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30年前、日本中を駆け抜けた“疾走するサマーソング” 130万枚超を売り上げた“たった3分の名曲”

  • 2025.8.20

1995年の夏、ふとした瞬間にあのイントロが耳に飛び込んできた。

駅前の喫茶店のスピーカーから、あるいは信号待ちの車のカーステレオから――駆け上がるブラスが真夏の空を切り裂き、その直後に鋭く刻まれるギターが背中を押す。熱を帯びた声が風に混じり、リズムが胸の奥を突き抜けていく。

その一瞬で、さっきまでの午後が少し違う色を帯び、心がざわめいた。

B’z『love me, I love you』(作詞:稲葉浩志・作曲:松本孝弘)――1995年7月7日発売。

彼らにとって17枚目となるシングルは、テレビ朝日系ドラマ『外科医 柊又三郎』の主題歌として発表され、130万枚以上を売り上げた。

わずか3分あまりの中に、真夏の空を駆け抜けるような疾走感と胸を熱くする高揚感が凝縮されている。

一度耳にすれば、あの駆け上がるイントロが何度も頭の中を巡り、気づけば当時の夏の光景までもが鮮やかによみがえる――そんな、一瞬で記憶と結びつくロックナンバーだ。

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B'z (C)SANKEI

真夏の空を切り裂くイントロ

『love me, I love you』の幕開けを飾るのは、ギターとブラスがユニゾンで駆け上がる鮮烈なフレーズだ。

松本孝弘の硬質で輪郭のはっきりしたトーンと、ブラスセクションの艶やかで力強い響きが、まるで二本の矢のように一直線に空へ突き抜けていく。その瞬間、曲は一気にトップスピードに達し、真夏の青空に飛び出すような解放感が全身を包み込む。

音の芯を作るのは松本のギターだ。鋭くも滑らかなピッキングがリズムの土台を形作り、そこにブラスが音の厚みと華やかさを重ねる。二つの音色は混ざり合うのではなく、互いの存在を誇示するように響き合い、イントロだけで強烈なインパクトを残す。

そして歌が始まると、稲葉浩志の突き抜けるボーカルがギターに真正面からぶつかる。冒頭からまっすぐ突き抜けるその声は、勢いと切れ味を保ったまま一気に駆け上がり、松本孝弘のギターラインと火花を散らす。

互いが引くことなくぶつかり合うことで、音全体の密度と熱量はさらに高まり、B’zならではの“圧”が生まれる。イントロからわずか数秒で、「最後まで駆け抜ける」ことを確信させる推進力が立ち上がるのだ。

言葉がビートを刻む歌詞

B’zのシングルとして短めな3分あまりという曲尺でありながら、その時間は息つく間もないほど濃密だ。テンポを落とさず最後まで駆け抜け、聴き終えた瞬間には自然とリピートボタンに手が伸びる。

その推進力を支えているのが、リズミカルな歌詞だ。巧みに韻を踏み、言葉遊びを散りばめたフレーズは、まるでパーカッションのようにビートを刻む。

一文ごとに小気味よく切り込み、メロディと完全に溶け合って躍動する様は、歌詞というより音そのもの。稲葉浩志の発声は、意味を届けるだけでなく、音楽の一部として響きを鳴らすための言葉になっており、その粒立ちは鮮やかに耳に残る。

ステージでの輝き

『love me, I love you』はリリース以来、B’zのライブでも何度も披露されてきた。コンパクトな曲構成ゆえに、ライブではその勢いがさらに増し、観客を一気に引き込む。

特に印象的だったのは、コロナ禍に行われた無観客配信ライブ『B’z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-』での演奏だ。

Zepp Hanedaを舞台に、稲葉浩志が客席や会場外まで縦横無尽に動き回る姿は、観客がいないという特殊な環境にもかかわらず、曲の躍動感を視覚的にも強く感じさせた。

カメラが追うその動きとサウンドが重なり、画面越しでも高揚感が伝わってきた。

永遠に色褪せない夏の疾走

『love me, I love you』は、B’zの豊富なディスコグラフィの中でも、特に“勢い”と“楽しさ”が詰まった1曲だ。

イントロが鳴り響く瞬間、30年前の夏の空気がよみがえり、短い曲だからこそ感じる駆け抜けるような爽快感が全身を包む。

世代を超えて聴き継がれる理由は、この曲が単なるヒット曲ではなく、一瞬で日常を夏色に変えてしまう力を持っているからだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。