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「よく地上波で放送出来たな」「40分で脱落…」“生々しい脚本”に視聴者騒然…だけど「本当に良作」“異彩を放つ”深夜ドラマ

  • 2025.8.17

ドラマや映画のなかには、世の中の常識や価値観に疑問を投げかける作品があります。今回は、そんな“社会のタブーや偏見に挑んだ異作”を5本セレクトしました。本記事ではその第3弾として、ドラマ『都立水商!~令和~』(MBS / TBSドラマイズム枠)をご紹介します。夜の仕事を専門に学ぶ生徒たちと、いまも根強く残る水商売への偏見を、架空の高校を舞台に描いた異色の学園ドラマです。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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大阪・関西万博のTECH WORLDパビリオンを訪れた松井玲奈 (C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマイズム『都立水商!~令和~』(MBS/TBS系)
  • 放送期間:2019年5月7日 - 2019年6月25日
  • 出演: 竜星涼(石綿直樹 役)

時は令和。東京・歌舞伎町の一角に、ひっそりとたたずむ一校の都立高校があります。名前は「東京都立水商業高等学校」、通称・都立水商。ここでは水商売に関する専門的な教育が行われています。

就職活動中だった石綿直樹(竜星涼)は、恋人・大海原春香(堀田茜)のため、「先生」という肩書が欲しくて高校教員に応募します。ところが採用されたあとで、そこが水商売を教える学校だと知り、訳も分からないまま教師としての一歩を踏み出すことになりました。

校内には、キャバクラ科・ホスト科・マネージャー科・フーゾク科という4つの学科が設けられており、直樹は3年C組の担任に。そんな直樹を待ち受けていたのは、生徒たちが引き起こす思いもよらないトラブルの数々でした――。

“夜の世界”を学ぶ異色の学園ドラマ

『都立水商!~令和~』の舞台は、水商売のプロフェッショナルを育成する架空の都立高校「東京都立水商業高等学校」です。

原作は、2001年に室積光さんが発表した同名小説。猪熊しのぶさんによる作画で漫画化もされ、シリーズ累計250万部を超えるベストセラーとなりました。2006年には一度映像化されていますが、本作『~令和~』は、原作の世界観を土台に、現代の価値観や令和の“夜のお仕事”事情を反映した完全オリジナルストーリーとして制作されています。

脚本は映画『でっちあげ  殺人教師と呼ばれた男』や『雨を告げる漂流団地』などで知られる森ハヤシさん、監督は映画『九月の恋と出会うまで』の山本透さんが担当。主題歌はTHE BEAT GARDENの「ぬくもり」、エンディングテーマにはサイダーガールの「クローバー」が起用され、このドラマの世界観を鮮やかに彩っています。

主演の竜星涼さんは、偶然“水商売の高校”に採用された新米教師・石綿直樹を演じました。教育経験ゼロで3年C組の担任となり、生徒の問題に巻き込まれていく役どころです。注目の教師陣には、豪華なキャストがそろいました。松井玲奈さんは、かつて銀座や六本木でナンバーワンに輝いた元キャバクラ嬢・乾千花役を熱演。ホスト科実習教師・小木曽義和には濱津隆之さん、フーゾク科実習教師・坂下咲良には永尾まりやさん、マネージャー科担当の標祐作には鈴之助さんが起用され、それぞれ個性的な存在感を見せています。

また、生徒役にもフレッシュな俳優陣が勢ぞろい。キャバクラ科の真中希海を演じた恒松祐里さんは、元気な現代の若者像を体現。マネージャー科一番のお調子者・今井周役には神尾楓珠さんがキャスティングされました。深夜帯の放送ながら、水商売というセンシティブなテーマに真正面から挑んだ意欲作です。

“令和版”の誕生秘話

本作『都立水商!~令和~』の企画が立ち上がった際、制作陣にはひとつの迷いがあったといいます。経緯について、今作でチーフプロデューサーを務めた室積光氏がマイナビニュース内で次のように語っています。

『都立水商!』のドラマ化企画の話が出てきた際に、2006年に一度映像化されている作品なのでどうかなと思ったんですが、10年以上も前なので、今の時代の夜のお仕事事情も踏まえて、ストーリーを一新してやるならもう一度映像化する意義があると思ったんです。出典:『3年A組』に続くか? 新たな個性派学園ドラマ『都立水商!』誕生秘話(マイナビニュース)2019/05/14

時代や価値観の変化を鑑みながら、慎重に令和版のドラマ制作準備が進められてきたのですね、こうして誕生した今作は、軸となる「水商売のプロフェッショナルを育成する都立高校」という大胆な設定はそのままに、物語や人物像はすべて新たに構築されました。

毎朝の朝礼では“シャンパンコール”が響き渡り、キャバクラ実習では熾烈な指名争いが巻き起こるなど、そのリアルすぎる描写が話題に。また、制服姿の「昼の座席表」と、キャバクラドレスやホストスーツに身を包んだ「夜の座席表」の2パターンの演出にも注目が集まりました。

水商売というタブーに真正面から向き合いながらも、つい夢中になって見てしまう――そんな魅力にあふれた作品です。

令和の“仕事観”を問う青春群像劇

『都立水商!~令和~』は、まるで歌舞伎町に実在するかのようなリアルな描写とともに、いまだに偏見やタブーの目で見られがちな“水商売”というテーマに、正面から向き合った作品です。

ホストやキャバクラ嬢、フーゾク嬢を目指す若者たちが通うこの高校では、「水商売のイロハ」を学ぶ授業が行われます。その背景には、“夜の世界”に飛び込むことを余儀なくされた若者たちのさまざまな事情がありました。そうした生徒たちに向き合いながら、担任教師として成長する石綿直樹の姿も見どころのひとつです。

SNSでは、生々しい脚本に「40分で脱落した」「深夜とはいえ、よく地上波で放送出来たな」といった声もあった一方で、「面白くて一気見してしまった」「笑えるドラマかと思いきや、結構考えさせられる」「仕事の姿勢やコミュニケーションについて考えさせられた」など、共感や好意的な意見も多く寄せられました。放送終了後も、「都立水商は本当に良作」といった惜しむ声が上がり、深夜枠ながら確かな存在感を残しました。

令和時代の水商売をリアルに描きつつ、そこに生きる人々の想いや葛藤を丁寧にすくいあげた本作は、社会のタブーや偏見に挑んだ異作として、いまなお語り継がれる名作です。


※記事は執筆時点の情報です