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25年前、日本中が心を掴まれた“名刺代わりのハーモニー” 40万枚超のロングヒットを記録した“海外エッセンスが芽吹くポップ”

  • 2025.9.15

「25年前、街角で流れていたあのハーモニーを覚えてる?」

2000年の夏。CDショップにはカラフルなジャケットがずらりと並んでいた。カラオケボックスでは学生も社会人もマイクを握りしめ、夜が明けるまで声を合わせて歌っていた。そんな熱気のただ中で、着実に広がっていった一曲がある。

ゴスペラーズ『永遠に』(作詞:安岡優・作曲:妹尾武)——2000年8月23日発売

グループにとって14枚目のシングルにあたるこの作品は、発売当初こそ控えめなスタートだったが、口コミやリスナーの支持に後押しされて息の長いヒットを記録。じわじわと順位を上げながら、最終的には累計で40万枚を超えるセールスを達成し、“ロングセールスの象徴”として語り継がれる一枚になった

ゴスペラーズを代表する“静かな名刺代わり”

『永遠に』は派手な宣伝やドラマタイアップに支えられたヒットではなく、まさに楽曲そのものの力でリスナーの心を掴んだ。発売週のランキングではそれほど目立たなかったものの、数週間、数か月と経つうちに口コミで広がり、ラジオリクエストやカラオケでの人気が後押しとなってチャート上位へと浮上。息の長い支持が続いたことで、ゴスペラーズの名前をお茶の間レベルに浸透させるきっかけとなった。

この曲をきっかけに、彼らはJ-POPのメインフィールドで戦えるアーティストとして認知されるようになる。つまり『永遠に』は、ゴスペラーズにとって名刺代わりであると同時に、キャリアを大きく押し広げた“分岐点のシングル”でもあった。

心を包み込むハーモニーの魅力

最大の魅力は、やはり五人の声が織りなす極上のハーモニーにある。低音から高音までをきれいにカバーする構成は、学生時代から磨き続けた技術の結晶であり、楽器以上に豊かな厚みを持って聴き手を包み込む。切なさを纏いながらも温もりを失わない旋律は、不思議と前向きな余韻を残す。

妹尾武が描いたメロディはシンプルながら深い奥行きを持ち、安岡優が紡ぐ歌詞は感情を巧みに宿らせた。そこに5人の声が重なり合ったとき、単なるラブソングを超え、聴く人それぞれの人生に寄り添う“普遍的な音楽”へと昇華されていた。

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ゴスペラーズ。前列左が『永遠に』の作詞を担当した安岡優-2006年撮影 (C)SANKEI

海外からのエッセンスが開いた未来

『永遠に』を特別なものにしたもう一つの要素が、海外クリエイターの関与だった。アメリカの若手ソングライターであったBryan-Michael CoxとPatrick “J.Que” Smithがプロデュースとして参加。二人は当時まだ駆け出しに近かったが、その後、ビヨンセやアリシア・キーズ、アリアナ・グランデ、アッシャーなど世界的アーティストに楽曲を提供し、グラミー賞に輝く存在へと成長していく。

つまり『永遠に』には、彼らがのちに花開かせる“R&B黄金時代の芽”がすでに潜んでいたのだ。日本のポップスに海外のソウル・R&Bのエッセンスを自然に織り込み、J-POPがグローバルなサウンドへと接近していく象徴のひとつと言ってもいいだろう。

25年経っても響く理由

2000年当時の日本の音楽は、ミリオンセールスを狙う派手なプロモーションが主流だった。だが『永遠に』は、一度聴いた人の心に深く沈み込み、ゆっくりと存在感を増していくタイプの楽曲だった。ランキングでの粘り強い動きが、それを何よりも雄弁に物語っている。

25年を経た今聴いても、5人の声が重なる瞬間には新鮮な驚きがある。デジタル全盛の時代にあっても、“声”という最もプリミティブな楽器だけで人の心を揺らすことができる——その力は、まったく色褪せていない。

『永遠に』はただのヒット曲ではない。世代を超えて聴かれ続け、人生の節目でふと口ずさまれる“永遠の名曲”。その響きはこれからも、静かに、しかし確かに人々の記憶に刻まれていくだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。