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生地やネック、タグはどう見分ける?古着屋店主による、ヴィンテージTシャツのひと口解剖学

  • 2025.7.16
Tシャツ

教えてくれた人:山田憲吾(〈STYLE202〉店主)

多いときには年間150日ほどアメリカに滞在し、古着を買い付けてきた〈STYLE202〉の店主・山田憲吾さん。買い付け時は何千枚というTシャツを素早く選別するため、まずは見た目の印象と手触りで年代を選別する。

「形と生地に注目します。例えば1980年代以前は裾が短い作りのものが多いし、逆に90年代以降は裾が長くシルエットも大きいものが多い。生地の素材もさまざまで、80年代ならポリエステル混の生地が多いからペタッとしていたり、90年代になるとコットン100%の厚手の生地が増えるので白く毛羽立ちがあったり。2000年代以降は素材はそのままで生地が薄くなるので軽やかに映るんです」。

こうしてある程度、目星をつけてから、袖やネックの作り、タグに書かれた文字列などに目を凝らしていくのだという。注目すべきポイントの多くは山田さんが古着屋で働き始めた頃に先達から学んだこと。そのいくつかをごく簡単にレクチャーしてもらった。

まずはネックの作りで年代を把握する

Tシャツ
写真左端の赤いTシャツは80年代の一枚。縫い目が内側に入り込んでいるのが特徴で、「オーバーロック縫製」とも呼ばれる。中央のグリーンは2つ折りの襟でボディを挟み込んだ「バインダーネック」。どちらも90年代までよく見られる作り。右端は「オーバーロック縫製」かつ「平縫い」でダブルステッチに。ミシンの性能が上がったことで、シンプルだが頑丈な作りが成立した。2000年代以降の多くはこの形だ。
〈devknit〉のTシャツ
綿50%、ポリ50%で作られる、80年代の典型的な一枚。ボディはアメリカの〈devknit〉。
〈ジャックダニエル〉のプリントTシャツ
〈ジャックダニエル〉のプリントTシャツ。黒が多く、グリーンは珍しい。
アングラ漫画家ロバート・クラムのキャラ、ミスター・ナチュラルのTシャツ
プリントはアングラ漫画家ロバート・クラムのキャラ、ミスター・ナチュラル。

パキスタンメイド×アメリカのバンド=70年代

ジョン・レノンのプリントTシャツ
70年代にボディが作られた、ジョン・レノンのプリントT。貴重なデッドストックだ。首元はバインダーネックの仕様。
パキスタンメイドのTシャツタグ
もとより多種多様で、リプリント版も少なくないバンドT。信頼度の高い方法を一つ押さえるとしたら、ずばりアメリカのバンドTのうち、パキスタンメイドは70年代ものが多いということ。アメリカメイドに比べて編み目が緩い、といった特徴もあるが、正確な製作国はタグで確認を。Tシャツにはジョン・レノンの没年(1980年)が書かれているが、これは70年代末に作られたボディにプリントされたものと推測される。

タグは貴重な情報源。スケートTシャツで検証

〈サンタクルーズ〉のTシャツ
1973年設立、〈サンタクルーズ〉の一枚。タグは現行品でも使われているもの。タグとそれを留める糸はポリエステル混で、きらきら光っている。この作りは2000年代以降に多い。それが証拠に、タグの裏には「scskate.com」とのプリントも。
〈フックアップ〉のTシャツ
1994年にスタートしたアメリカの〈フックアップ〉。熱狂的なアニメファンの創設者が作ったプリントTだ。特徴は2枚タグ(「ス」の後ろにもう1枚)。多くの品質表記を賄うために生み出された苦肉の策で、90年代半ばから2000年代初頭に多く採用された。
〈ステューシー〉のTシャツ
〈ステューシー〉のアイコンの一つ、シャドーマンのTシャツ。通称「黒タグ」はこのブランドの80年代ものである証し。また「MADE IN U.S.A.」の表記も年代判定のヒントになる。のちの90年代半ば〜2000年代前半は生産拠点が中南米諸国に移るのだ。

袖と裾とコピーライトで当時モノか否かを推理する

Tシャツに限らず、古いものほど作りが簡素である、というのは一つの真理。このことが象徴的に表れているのが袖と裾のステッチだ。ごくざっくり捉えると、90年代以前はシングルステッチ、以後はダブルステッチが多い。当然、ダブルの方が耐久力がある。ミシンの技術の進歩によってこの仕様が当たり前になってきたのだ。

実際に見比べてみると、1983年製は袖も裾もシングル、97年ならどちらもダブル。その間、89年は袖はシングルで裾がダブルの混合型。過渡期を示す作りになっている。このステッチの年代と、プリントされたコピーライトの年が噛み合えば、当時モノの信憑性は高まるということ。

Tシャツ 袖部分
Tシャツ 裾部分
Tシャツ コピーライトのプリント
コピーライト
ヴィンテージTシャツ
1983年。
ヴィンテージTシャツ
1989年。
ヴィンテージTシャツ
1997年。

デッドストックのTシャツの取り扱いについて

作られた当時の未使用のままで手に入るデッドストックだが、当然新品とは状態が異なっている。何年も倉庫で眠っていたものだと、生地がホコリを吸って劣化していることも多い。店もチェックはしているが、極端なものだと布というよりも紙のようになっていて、洗濯機で洗うと散り散りに破れてしまうものもあるという。

染料の影響か、黒染めのデッドストックは破れや裂けに見舞われることが多いともいう。購入後まずは水に浸してホコリを抜き、手洗いする。干すときもハンガーに掛けず、平らに置くなど丁寧に。これさえやっておけば、以後は新品同様に着られる。

〈フルーツオブザルーム〉のTシャツ
アメリカのサーフショップの倉庫で発掘された〈フルーツオブザルーム〉のデッドストック。プリントはかつてアメリカで発表されたポルノ小説の表紙。各31,900円。

profile

〈STYLE202〉店主・山田憲吾

山田憲吾(〈STYLE202〉店主)

やまだ・けんご/1994年大阪府生まれ。古着屋〈ピグスティ〉で8年働き、2022年に自身のショップを明治神宮前にオープン。現在も年3ペースでアメリカで買い付け。

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