してみせたと同時に、齊藤自身の成熟を映し出すものでもあった。

齊藤の演技には、派手さこそない。しかし、柔らかい所作や控えめな言葉の選び方に“必死で生き延びてきた青年の誠実さ”がにじむ。どこか不器用で、まだ社会の荒波に揉まれきっていない初々しさ。それでいて、かつての孤児時代の記憶を背負ったまま立っているような重みもある。その二面性を静かに描き出すことができたのは、齊藤の“自然体の演技力”によるものだと思える。

齊藤の演技には、あえて「つくり込まない」ことによるリアリティが宿っているのだ。誰しもが、自らの人生を生きる過程で一人や二人はいたような、確実に街中ですれ違っているような自然体。大げさな表情や感情の爆発ではなく、呼吸や視線、身体の動かし方といった細部に“いま、この瞬間を生きている人間らしさ”が滲み出ているのだ。

これは、彼がこれまでのキャリアで積み上げてきた舞台経験にも通じる。観客の目が至近距離にある舞台で培った、細やかなニュアンスを伝える力。それが映像作品でも、さりげない立ち姿や一瞬の沈黙として、視聴者の記憶に残る。アキラ役でも、そのリアリティが役柄を“ただの再登場”に終わらせなかった。

多彩な役柄をこなす“カメレオン俳優”

齊藤は、どんな役にでも染まれる“カメレオン俳優”への道に、すでに一歩踏み出している。実際、彼のフィルモグラフィーを振り返ると、その適応力はすでに確かなものとして表れているように見えるのだ。

中元雄監督作品の常連として出演し、オリジナルビデオ『スマホ拾っただけなのに』では冴えないオタク青年を演じた。一方で映画『いけにえマン』ではナイスガイ役を自然にこなし、舞台ではコミカルな人物からシリアスな役まで幅広く演じ分けてきた。

くわえて、アクションや殺陣、タップダンスを得意とし、野球で培った身体能力も備えている。こうした身体的な強みは、役柄に説得力を与える大きな武器となる。アキラ役は、派手なアクションこそ必要としないものの、彼の持つ身体性は、立ち姿の安定感や仕草の説得力として現れていた。

キャリアの歩みと確かな実績

齊藤は、俳優を志すも一度は福祉系の道へ進み、ふたたび夢を追って専門学校で演技を学び直したという経歴を持つ。その遠回りともいえる経験は、彼の役づくりに厚みをもたらしているのではないだろうか。社会での職務経験、その過程における人間観察の積み重ねが、登場人物にリアルな息吹を与えているのだろう。

舞台での活動を経て映像作品へと進出。近年では大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』、NHKドラマ『照子と瑠衣』などにも出演し、確実にキャリアの幅を広げている。

『あんぱん』での再登場によって、齊藤は視聴者に強烈な印象を残した。これまでのキャリアで積み上げてきた“自然体の演技”が、朝ドラという国民的ドラマで花開いた瞬間だった。

今後は、さらに大きな役柄を期待したいところだ。派手なアクション作品から、心の機微を描くヒューマンドラマまで、幅広い作品に適応できる器を持つ俳優である。何よりも、どの役を演じても“齊藤友暁らしさ”ではなく、“役そのもの”を感じさせる演技力は、まさにカメレオン俳優の資質だろう。


連続テレビ小説『あんぱん』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_


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