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「もう観れないの」「このまま打ち切り…?」抗議が勃発する“異例事態”に物議醸すも…「最後まで観届けたい」称賛相次ぐ名ドラマ

  • 2025.8.19

テレビドラマの中には、時に大きな波紋を呼び起こす作品があります。今回は、そんな中から"物議を醸したドラマ作品"を5本セレクトしました。本記事ではその第4弾として、ドラマ『チェイス』(Amazonオリジナルドラマ)をご紹介します。“実在事件に酷似している”と物議を呼び、一時配信停止になった衝撃のサスペンスドラマとは――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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東京ゲームショウ2019にてオフィシャルサポーターを務めた本田翼(C)SANKEI
  • 作品名(配給):ドラマ『チェイス』(Amazonオリジナルドラマ)
  • 放送開始日:2017年12月22日
  • 出演: 大谷亮平(三上一樹 役)

東都テレビの子会社・BS東都で働く新人AD・相沢麻衣(本田翼)は、報道志望でありながら、実際には通販番組の制作に追われる毎日を過ごしていました。そんなある日、ある事件の資料映像を探していた麻衣は、偶然、過去の未解決事件にたどり着きます。そして上司の長谷川(岸谷五朗)の後押しを受け、検証番組の制作に踏み出すことに。事件取材の経験がない麻衣に、長谷川は古くからの知り合いで、腕利きのフリージャーナリスト・三上(大谷亮平)を紹介しました。ぶっきらぼうで、初対面からそりの合わなかった2人ですが、やがて報道の裏に潜む未解決事件の真相を追うことになります――。

経験ゼロのADと敏腕記者、“異色バディ”が挑んだ未解決事件の真相

2017年12月22日からAmazonプライム・ビデオで独占配信されたドラマ『チェイス』は、同サービス初となる2章構成のオリジナルドラマです。第1章は全7話、第2章は全5話で、地上波では描きにくいテーマに真正面から挑んだ骨太なサスペンスとなっています。

報道志望ながら通販番組の制作に追われていた新人AD・麻衣は、ひょんなきっかけから取材経験豊富なフリージャーナリスト・三上とコンビを組むことに。上司・長谷川の助言やベテランキャスター・斉藤真紀子(羽田美智子)らの協力を得ながら、長く封印されてきた未解決事件の真相に迫ります。

脇を固めるのは、かとうかず子さん、でんでんさん、冤罪の疑いをかけられた山崎を演じる平田満さんなど実力派俳優たち。

脚本は『龍馬伝』、『海猿』シリーズ、『HERO』シリーズ、『容疑者Xの献身』などを手がけた福田靖さん、総監督は『神様のカルテ』シリーズ、『白夜行』の深川栄洋さん。音楽は『JIN-仁-』の長岡成貢さん、オープニング演出は『永遠の0』『海賊とよばれた男』の白組が担当し、主題歌はポルノグラフィティによる書き下ろし曲『Working men blues』。映像・音楽・演出が一体となった、完成度の高いエンターテインメント作品です。

「正義とは何か?」警察と司法の“隠蔽疑惑”に迫る社会派サスペンス

ドラマ『チェイス』の魅力は、その鋭い切り口にあります。

物語は、27年前の連続幼女誘拐殺人事件を軸に、警察や司法、科捜研といった権力機関に潜む隠蔽や証拠改ざんの疑いに迫ります。地上波では扱いづらい題材を、配信ドラマならではの自由な表現で描いた本格サスペンスです。

本田翼さん演じるBS東都の新人AD・相沢麻衣と、大谷亮平さん演じる敏腕フリージャーナリスト・三上一樹は、衝突を重ねながらも次第に信頼を築き、息の合ったバディへと成長。テンポの良い展開で、一話30分があっという間に感じられる構成も魅力です。

第2章では、催眠術を使った犯罪というユニークな設定にも挑戦。報道の限界やジャーナリズムの意義を問いかけながら、小さなBS局が世論を揺るがす物語が展開されます。

重厚なテーマとエンタメ性を兼ね備えたドラマ『チェイス』は、骨太な社会派ドラマを求める人にも、テンポの良い人間ドラマを楽しみたい人にも響く一作です。

異例の配信停止騒動…その舞台裏とは――

しかし一方で、ドラマ『チェイス』は配信開始直後から、その内容をめぐって大きな議論を呼びました。

発端となったのは、ジャーナリスト・清水潔さんによるノンフィクション『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』との類似性です。清水さんと発行元の新潮社は、ストーリー展開や情景描写、さらには具体的なセリフに至るまで、数多くの共通点があると指摘。2018年1月、アマゾン・ジャパンと制作会社ジョーカーフィルムズに対し、配信の中止を申し入れました。

その後、日本テレビも動きます。同局は2009年の「NNNドキュメント 足利事件・暴かれた冤罪」、2010年の「検察…もう一つの疑惑」などで同事件を取り上げてきましたが、『チェイス』がこれらを想起させる内容であるにもかかわらず、自社の報道局や被害者遺族への連絡や取材が一切なかったことを問題視。2018年1月30日付で、アマゾン・ジャパンとジョーカーフィルムズに抗議文を送り、「倫理的な観点から到底看過できない」と強く批判しました。日本テレビはこれまでも同様の企画提案を受けてきたものの、遺族感情に配慮して見送ってきたと説明しています。

こうした中、第7話の配信予定日になっても作品は公開されず、一時中断に。SNSでも「もう観れないの」「ありえない悲しさ」「どうなるの…」「このまま打ち切り…?」との声が集まりました。やがてジョーカーフィルムズは関係者間で協議を行い、清水さんや新潮社、さらには遺族への配慮が欠けていたことを認めて謝罪しました。その後、各話の最後に参考文献や報道番組の一覧、被害者と遺族への哀悼の意が追加され、当初は「フィクション」としていた説明文も、実際の事件をモチーフにしていることが明記されるようになりました。

謝罪と対応を受け、清水さんと新潮社は配信再開に異議を唱えない姿勢を示し、作品は再び視聴可能に。ただ、その一連の経緯は、「事実をどう描くか」という創作と報道倫理の難しさを改めて突きつけるものとなりました。SNS上でも反響は大きく、「なぜちゃんとした手続きを踏んで制作しなかったのか」といった疑問の声が並びました。

一方で、「最後まで観届けたい「すごく面白い」といった声もあり、作品や出演者を支持する意見も少なくありませんでした。ドラマ『チェイス』は、“創作と放送倫理の境界”を問い直すきっかけとなった、まさに物議を醸した名作です。


※記事は執筆時点の情報です