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「今でも衝撃的!」30年前に誕生した“新感覚な英→日の直訳ロック” 20万枚超を売り上げた“ダサカッコいい名曲”

  • 2025.9.17

「30年前、ロックの名曲が“直訳”で鳴り響いた瞬間を覚えている?」

1995年の日本。街には厚底ブーツやルーズソックスの女子高生が行き交い、深夜のカラオケボックスは若者たちの歌声で埋め尽くされていた。音楽シーンは小室ファミリーやビーイング系がランキングをにぎわせ、誰もが最新のJ-POPを追いかけていた。そんな時代に、突如として現れたのが“王様”という名の人物だった。

マントに王冠という異様な姿。だが彼が掲げたのは、ただのパロディではなく、ロックへの深いリスペクトに裏打ちされた新しいスタイルだった。英語詞を一語一句日本語に直訳し、そのまま歌う——“直訳ロック”という唯一無二の手法だ。

王様『深紫伝説』(訳詞:王様・編曲:王様)——1995年9月1日発売

ディープ・パープルの楽曲を直訳しメドレーにしたこのCDは、発売と同時に話題をさらった。笑いと驚き、そして確かな感動が同時に押し寄せる、不思議な体験がそこにあった。

“高速道路の星”が鳴り響いた夜

『深紫伝説』の冒頭を飾ったのは『高速道路の星』。『Highway Star』を直訳したその曲は、歌い出しから衝撃的だった。

「俺の車にゃ誰も乗れぬ 命がけのレース」

英語ではクールに感じた歌詞が、日本語に置き換わることで一気にコミカルに響く。だが、演奏はあくまで本格的。ギターのリフは鋭く、ドラムは重く響き、バンドの迫力は決して失われない。リスナーは思わず笑いながらも、同時に鳥肌が立つような感覚に包まれた。笑ってしまうのに、胸が熱くなる。 その矛盾こそが、この作品の最大の魅力だった。

『Smoke on the Water』は『湖上の煙』、『Woman from Tokyo』は『俺の彼女は東京出身』と訳される。翻訳すれば滑稽なのに、メロディに乗せればなぜか胸に迫る。日常では使わない不思議な日本語の響きが、ロックの重厚なサウンドとぶつかり合い、唯一無二の世界を生み出していた。

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王様-2004年撮影 (C)SANKEI

ダサさとカッコよさが同居する奇跡

『深紫伝説』は、聴けば聴くほどそのバランス感覚の妙に驚かされる。日本語の直訳はどうしてもぎこちなく、どこか“ダサい”。しかし、その裏側にある原曲の圧倒的なカッコよさが決して失われていないからこそ、笑いがただの笑いで終わらない。聴く者の心には「やっぱりロックってすごい」という感覚が確実に残るのだ。

たとえば『Burn』では、タイトルは『燃えろ』となり「火事起きて町燃える 女の炎は空までとどく」という強烈なフレーズが響く。突飛すぎる日本語なのに、楽曲の激しさと重なり合った瞬間、その言葉に妙な説得力が宿る。聴衆は笑いながらも、いつの間にか拳を突き上げている。ダサいのにカッコいい。この相反する要素が見事に融合したところに、『深紫伝説』の真価があった。

時代を超えたヒットの背景

この作品は累計で20万枚以上を売り上げ、第37回日本レコード大賞企画賞を受賞するなど、音楽業界からも高い評価を受けた。当時はCDバブルの時代で、毎週のように新しいヒットが登場していた。そんな中で、“直訳ロック”という突飛なアイデアが広く受け入れられたのは、音楽そのものが持つ力と、ユーモアを忘れない時代の空気が重なったからだろう。

特に洋楽に親しんできた世代には新しい視点を与え、若いリスナーにはロックの入り口となった。重厚なハードロックを“笑いながら楽しめる”という体験は、当時の音楽シーンの中でも異例であり、まさに企画の勝利だった。

伝説が残した余韻

『深紫伝説』が今も語り継がれるのは、ただ面白かったからではない。そこには音楽を愛する姿勢があり、洋楽へのリスペクトが込められていた。

王様はステージで王冠をかぶりマントを翻しながら、真剣に、しかしどこかユーモラスに歌い続けた。その姿は、「音楽は楽しんだ者勝ち」というシンプルで普遍的な真理を体現していたのかもしれない

笑いと感動が同居する直訳ロック。その衝撃は90年代の音楽シーンに確かな爪痕を残した。

そして、令和7年となった現在でもSNSなどで「頭から離れない」「感動して毎日聴いてる」「今でも衝撃的!」「直訳して歌うなんてすごい人」など楽曲を楽しむ声が飛び交っている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。