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「そりゃそうなるわ…」原作者が“自ら疑問を呈す”異例の事態…だけど米版への起用を望んだ“圧倒的主題歌”が光る名映画

  • 2025.7.20

『ゲド戦記』は巨匠・宮崎駿監督の息子、宮崎五朗さんの初めての監督としてのデビュー作品のため、公開前より注目を集めていました。原作ファン、ジブリファンからの評価は賛否両論!原作からの改変に非難殺到、原作者も否定的な意見を述べる事態に。今回はそんな“原作者が思わず口を開いた映画”5選をセレクトしました。本記事では、第1弾として『ゲド戦記』をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です。
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます。

偉大なる魔法使いゲドの世界を救う壮大な旅物語

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(C) 2006 Ursula K. Le Guin/Keiko Niwa/Studio Ghibli, NDHDMT
  • 作品名(配給):『ゲド戦記』(東宝)
  • 放送開始日:2006年7月29日

あらすじ

魔法使い、人間がそれぞれ住む場所がすみ分けされており、均衡が保たれていた世界が突如、異変を起こします。魔法使いが魔法の力を失ったり、龍が人間の世界に現れるなど混乱の最中、魔法使いのゲド(声:菅原文太)は、異変の原因を探る旅に出に出ました。旅の途中でゲドは、エンラッドの王子アレン(声:岡田准一)をはじめ、多くの出会いを得ながら様々な出来事に遭遇します。魔法使いゲドの若い時から晩年までを描いた壮大な冒険ストーリーの結末は…。

原作ファンから非難も…「ジブリ作品で一番好きかも」絶賛の声

映画『ゲド戦記』の原作は小説で、アーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』シリーズと原案の絵物語『シュナの旅』を組み合わせた作品となっています。映画では原作にはない設定や、オリジナルのストーリー展開が存在しており、原作ファンは不満を隠せない様子。

「アースシー」と呼ばれる世界が舞台で魔法使いと人間、龍などが登場する点は共通しています。登場するキャラクターのデザインは、宮崎駿氏のジブリ仕様になっており、視覚的にも違いが生じていますが、ジブリ作品なの当然といえば当然。しかし、原作ファンから「原作者を侮辱している」「作画の粗さが目に余る」など、非難の声も。

一方で劇場で観たファンは「ジブリ作品で一番好きかも」「深い物語が心に刺さった」「世界観が素晴らしい映画」などという声も多く寄せられていました。

好みの問題もあるでしょうが、原作がある映画というのはどうしても時間を収める点においても改変はつきものです。映画は映画、原作は原作と、別物として楽しむのが良いのかもしれませんね。

原作者本人が疑問を呈した作品

映画『ゲド戦記』は、原作ファンからだけでなく、なんと原作者本人からも声があがったのです。原作者である故アーシュラ・K・ル=グウィン氏は、以下の点について言及しています。

  • 原作精神からの逸脱
  • 物語の不統一性
  • メッセージ性の不明瞭さ
  • 描写

特に、父親殺しの意味不明さや、悪役のクモを倒して解決してしまうストーリーに懸念していたようです。

そもそも、事の発端として、アーシュラ・K・ル=グウィン氏は、映画化に際して、宮崎駿監督が全責任を持つということで了承していたようで、実際の制作にはほとんど関わらず、息子の宮崎吾朗氏に任せていた事実があります。さらに、息子に任せて自分は引退するつもりだと話していたにもかかわらず、引退せず次の作品に取り掛かっていたことにも疑問を感じたとのこと。

一方で「全体としては美しい映画」であること、ゲド役を担当した菅原文太さんの声が素晴らしいということ、手嶌葵さんによる主題歌『テルーの唄』に関しては、賞賛しています。特に『テルーの唄』に関しては、アメリカ版の吹き替えが行われたとしても、この歌をそのまま使用してほしいと要望したようです。SNSでも「本当に素晴らしい」という声が。

アーシュラ・K・ル=グウィン氏としても、原作と映画は異なって当たり前だと理解しており、その上であまりにも忠実さに欠けること、原作読者と原作自体を軽視していることに対して疑問を呈したとのこと。SNSでもこのことに対し「そりゃそうなる」と同情する声もあがっていました。

鑑賞する側としては、別物として楽しむことができますが、子供のように作品を愛する原作者にとっては、受け止めがたい事実になってしまったのでしょう。非常に難しく、センシティブな問題です。

岡田准一が「ゲド戦記」でアニメ声優デビュー

アーシュラ・K・ル=グウィン氏は、ゲドの声を演じる菅原文太さんを絶賛していました。一方、視聴者からは、アレンの声も好評で「落ち着いていて安心できる声」「繊細さが伝わる」「耳障りの良い声」などの意見が集まっています。

アレンの声を担当したのは岡田准一さんです。岡田さんは映画『ゲド戦記』がアニメ声優のデビューで、始まる前から意欲的だったとか。当時、岡田さんは映画. comで次のように語っています。

子供のころから観ていたジブリ作品に参加できるのはとても幸せです。大切に声を演じていきたいです
出典:V6岡田君が「ゲド戦記」でアニメ声優デビュー(映画.com)2006年2月14日 

幻想的で壮大な物語映画『ゲド戦記』、小説の原作と映画、それぞれの楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか?


※記事は執筆時点の情報です