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35年前、日本中が笑顔になった“痛快な失恋ソング” 時代を駆け抜けた“ガールズロックの真髄”

  • 2025.8.26

「35年前の春、あなたはどんな音楽に心を弾ませていただろう?」

1990年。街にはまだバブル期の光が残り、原宿の歩道橋の下では若者たちが色鮮やかなファッションをまとって集っていた。そんなきらめきの空気の中で、恋の別れをポップに歌い飛ばす一曲が鳴り響いた。

GO-BANG’S『無敵のビーナス』(作詞・作曲:森若香織)——1990年4月21日発売。

5枚目のシングルとして発表されたこの曲は、映画『香港パラダイス』の主題歌に起用され、当時のスクリーンと音楽シーンを軽やかに駆け抜けた。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

明るいのに「別れ」を歌うユーモラスな一曲

GO-BANG’Sの魅力は、恋の痛みすら笑い飛ばすようなポジティブさにある。『無敵のビーナス』も例外ではない。

「2000回もキスしたのに お別れは1秒」というフレーズは、積み重ねた日々が一瞬で崩れる切なさを描きながらも、大げさな数字と軽妙な言い回しでどこかユーモラスだ。

「私は敗北者じゃない」と歌う強がりや、「涙の川を越えて 生まれた無敵のビーナス」といったフレーズは、失恋を前向きに変換する森若ならではのワードセンスが素晴らしい。

深刻な失恋ソングではなく、笑顔で涙を吹き飛ばす別れの歌。それが『無敵のビーナス』の真骨頂だった。

フェミニンなパンクとアイドル性の融合

GO-BANG’Sは「ガールズバンド」という括りで語られることが多いが、その音楽性は一筋縄ではいかなかった。

パンクのように疾走感あふれるバンドサウンドに、どこかアイドル的な可愛らしさを併せ持っていたのが彼女たちの特徴だ。森若香織の歌声も、技巧ではなく等身大の女の子の言葉として響くからこそ、恋の終わりすらポジティブに聴かせてしまう。

バンドブームの中で輝いた存在

1990年前後の音楽シーンは、まさにバンドブームの最盛期。男性ロックバンドがランキングを席巻する中で、GO-BANG’Sのようなガールズバンドは異彩を放っていた。

すでに『Diamonds』などの大ヒットでシーンを代表する存在となっていたプリンセス プリンセスがロックバンドとしての迫力を前面に押し出していたのに対し、GO-BANG’Sはもっと自由でユニークな作風を持っていたと思う。

恋や日常をおどけた言葉で描き、疾走感のあるバンドサウンドにのせて響かせるスタイルは、王道路線とは違う“ひねり”のあるポップ感覚だった。その少し斜めからの視点や軽やかなユーモアが、当時の若いリスナーに「自分たちの歌」として強く響いたのだろう。

35年後に蘇る“無敵の感覚”

振り返れば、1990年という時代は華やかさと不安が交錯する転換期だった。そんな時代に登場した『無敵のビーナス』は、失恋を描きながらも笑顔を忘れないポジティブさで、多くのリスナーに元気を与えた。

今あらためて聴いても、失恋を笑い飛ばす強さと疾走感は全く色あせていない。

35年前の春の街並みやスクリーンの熱気とともに、GO-BANG’Sのサウンドは今もなお青春の記憶を呼び覚まし、私たちを“無敵”な気持ちにしてくれる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。