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1級建築士が警鐘「1ヶ月で40時間の送迎地獄も」新築マイホーム購入者が陥る“まさかの大誤算”

  • 2025.8.18
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

広々とした敷地、静かな環境、緑に囲まれた閑静な住宅地。

都市の喧騒から離れ、子育てに適した“理想の暮らし”を求めて、多くの人が郊外に新築マイホームを構えます。けれども、実際に暮らし始めてから直面するのは、「通勤と送迎に時間と体力を奪われる毎日」かもしれません。

目の前に広がる芝生の庭と引き換えに、家族の時間や気力、そして余裕が薄れていくこともあるのです。

「通勤ラッシュ」と「送迎ラッシュ」のダブルパンチ

郊外に建つ一戸建ての魅力は、住宅価格の安さと空間のゆとり。都心では手に入らない広さを比較的手の届く価格で実現できます。ですが、それが“通勤”という日常的な行為に大きな負担を強いることもあります。

都市部へ出勤するためには、まず最寄り駅までの車移動、そして乗換の多い通勤電車に揺られる生活。1日2時間、1ヶ月で40時間。気づけば毎月、丸一日以上を通勤に費やしていることになります。

子育て世代にとってはさらに重くのしかかります。保育園や学童、習い事の送迎が親のスケジュールを圧迫し、夫婦のどちらかが常に時間に追われる生活になりがちです。

「車ありき」の生活がもたらす落とし穴

郊外の暮らしは、車がなければ成り立ちません。つまり「車を持たざるを得ない」=「固定費が増える」ということでもあります。

  • 修理費・保険料・車検料・ガソリン代などで、月あたり数万円の出費
  • 送迎や買い物で必要となり、夫婦で2台持ちが前提になる家庭も少なくない

また、高齢になったとき車を運転し続けられるのかという不安も残ります。交通の便が悪いエリアで老後を迎えると、「病院に通いにくい」「買い物が大変」など、生活に不自由を感じることもあるでしょう。

土地は広くても「時間と自由」が狭くなることも

多くの人が「自分たちらしい暮らしを実現したい」と願い、郊外を選びます。けれど、生活の自由度は“間取り”や“庭の広さ”だけでは決まりません。

実際には “目に見えにくい束縛”が日常に忍び寄ることも。

  • 子どもの登校班や送迎時間に合わせて行動が縛られる
  • 郊外特有の「車社会」では飲み会や外食にも自由に行けない
  • 「朝7時発・夜8時帰宅」のワンオペ育児状態になる

せっかく広い家を建てても、家族が疲れ切って休日は休むだけ…という生活になると本末転倒です。

「暮らしやすさ」は空間だけで決まらない

モデルハウスで目を引くのは広さや最新設備ですが、暮らしの本質は“通勤・送迎・生活動線”といった日常の積み重ねにあります。

住宅購入時には、こんな視点を持ってみると安心です。

  • 毎日の移動距離や所要時間をシミュレーションしたか
  • 家族の成長に合わせた送迎・通学動線を想像できるか
  • 車が使えない日でも生活が成り立つか

こうした視点を取り入れることで、理想と現実のギャップをあらかじめ見つけやすくなります。小さな気づきを積み重ねることで、“後悔しない暮らし”に近づいていけるのではないでしょうか。

見落としがちな「日常の積み重ね」が暮らしを左右する

マイホームを選ぶときは、どうしても物件価格や延床面積、設備仕様といった“数字”に目が向きがちです。けれども、実際に暮らし始めてみると、快適さや幸福感を決めるのは「どれだけ無理なく、自然に生活できるか」という点に尽きるのかもしれません。

郊外の家には大きな魅力があります。でもその裏側にある「通勤や送迎という時間の代償」にも、目を向けておくことが大切です。

とくに子育て期は、どうしても時間に余裕がなくなります。だからこそ「生活のしやすさ」が確保されているかどうかは、家庭全体のストレスに直結します。仕事・育児・家事を両立させるには、間取りや家そのものだけでなく、日々の移動や立地がもたらす負担まで含めた総合的な視点が欠かせません。

住宅は「買って終わり」ではなく、暮らしていく中で少しずつ積み重なっていく不便や負担が“住み心地”を形づくっていきます。だからこそ、数字だけでなく生活全体を見渡して選んでいきたいですね。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。