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【田奈】改札出て10秒に広がる農地、実は癒しの散歩道~ハマッ子直売所四季菜館

  • 2025.7.8

通勤電車の車窓から見える謎のエリア

長津田方面から渋谷に向かう東急田園都市線、その車窓から見える農地は通勤途上いつも気になっていた。夏は鮮やかなグリーンに覆われるから明らかに水田だろう。「米がない」と巷間言われる今こそ、余計に気になる。

その謎の場所を訪ねてみたよ、というレポートです。

写真上)駅のプラットホームから見ただけでこの風景

その名は「田奈」、改札出てもう見える広大な農地

下車駅は田奈(たな)。各駅停車しか停まらない駅ではあるもの、渋谷から急行に乗り、一つ手前の青葉台で各停に乗り継げば日中はおよそ40分でアクセスできる。新宿から小田急線でかなり郊外に出かけた際も車窓から田んぼは見えるが、都心からこれほど近い水田は他に例がないかもしれない。高級住宅地を抱えるイメージの東急線の中でも異色な存在だろう。

早速改札口を出てみよう。

写真上)改札口は1か所のみ 写真下)この通りがメインになっているようだ
出典:リビング田園都市Web
水をたたえた田で育つ稲

改札口を出て左、交番の前を通り、25歩で水田が見えた。夏の強い日差しを受けて、水を張った田んぼがキラキラ輝いている。

駅前の東急ストアを左に見ながら車の往来する通りを渡ると、そこが広大な農業エリアの入り口だ。

農道と思われる道は丁寧に舗装されているので、通勤やショッピングの靴のままで立ち寄れる。稲は植えられてからまだ1か月くらいなのだろう、ほとんどは高さは30センチ前後の感じだ。根元を覗き込むと、タニシが這い、オタマジャクシが泳いでいる。

昼過ぎ、子どもの歓声が聞こえるので振り返ると親子の姿があった。水田の脇で何か見つけたようだ。道のコンクリート壁に張り付くタニシを取ろうとしていた。

ここに引っ越してきて7年になるという及川さんは、田奈はお気に入りの場所だという。

「ここは食べるところとかもないし…、でも子どもの遊び道具はいっぱいある」。

風で飛ばされてきた木の枝、木の実、道の脇に生える草の穂…。及川さん親子にとってここは子どもの大切な遊び場であり、大事な子育ての場所になっていると感じた。

水深は浅いが親の同伴は必須
大きなタニシがいる
ママが作ったウサギ持ってポーズしてもらった

この道はまっすぐなので車の迂回路に使われそうだが、車道に接する道の入り口に鉄の柱が立っているので、車の通行は通常ない。田んぼに落ちる心配はあるが、親の同伴なら安全に過ごせそうだ。

取材で滞在している時間、犬の散歩に訪れる人も多く見られた。地元の人たちの大切な生活の道路になっている。

癒しの動物たち

名物のヤギがいると聞いて歩いていると、2頭のヤギが草を食んでいた。地元の人が入れ替わるようにして2頭の姿を見てゆく。ヤギは実は気性の荒い生き物と聞いているが、草食の動物はその姿を見ると癒される感じがする。余談だが、家族からは私のことを「ロバとかの草食獣のイメージ」と言われたことがあるので、2頭のヤギを見ながら自分の姿を想像した。

ニックネームが付いているそうです
癒されます
奥は田奈駅。日暮れとともに現れた猫が通行人を眺める

駅を出て散策した道の長さは400メートルくらいだろうか。途中で右に曲がるとヤギに出会い、左に曲がると植木畑や野菜畑だった。近ごろは「食育」という用語のように、日ごろ口にする物の作られ方を知ることの大切さが説かれるが、ネットの映像ではなくこうして実際に見ることが出来る場所が、こんなにも身近なところにあるというのは幸いなことと思う。

先日下見に訪れた際は、水田の中にカルガモや大型のサギ類の姿もあった。畑とは違う生態系の観察の場にもなるかもしれない。夜は蛙の大合唱になると、通行する方から聞いた。

ヨコハマは野菜の産地

道沿いところどころに野菜の直売所がある。午後には売り切れてしまうようだ。

「あそこの農協へ行くと、この辺りで採れた野菜が並んでいますよ。米も並びます」。

家庭菜園の世話をしていた女性から聞き、早速指さす方向を目指す。初めて訪れた土地なので何が見えるか興味津々で歩くが、水田の続くエリアから見るとけっこう距離がありそうだ。

駅からの ”散歩道” を途中で右に折れ、交通量のある道路をこどもの国方向へ歩く。カラフルなタイルを貼ったような建物の向こう側に、蔵のような意匠の建物があった。「四季菜館」の看板が見える。「ハマっ子直売所」という表示も見えるが、これは横浜市内産に限った生産物を扱っているという意味だという。農協の大きな直売所だ。

今の時期だと並んでいる野菜については「田奈、長津田産が8割を占める」と店長さんから伺った。

「スーパーよりも新鮮!がこの店のウリです」。

ヤギの小屋の隣にある無人の直売所。とうもろこしなど
出典:リビング田園都市Web
採れたばかりの野菜が並ぶ農協の直売所

梅雨明けが宣言されようかという強い日差し、気温30度を超える日の平日だったが、ひっきりなしに客が訪れていた。とうもろこしはほぼ売り切れ。米は収穫前の時期であるためか見かけなかったが、店内に並ぶ野菜の量からヨコハマは野菜の産地であるのだと認識した。

8月からは地元産の梨が並ぶという。

30年変わらぬ風景

サラリーマン時代ずっと気になっていた場所をようやく訪ねた。長く暮らしている方によると、ここは「30年変わらぬ風景」なんだという。

東急電鉄が田園都市線をこの地に通したのは1966年(昭和41年)だが、沿線の他の地域が驚くほどの変貌を遂げ、場所によっては当初移り住んだ住民の高齢化により世代交代が必要な段階になっていると感じる。

人々が暮らす場所に多様な姿があるのは望ましいことと思う。

取材の過程で、好んで田奈に移り住んだという声を何度か聞いているので、姿が大きく変わることなくこのエリアがこの先も残れば素敵なことだと思う。

出典:リビング田園都市Web
出典:リビング田園都市Web
日没直後は有名な米どころに負けない風景だった

当然ですが農地への無断立ち入りは禁止です。地権者や耕作している方とトラブルにならないようにご注意ください。

なお、このレポートは6月下旬に現地取材しました。 (取材と執筆 : 旅人カメラ)

農協の直売所「四季菜館」については下記ご参照ください。

「ハマッ子」直売所 四季菜館
〒227-0064 神奈川県横浜市青葉区田奈町52-8
営業時間 10時~17時
定休日 毎月第1火曜日、年末年始ほか
URL:https://life.ja-group.jp/farm/market/detail?id=743

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