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30年前、日本中の耳に刻んだ“情熱的な軽やかポップ” ヴィジュアル系を脱却した“転機の一曲”

  • 2025.9.15

「30年前の夏、CMから聴こえてきた“あのメロディ”を覚えてる?」

1995年の真夏。渋谷や原宿の街には厚底ブーツを履いた若者が行き交い、深夜のカラオケボックスには終電を逃した学生や社会人が歌声を響かせていた。CDショップの試聴機からは新しいサウンドが次々と流れ、J-POPがもっとも眩しく輝いていた時代。

暑さに浮かされたような街の空気の中で、ひとつのバンドが転機を刻むシングルを世に送り出した。

GLAY『Yes, Summerdays』(作詞・作曲:TAKURO)——1995年8月9日発売

眩しい季節に響いた“進化の予感”

『Yes, Summerdays』はGLAYにとって6枚目のシングル。累計20万枚を超えるセールスを記録し、夏の空気に似合う“軽やかな存在感”でリスナーに受け入れられた。

当時オンエアされた宝飾ブランド「カメリアダイヤモンド」のCMで流れると、そのきらめきとともにメロディが印象的に記憶に残った。まだバンドの存在を知らなかった層にも、ふとした瞬間に届く一曲として作用したのだ。

イントロから広がるギターリフは、夏の光を切り取ったようにまぶしく、そこに乗るTAKUROのメロディはシンプルで耳に残りやすい。それでいて、浮かれすぎずどこか切ない余韻を漂わせるのが大きな魅力だ。

TERUのボーカルは伸びやかで、真夏の青空と夕暮れの影を同時に映すような声色を持つ。軽快なリズムが背中を押す一方で、情熱的な歌詞とともに聴き手の心の奥にしっとりとした感覚を残す。だからこそ、夏の喜びと切なさが同居する“青春の温度”を見事に描き出しているのだ。

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GLAY-1998年撮影 (C)SANKEI

未来へと続く扉を開いた“ターニングポイント”

この曲の後、GLAYは『生きてく強さ』『グロリアス』といったシングルを発表し、ポップかつスケール感のあるスタイルを確立していく。いわゆるヴィジュアル系の流れの中で頭角を現してきた彼らだったが、ここから先は“ジャンルの枠”ではなく、“J-POPのメインストリーム”を意識した表現へと舵を切っていった。

『Yes, Summerdays』はまさにその移行期を象徴する1曲だ。このシングルではキャッチーなメロディラインと開放感のあるサウンドが印象的だ。夏の空気に寄り添う軽やかさをまといながらも、GLAYらしさを織り込んだことで、幅広いリスナーに届く“普遍的なポップ感覚”を示すことに成功した。

後に続く大ヒット作の布石となったその方向性は、この楽曲の中ですでに芽吹いていたと言えるだろう。だからこそ『Yes, Summerdays』は、バンドの進化を静かに告げるだけでなく、キャリアを長く支える基盤を築いた重要なターニングポイントとして語り継がれている。

記憶の中で輝き続ける“真夏の旋律”

あれから30年。今もなお『Yes, Summerdays』を耳にすると、真夏の光と風が鮮やかに甦る。テレビCMの映像や、当時の街の看板、コンビニに並んだ新譜のポスター、カラオケで響いた声。そんな日常のあちこちに、この曲はさりげなく寄り添っていた。

真昼の眩しさと、夕暮れの切なさ。その両方を抱きしめるように流れるメロディは、当時の青春の空気そのものを閉じ込めている。

30年の時を経ても、色褪せるどころか、むしろ年齢を重ねたからこそ沁みてくる感覚がある。若さの勢いやきらめきだけでなく、過ぎ去った季節を振り返るときの温かさと切なさが、この旋律には宿っているからだ。

青春の真ん中にあった夏の匂いを閉じ込めた一曲。その余韻はこれからも、聴く人の心を静かに揺らし、涼やかな風を運び続けるだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。