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「これは酷い」「どういうこと?」公式が“突然発表した声明”に視聴者騒然…だけど「紛れもない大傑作」反響を呼んだ名ドラマ

  • 2025.8.20

テレビドラマの中には、時に大きな波紋を呼び起こす作品があります。今回は、そんな中から"物議を醸したドラマ作品"を5本セレクトしました。本記事ではその第5弾として、日曜劇場『この世界の片隅に』(TBSテレビ系)をご紹介します。戦時中の暮らしと絆を丁寧に描き、多くの支持を集めながらも、アニメ映画版との関係をめぐって思わぬ波紋を呼んだ本作――その賛否と魅力に迫ります。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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主演映画の特別試写会に出席した松本穂香(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):日曜劇場『この世界の片隅に』(TBSテレビ系)
  • 放送期間:2018年7月15日~9月16日
  • 出演: 松本穂香( 北條/浦野 すず役)

舞台は、太平洋戦争のさなか、広島県呉市。広島市の江波から呉の北条家に嫁いだ主人公・すず(松本穂香)は、慣れない土地での暮らしに戸惑いながらも、少しずつ家族と心を通わせていきます。

物資が不足し、先の見えない毎日が続くなか、それでも前を向いて生きようとするすずと北条家の人々。
そんな彼らのかけがえのない日常を描いた物語です――。

戦火の中で“日常”を守ろうとした、ある家族の物語

本作の原作は、こうの史代さんによるマンガこの世界の片隅に』です。「漫画アクション」(双葉社)で連載され、2009年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました。累計発行部数は130万部を超え、戦時中の広島・呉に嫁いだ18歳のすずが、戦争の激化とともに少しずつ日常を失っていく姿が描かれています。

脚本を手がけたのは、NHK連続テレビ小説『ちゅらさん』シリーズや『ひよっこ』などで知られる岡田惠和さんです。TBSは“朝ドラ級”と銘打ち、大規模なヒロインオーディションを実施。約3000人の応募者の中から、主人公・北條(浦野)すず役に松本穂香さんが選ばれました。

すずの夫・周作役は松坂桃李さん、水原哲役は村上虹郎さんが演じています。刈谷幸子役として登場する伊藤沙莉さんは、ドラマオリジナルのキャラクターで、物語に新たな彩りを添えました。そのほか、周作の姉・黒村径子役に尾野真千子さん、おばあちゃん役に宮本信子さんが名を連ねています。さらに現代パートでは、古舘佑太郎さんと榮倉奈々さんが恋人同士として登場しました。

戦時下の暮らしと絆を描いた感動作

本作の魅力は、戦時下にあっても日々の暮らしを大切に生きようとする人々の姿にあります。けなげで前向きなヒロインと、家族や周囲の人々との関係が細やかに描かれている点に多くの視聴者が魅了されたようです。

日曜劇場のラインナップの中でも、本作はかなり異色の存在です。近年、戦時中を描いた連続ドラマは、単発作品を除けば朝ドラ以外ではほとんど制作されていません。そうした中で、本作はあえて戦時中の“暮らし”や“絆”に光を当てました。さらに、現代を生きる登場人物たちの物語を並行して描く構成は、原作や劇場版アニメにはない、本作ならではの試みです。

プロデューサーの佐野亜裕美さんは、MANTANWEBのインタビューで以下のように語っています。

いったん内側を見つめ直す機会というか。自分の家族や周りの人たち、あまりこの言葉は好きではないのですが、あえて使えば『絆』というものを見つめ直す機会になるようなドラマも必要なんじゃないか
出典:『この世界の片隅に:まるで「朝ドラ?」の声 “既視感”の理由…』MANTANWEB 2018年7月17日配信

戦後の記憶が遠ざかりつつある今、祖父母から直接聞いた戦争の体験を、次の世代へどう伝えていくのか。その問いに向き合い、かたちにすることが、自分たちの世代の役割だと感じたといいます。過去を描きながら、私たちの“今”と“これから”を考えるきっかけを与えてくれる、そんな作品です。

“エンドロールの一文”が巻き起こした予想外の波紋

朝ドラのような雰囲気と温かな人間模様で人気を集めた本作ですが、思わぬ騒動も起きました。

2018年7月24日、アニメ映画『この世界の片隅に』の製作委員会が、TBSテレビで放送されていた実写ドラマ版について、「一切関知しておりません」とする異例の声明を発表したのです。

ドラマ版のエンドロールには「special thanks to 映画『この世界の片隅に』製作委員会」と記載されていましたが、アニメ映画の製作委員会はXにて以下のように説明しました。

現在放送中の漫画『この世界の片隅に』を原作とする実写ドラマに「special thanks to 映画『この世界の片隅に』製作委員会」と表記されておりますが、当委員会は当該ドラマの内容・表現等につき、映画に関する設定の提供を含め、一切関知しておりません。
出典:映画『この世界の片隅に』公式&映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 X(@konosekai_movie)2018年7月24日配信

こうしたかたちで無関係であることを強調する声明は、業界内でも珍しいケースとされています。

この声明をきっかけに、SNSではさまざまな反応が広がりました。「“special thanks”は感謝くらいの意味では」と受け止める声もあれば、「問い合わせが多かったからではないか」と推測する意見も。

また、「ややこしい表記は避けるべき」「これは酷い」との指摘や、「どういうこと?」と疑問の声もあり、受け止め方は人によって分かれました。

TBSテレビは、エンドロールの“special thanks”について、先に公開されたアニメ映画に対する敬意を表したものだと説明しています。また、ドラマ版は独立して制作されたオリジナル作品であり、声明の公表についてはコメントする立場にないとしています。

こうした経緯から、一時的に賛否の声が集中した本作ですが、SNSには、「ドラマ版が一番好き!」と支持する声や、「紛れもない大傑作だった」といったコメントも。さらに、「人生で一番のドラマだった」と振り返る人もいました。

映画版との距離感をめぐって議論が交わされる一方で、多くの視聴者の心に深く刻まれたドラマ『この世界の片隅に』。その存在は、まさに“物議を醸した名作”と呼ぶにふさわしい一作です。


※記事は執筆時点の情報です