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30年前、日本中が熱狂した“疾走するジャングルビート” 80万枚超を叩き出した“実験的大ヒット曲”

  • 2025.9.16

「30年前の秋、街を走り抜けていたリズムを覚えてる?」

1995年。渋谷のスクランブル交差点には巨大なビジョンが輝き、センター街には若者たちが行き交っていた。深夜のカラオケボックスからは最新ヒットソングを歌う声が絶えず漏れ出し、CDショップの棚には毎週新しいシングルが並んでいた。

音楽番組はゴールデンタイムを席巻し、ランキングの動向が街の話題を決める——そんな熱気に包まれていた。

globe『Joy to the love (globe)』(作詞・作曲:小室哲哉)——1995年9月27日発売

デビューシングル『Feel Like dance』からわずか1か月半というスピードで届けられたこの2枚目のシングルは、トヨタ「サイノス」のCMソングとしてテレビから繰り返し流れ、小室哲哉自身が出演する映像と共に強烈な印象を残した。

光と影を抱えたリズムの魔法

『Joy to the love (globe)』の核にあるのは、ジャングル風のビートだ。刻むように疾走するリズムが土台となり、KEIKOの透明感あふれるボーカルが高らかに響き、マーク・パンサーのラップが鋭く切り込む。複数の要素が絶妙に重なり合うことで、楽曲はスピード感と奥行きを併せ持つサウンドに仕上がっている。

歌詞では「突然矢の様に訪れてくる」から始まるパートが強烈だ。まさに矢のように矢継ぎ早にシーンが展開し、「8回目のデート」「9回目の夜明け」と積み重ねられていく。そして「10回目の夜に愛してた」というフレーズに到達した瞬間、それまで張りつめていたリズムが一気に解き放たれ、聴き手を圧倒的な高揚感で包み込む

そして切ないサビと対照的に、AメロやBメロには前向きで明るい空気が漂い、そのコントラストが光と影を同時に抱えたglobeサウンドを際立たせていた。

同じ年にはH Jungle with t『WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント』も大ヒットしている。どちらも小室哲哉が手がけていたことを思えば、当時の彼がジャングル的なリズムに強く惹かれていたことがよくわかる。その感覚をglobeに持ち込み、KEIKOとマークの個性を重ねることで、さらに都会的で洗練された響きへと昇華させていたのだ。

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小室哲哉-1996年撮影 (C)SANKEI

伝達ミスが生んだ“もうひとつの名曲”

この曲の制作過程には、伝達ミスが生んだ印象的な出来事がある。完成後、CMのスポンサーは「曲そのものではなくアレンジを調整してほしい」と望んでいた。ところが、その意図がCM制作サイドから小室哲哉に伝わる過程で、「楽曲自体を作り直してほしい」というニュアンスに変わってしまったのだ。

小室は依頼を忠実に受け止め、帰国直後にスタジオへ直行。不眠不休で新曲を仕上げるという急ピッチの作業に挑んだ。しかし誤解が判明し「やはり元の曲で進めたい」という結論に落ち着く。

最終的に『Joy to the love (globe)』は少し手直しを加えた形で採用され、一方でそこで生まれた新曲は、後に華原朋美の2枚目のシングル『I BELIEVE』として世に送り出されることになった

わずかな伝達のすれ違いが、結果的に華原朋美を大きく飛躍させる楽曲を同じタイミングで生み出した。90年代の音楽シーンを語るうえで欠かせない、象徴的なエピソードのひとつだ。

3人の個性が描いた確かな輪郭

『Joy to the love (globe)』は発売直後から注目を集め、最終的に80万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。

当時の音楽シーンは“小室ファミリー”がチャートを賑わせていたが、globeはその中でもひときわ異彩を放っていた。

KEIKOの透明感あるボーカルに、マークのラップが絡み合い、小室のサウンドが全体をまとめあげる。小室自身がメンバーとして参加しているユニットだからこそ、プロデューサー業とは違う距離感で“実験”を仕掛けられた。ジャングル風のリズムや畳みかける言葉のリフレインは、その挑戦の象徴であり、のちに続く大ヒットへ向けた試行錯誤のプロセスを刻みつけている。

30年後も駆け抜ける記憶のビート

あれから30年。今も『Joy to the love (globe)』を耳にすると、当時の街の喧騒や青春のときめきが鮮やかによみがえる。ジャングル風のビートが心を突き動かし、KEIKOの歌声が伸びやかに空気を震わせ、マークのラップが未来への疾走感を刻み込む。

恋に夢中になっていた夜、カラオケで挑戦したあのフレーズ、テレビCMで繰り返し流れた映像。一人ひとりの記憶と結びつきながら、この楽曲は今も時代の鼓動を伝え続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。