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30年前、日本中がハモった“女子会ソング” 70万枚超を売り上げた“カラオケの鉄板曲”

  • 2025.8.16

「1995年の街は、どこか軽やかで華やいでいた。」

CDショップの新譜コーナーには話題のヒット曲がずらりと並び、街角のコンビニからは最新のJ-POPが絶え間なく流れてくる。

深夜営業のカラオケボックスも珍しくなくなり、友達同士でマイクを回しては笑い声を響かせる——そんな日常の中に、突然飛び込んできたのが、とびきり個性的な女性デュオだった。

FUNK THE PEANUTS『恋の罠しかけましょ~FUNK THE PEANUTSのテーマ~』(作詞:観音崎すみれ・作曲:FUN・P2号)——1995年7月24日発売。

デビュー曲にして、最終的に70万枚を超えるセールスを記録。90年代半ばの音楽シーンに、鮮烈かつ忘れがたい爪痕を残した。

“豪華すぎる新人”が放った一撃

FUNK THE PEANUTSは、MIWA(FUN・P2号)ことDREAMS COME TRUEのボーカル・吉田美和と、RIN(FUN・P1号)こと浦島りんによる女性デュオ。浦島はドリカムのツアーでボーカリストを務め、『サンキュ』でのデュエットでも知られていた。

実力派同士が組んだこの“豪華すぎる新人ユニット”は、結成と同時にシーンの話題を独占した。しかも、同じ日にドリカムの大ヒットシングル『LOVE LOVE LOVE』が発売されるという、まるで計算し尽くされたようなタイミング。

ドリカムの勢いを背にしつつも、FUNK THE PEANUTSはその名にふさわしい独自路線を走り出した。

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1995年、DREAMS COME TRUEライブより。FUNK THE PEANUTS結成前の吉田美和(右)、浦島りん(左)(C)SANKEI

作詞・作曲どちらも吉田美和

『恋の罠をしかけましょ』は、作詞名義の“観音崎すみれ”、作曲名義の“FUN・P2号”——いずれも吉田美和の変名。

普段はドリカムで聴かせる圧倒的な歌唱だけでなく、言葉とメロディの両方を操る作家としての顔が、このユニットでは前面に出ている。

まるで深夜のカフェで繰り広げられる女子会のような、軽妙でウィットに富んだ言葉選び。恋愛の駆け引きや甘い罠を笑い飛ばすようなテンポ感は、聴く人の心をくすぐり、当時の女性リスナーたちを瞬く間に虜にした。カラオケでは友人同士でハモりながら歌う姿が定番となり、女子会の延長線のようにこの曲を楽しむ光景が全国で見られた。

耳に残る“罠”の仕掛け

イントロとほぼ同時に飛び込んでくるのは、軽快なビートとシンセストリングス、そして2人の声が重なったハーモニー。吉田ののびやかで芯のある歌声と、浦島の少しハスキーな響きが最初から溶け合い、厚みのあるサウンドを生み出す。

冒頭から全力で仕掛けるような構成は、そのまま“恋の罠”の世界へと引きずり込むかのよう。聴いた瞬間に耳を奪い、思わず何度も再生したくなる中毒性を秘めていた。

カラオケ文化と時代の追い風

1995年当時はカラオケボックスが全国的に普及し、女子同士でマイクを回す文化が定着し始めた頃。この曲はその流れにぴたりとハマり、「友達と一緒に歌ってこそ完成する曲」として愛された。

大ヒットの背景には、話題性やタイアップだけでは説明しきれない理由がある。

耳に残るメロディ、掛け合うように響く2人の声、そして思わず口ずさみたくなる歌詞——そのすべてが、聴いた人の心をつかんで離さなかった。だからこそテレビやラジオを離れても、カラオケや友人同士の集まりなど、日常のあらゆる場面で自然と歌い継がれていったのだ。

あの頃の夜を閉じ込めた一曲

『恋の罠をしかけましょ』は、当時の都会の夜が持っていた艶やかさ、そして少しの危うさを音で封じ込めた小さなタイムカプセルだ。

今聴いても、イントロの数秒で1995年の街角にワープできる。

その瞬間、煌びやかな街灯の下で笑う自分や、交差点でふと目が合った誰かを思い出すかもしれない。

時代は変わっても、音楽が持つ魔法は、あの夜の温度をそのまま運んでくれるのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。