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“1600万回再生”の切り抜きで話題沸騰 人気シリーズに潜む“ファンだけが気づく”知られざるポイント【金曜ナイトドラマ】

  • 2025.9.12
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『奪い愛、真夏』第7話より(C)テレビ朝日

松本まりかが主演を務め、安田顕が共演するドラマ『奪い愛、真夏』が9月12日に最終回を迎える。

2017年の『奪い愛、冬』を皮切りにして、『奪い愛、夏』『殴り愛、炎』『奪い愛、高校教師』と続いてきた『奪い愛』シリーズ。約8年ぶりの新作となる『奪い愛、真夏』は、さまざまな登場人物たちが愛を奪い合う“ドロキュン”ラブストーリーであることは変わらず、そこに“タイムリープ”要素を掛け合わせた、“タイムリープ不倫”という新たなジャンルを確立している。脚本は、鈴木おさむ。脚本家としての引退を発表する以前から制作チームと約束をしており、今回特別に筆を執っている。

高橋メアリージュン演じる未来の「ずっと見てたよー!」が切り抜きで大バズり

話題の作品が数多く放送されている2025年夏ドラマの中でも、ある種局所的なバズり方をしているのが、この『奪い愛、真夏』。主人公の真夏(松本まりか)とその不倫相手となる時夢(安田顕)が廃校のプールで熱い口付けを交わす。そこに突如として現れた妻の未来(高橋メアリージュン)が「ずっと見てたよー!」と絶叫するシーンの切り抜きがSNSを中心にして1600万回を超える再生回数を記録しているのだ。これは嘘のような本当の話なのだが、先日筆者が電車に乗っている際、何気なく視界に入った人のスマホに映し出されていたのが、ちょうどこのシーンだった。TVerらしき画面だったので、追っかけで観ているのか、それとも「ずっと見てたよー!」目当てで観ていたのかとも想像を巡らせたが、そのくらいに世間に浸透したワンシーンだと言えるだろう。

その第3話を機に、物語は徐々にギアを上げていく。未来を演じる高橋メアリージュンの怪演が強烈でいて、その振り切りから、もはや鮮やかさすら感じられるのだ。狂気的なホラーの後に、笑いが込み上げてくる絶妙な塩梅は、鈴木おさむ脚本特有。最終章近くに入ってからは、狂気がインフレしてしまっており、メキシコの伝統文化「死者の日」風の白塗りメイクとなった常軌を逸した未来も、そういうものかと納得してしまいそうになる自分にハッと冷静になり、観ているこちら側も狂わせられているのか、などと考え込んでしまう――そんな稀な作品でもある。

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『奪い愛、真夏』第8話より(C)テレビ朝日

未来だけでなく、真夏の隣の部屋に住む激ヤバストーカーの元也(白濱亜嵐)や不倫の火種を巻き「ドッカーン」とつぶやく花火(森香澄)など、『奪い愛、真夏』はシリーズ屈指のぶっ飛んだキャラクターばかり。特筆すべきは、真夏の母・三子を演じている水野美紀。『奪い愛』シリーズの立役者である水野は、高橋メアリージュンにも負けず劣らずの怪演を披露しており、中でも『奪い愛、夏』で唇を重ねる関係の役柄にあった松本まりかと今度は親子として共演しているのは、ポイントの一つだろう。

『奪い愛、真夏』には『奪い愛、冬』のセルフオマージュが多数

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『奪い愛、真夏』第8話より(C)テレビ朝日

シリーズを通して『奪い愛』を観ているファンにとっては、『奪い愛、真夏』の随所にこれまでのシリーズ作品をモチーフにしたシーンが数多く、その代表的な例が未来の「ずっと見てたよー!」。これは『奪い愛、冬』と『奪い愛、夏』での蘭(水野美紀)の「ここにいるよー!」を、セルフオマージュした形であり、どの作品もインサートされているのは第3話のラストだった。当時、観るものに強烈なインパクトを与えた水野のポジションに、今作では高橋メアリージュンがいるということになる。未来が時夢の匂いをたどる際、鼻を鳴らす動作があるが、『奪い愛、夏』でもソムリエの資格を持っている桜(水野美紀)が椿(小池徹平)と杏(松本まりか)をクンカクンカと匂いで探知するシーンがあった。ほかにも、波乱のWデートやサレ妻が会社に乗り込んで不倫を暴露するという展開も、『奪い愛、冬』と『奪い愛、真夏』でリンクしている部分が多くある。

『奪い愛、真夏』は鈴木おさむにとって本当の脚本家引退作品になる?

先日、ドラマ『101回目のプロポーズ』の続編となる『102回目のプロポーズ』の制作が発表された。そこには鈴木おさむの名前が並んでいるが「企画」としてであり、今のところこの『奪い愛、真夏』が鈴木おさむにとって本当の脚本家引退作品になりそうだ。最終回に向けて、真夏と未来の地獄のラストバトルをメインに予測不能な展開が予告されており、そこにはシリーズラストを飾る狂気の結末が待ち受けているのは確実だ。


テレビ朝日系 金曜ナイトドラマ『奪い愛、真夏』
TVerで見逃し配信中
https://tver.jp/episodes/epbju2xxjb

ライター:渡辺彰浩
1988年生まれ。福島県出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』展、『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。