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25年前、日本中が聴き入った“クラブ×ポップの未来的ソング” あえてスローで勝負した“天使が歌う浮遊感サウンド”

  • 2025.9.14

「25年前、街を漂っていた“静かな熱”を覚えてる?」

2000年の幕開け。ミレニアムという言葉がまだ特別な響きを持ち、雑誌やテレビでは“新しい時代の始まり”を盛んに謳っていた頃。街のネオンはより鮮やかに輝き、渋谷や新宿のクラブには、未来を先取りするようなサウンドが夜通し鳴り響いていた。

しかし一方で、人々の胸の内には、不安や戸惑いも確かに息づいていた。そんな時代の空気を映すかのように現れたのが、一曲のスローナンバーだった。

m-flo『Hands』(作詞・作曲:VERBAL・LISA・☆Taku)——2000年2月16日発売

幻想を抱く夜に生まれた一曲

『Hands』は、m-floにとって通算5枚目のシングルであり、ファーストアルバム『Planet Shining』の先行カットとしてリリースされた。クラブカルチャーから台頭した新世代ユニットが、このタイミングで放ったのは、意外にもテンポを抑えたスローナンバー。

軽快なピアノが波紋のように広がり、ストリングスとハープが幻想的に重なり合うことで、浮遊感と温もりを同時に感じさせるサウンドが完成した。当時の音楽シーンではまだ珍しいスタイルで、その新鮮な響きはリスナーの耳に強く残った。

天使の歌声が描いた透明な世界

何より印象的なのは、LISAのボーカルだ。淡い光の粒が降り注ぐように響くその声は、力強さと柔らかさを兼ね備え、楽曲全体をやさしく包み込んでいく。

ミュージックビデオで彼女は天使に扮し、羽根を広げるように歌声を響かせた。その姿は視覚的にも聴覚的にも“幻想”を形にし、聴く人を日常から非日常へと誘う扉となった。LISAの透明感と天使のイメージが重なった瞬間、この曲は特別な物語を宿す作品へと昇華した。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

ユニットが描いた新しい挑戦

2000年当時、R&Bやダンスビートを取り入れたアーティストは増えていたが、m-floはその中でも独自の存在感を放っていた。VERBALの鋭いラップとLISAの伸びやかな歌声、☆Takuが生み出すサウンドデザインが交わることで、彼らは“バンド”でも“ソロシンガー”でもない、新しいユニット像を築いていた。『Hands』はその挑戦をスローナンバーの形で示し、クラブシーンとポップスの架け橋となるユニークな表現を見せつけた。

静寂から疾走へ、転がる物語

曲が進むにつれ、やわらかな空気は次第に変化していく。後半に差し掛かると、2STEPのリズムが忍び込み、サウンドは一気に躍動感を増す。そこにVERBALの高速ラップが切り込むように重なり、静かな幻想世界からクラブの熱狂へと移り変わる劇的な展開が生まれる。この切り替えはm-floの持つ二面性を象徴しており、スローナンバーとダンスチューン、その両方を自在に操るユニットとしてのポテンシャルを強く印象づけた。

初期の未来を映した名刺代わり

セールス的に突出した数字を残したわけではないが、『Hands』は彼らにとって大きな意味を持つ一枚だった。ファーストアルバム『Planet Shining』の先行シングルとして、m-floの多彩な音楽性をリスナーに提示する役割を担ったのだ。

この作品で示された可能性は、のちに『come again』などの代表曲へと受け継がれていく。振り返れば、『Hands』は“未来へ進むための序章”として、欠かすことのできない存在だったといえる。

余韻が紡ぐ2000年の記憶

いま聴き返しても、『Hands』の響きには2000年という時代の空気が色濃く残っている。夜景を彩るネオン、CDショップの試聴機、そしてクラブフロアに広がる低音。そのひとつひとつが楽曲の余韻と結びつき、聴く人の記憶を呼び覚ます。

煌びやかさよりも余白を大切にしたこのスローナンバーは、25年を経てもなお心に柔らかな光をともす

『Hands』は、m-floが未来へと歩み出す前に放った、透明で幻想的な光だったのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。