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弁護士「明確に違法です」昼間の車道でウインカー出さないと…最悪のケースはどうなる?

  • 2025.8.22
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出典:Photo AC ※画像はイメージです

車を運転している時に、右折や左折、車線変更をする際にはウインカーを出さなくてはいけません。

インターネット上で「見たらわかることなのに、なぜ昼間の車道でもウインカーを出さなくてはいけないのか」といった趣旨の投稿がされ、話題になりました。

タクシー会社の公式X(旧Twitter)から「周囲に自分の車の進行方向を知らせる大事な機能」と投稿されると、「直前に出す車もいて危険」「ウインカー出さずに車線変更するの本当にやめてほしい」との意見が寄せられました。

はたして、ウインカーを出さないことは法的にどういった扱いになるのでしょうか?気になる疑問について、弁護士さんに詳しくお話を伺いました。

ウインカーの法的義務について、専門家に聞く

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

曲がる際にウインカーを出さないのは違法?

---右左折する際にウインカーを出さない、短すぎる時間しか出さない、すぐに消す、目的の進路とは反対方向に出す、といった行為は違法行為でしょうか?

まず、道路交通法上のルールについて解説します。

道路交通法及び同法施行令では、車両の運転者は右左折や転回を行うときには「おおむね30メートル手前」(普通道路の場合。高速道路の場合は100メートル手前)から、進路変更するときには3秒前から方向指示器(ウインカー)を操作する義務が定められています。したがって、ウインカーを出さない、出すのが遅い、すぐ消すといった行為は、この規定に違反する可能性があります。

具体的には以下のように違法性を判断することになります。

(1)ウインカーを出さない場合:
明確に道路交通法違反(通称:合図不履行違反)となります。違反点数1点、反則金(普通車の場合6,000円)が科されます。

(2)短すぎる時間しか出さない場合:
「おおむね30メートル手前から」という基準を満たさなければ違反とされる可能性があります。実務上は警察官の判断によりますが、他車から見て危険と評価されれば違反切符を切られることもあります。

(3)すぐに消す場合:
まだ交差点に入っていないのにウインカーを消してしまい、周囲に誤解を与えると、やはり「合図不履行」と判断される可能性があります。

(4)進路とは反対方向に出す場合(誤表示):
道路交通法上の「合図義務違反」とは別に、他車に誤解を与えて事故を誘発すれば「安全運転義務違反」として処罰されることがあります。

車線変更する際にウインカーを出さない場合

---車線変更をする際に、ウインカーを出さない車も多く見かけます。このような場合はいかがでしょうか?

車線変更も「進路を変える行為」にあたり、道路交通法及び同法施行令により、進路変更をしようとするおおむね3秒前から方向指示器を点滅させる義務があります。したがって、車線変更時にウインカーを出さないことは、明確に違法(合図不履行違反)です。

ケースごとの評価は以下のとおりになります。

(1)「めんどくさくて出さなかった」場合:
これは典型的な「合図不履行違反」となり、反則金と違反点数が科されます。動機はどうあれ、義務を怠った時点で違法となります。

(2)「うっかり出し忘れた」場合:
過失であっても違法性は変わりません。さらに事故が発生した場合には、過失運転致傷罪や民事上の賠償責任が問われる可能性があります。

(3)「妨害目的で無理やり割り込む(あおり運転)」場合:
この場合は単なる合図不履行を超え、妨害運転(あおり運転)行為として道路交通法上厳罰の対象となる可能性があります。具体的には、妨害目的で車線変更を繰り返すと、
(1)3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(2)一発で免許取り消し(欠格期間2年〜5年)
など、非常に重い処分が科されます。

ウインカーを出さないことが事故につながったら…

---ウインカーを出さなかった、点灯時間が短すぎた、間違った出し方をしたことが理由で事故が発生した場合、どうなるのでしょうか?

以下の3種類の責任が発生する可能性があります。

1、刑事責任

ウインカーを出さなかった、短すぎた、間違えた結果として事故が起きた場合、運転者には刑事責任が発生します。

(1)道路交通法違反(合図不履行・安全運転義務違反)
単なる違反にとどまらず、事故につながれば「安全運転義務違反」が適用されることもあります。

(2)過失運転致傷罪(自動車運転処罰法)
人身事故になった場合はこの罪で処罰されることとなり、7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金刑が科される可能性があります。

2、民事責任(損害賠償)

事故の被害者からは損害賠償請求を受けることとなります。責任の程度は、過失割合(どちらの責任が何割を占めるか)にも大きく影響を受けます。

例えば、交差点右折時にウインカーを出さずに衝突した場合、出さなかった側に重い過失割合が課される傾向にあります。また、車線変更事故でも、方向指示器を出していなければ「進路変更側がほぼ全面的に責任を負う」とされるケースが多いです。

3、行政処分

違反点数も加算され、場合によっては免許停止・取り消しにつながります。

(1)合図不履行単独の場合は、違反点数は1点、反則金は6,000円〜7,000円程度です。

(2)事故を伴う場合、安全運転義務違反となり違反点数は2点、さらに事故内容によって付加点数が大きく加算されます。

安全運転のためにウインカーの正しい使い方を理解しよう

ウインカーを出すことは、法律上、明確に義務として定められており、これを怠れば違法行為となります。

特に注目すべきは、事故が発生した場合の責任の重さです。単なる違反点数や反則金だけでなく、刑事責任や高額な損害賠償、さらには免許取り消しといった重い処分が待っています。「うっかり」や「面倒」という理由は、法的には通用しないのです。

また、あおり運転の一環として故意にウインカーを出さずに車線変更を繰り返す行為は、一発で免許取り消しという極めて重い処分の対象となる可能性があります。

ウインカーは、他のドライバーや歩行者に自分の意図を伝える大切なコミュニケーション手段です。「動きを見ればわかる」ではなく、「相手に確実に伝える」という意識を持って、適切なタイミングでウインカーを出すことが、安全な道路環境を作る第一歩となるでしょう。