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40年前、日本中を虜にした“派手を捨てた美しい旋律” 30万枚を売り上げた“コミカルCMのギャップソング”

  • 2025.9.14

「40年前の秋、街を包んでいた音楽を覚えてる?」

1985年。夜の繁華街にはきらびやかなネオンがまたたいていた。テレビでは新しいアイドルが次々に登場し、時代全体が浮き立つようなムードに包まれていた。だが、その眩しさとは対照的に、心を静かに揺らすバラードが日本中を包んでいた。喧騒の中でふと耳にすると、日常の速度をゆっくりと緩めてくれるようなその旋律は、多くの人にとって忘れがたい記憶として残った。

安全地帯『碧い瞳のエリス』(作詞:松井五郎・作曲:玉置浩二)——1985年10月1日発売

深まりゆく秋に響いた“静寂のバラード”

『碧い瞳のエリス』は、安全地帯にとって10枚目のシングル。既に『ワインレッドの心』『恋の予感』といった名曲で注目を浴びていた彼らが、さらに深みを増した瞬間を刻む一曲だった。

玉置浩二が描き出すメロディはより繊細さを帯び、そこに松井五郎が紡いだ言葉が重なることで、ただのラブソングにとどまらない“余白を感じさせる表現”へと昇華した。

『碧い瞳のエリス』は静けさの中に美しさを宿すアプローチを選んでいた。安全地帯の持つ多面的な魅力を強調し、彼らの音楽性をさらに広く知らしめるきっかけとなったと言ってもいいかもしれない。

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1986年、安全地帯のコンサートよりボーカルの玉置浩二 (C)SANKEI

コミカルな映像と儚き歌のコントラスト

この曲は大王製紙の生理用品「エリス」のテレビCMに使用された。しかも玉置浩二本人が出演し、ピンク色のキングコングから人間に変身するというユーモラスな映像が流れた。派手でどこか不思議なそのCMは、当時テレビを見ていた人々の記憶に強烈に残った。

しかし、その映像のコミカルさと、『碧い瞳のエリス』が持つ切なく美しい旋律とのギャップは、かえって曲の存在感を際立たせる効果を生んだ。

コミカルな映像と、美しいバラードが同時に流れることで、不思議なコントラストが生まれた。画面にはピンク色のキングコングが映り、同時に耳からは切なく繊細なメロディが届く。そのギャップこそが強烈な印象を残し、結果的に商品名とともに楽曲そのものも人々の記憶に深く刻まれることになった。

青に染まる旋律と玉置の歌声

『碧い瞳のエリス』の最大の魅力は、やはり玉置浩二が描いた旋律にある。派手な起伏を持たせるのではなく、じわじわと心に浸透していく流れ。何度も聴くうちに少しずつ深く沁み込んでくるような、その独特の美しさは安全地帯ならではだった

淡いブルーの光のように冷たさと温かさを同時に感じさせる響きは、都会の夜景とどこか孤独な心情を重ね合わせるかのようで、多くのリスナーの心に強く残った。

玉置のボーカルは、言葉の一つひとつを抱きしめるように歌われている。その親密な歌い方が聴き手の感情を静かに刺激し、バンド全体の重厚なアンサンブルと合わさることで、楽曲は豊かな奥行きを生み出していた。

バラードの旗手として刻んだ足跡

シングルは30万枚を超えるセールスを記録し、ランキングでも上位となった。当時、アイドルや派手なダンスナンバーが席巻する中で、このようにしっとりとした大人なバラードがしっかりと売り上げを残したことは注目に値する。

40年経った今も、『碧い瞳のエリス』を耳にすると、あの頃の秋の空気が蘇る。ネオンに照らされた街角、静かに佇む恋人たち、帰り道にふと聴こえてきたラジオからの音楽。そうした情景と結びつき、旋律は時間を超えて鮮明に記憶を呼び覚ます。

それは単なるヒット曲ではなく、ひとつの時代を優しく包み込んだ音楽の記憶だった。夜の深まりとともに、青く澄んだ光を放ちながら寄り添ってくるような余韻は、今なお色褪せずに聴く人の胸に生き続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。