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『隣人の騒音』に壁ドンしたら…“傷害罪”になるって本当?!→騒音トラブルでやってはいけない“NG対応”とは?【弁護士が監修】

  • 2025.7.30
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

夜中に響く足音、深夜のテレビの音、壁越しに聞こえる笑い声――。そんな「隣人の騒音」に思わずイラッとして、“壁ドン”してしまった経験がある人はいませんか?
でもその行為、思わぬ犯罪リスクを招く可能性があるのです。
今回は弁護士に、騒音トラブルでやりがちな「壁ドン」が招く法的リスクと、冷静に問題を解決するための正しいステップを教えてもらいました。

「壁ドン」で訴えられることも!?知っておくべき法的リスク

感情に任せて壁を叩いてしまっただけでも、以下のような責任が生じる可能性があります。

刑事責任

  • 器物損壊罪(刑法261条)
    壁を破壊し、機能を損なわせた場合は成立。
     3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料に処せられる可能性あり。
  • 傷害罪(刑法204条)
    継続的な壁ドンにより、相手がノイローゼなどの症状を発症した場合に問われることも。

民事責任

  • 相手に精神的苦痛を与えた場合、正当な理由が認められなければ損害賠償義務を負う可能性も(民法709条・720条)。

壁ドンをした結果、隣人から被害を訴えられた場合、以下のような状況で法的責任が重くなる可能性があります。

  • 騒音がないのに理不尽な壁ドンをした
  • 相手に精神的ダメージを与えた
  • 壁を破壊した、物が壊れた
  • 継続的に繰り返していた

たとえ騒音に悩まされていたとしても、「自衛」や「怒り」のつもりで壁を叩く行為は、法的には正当化されない可能性があります。

感情的にならず、まずは「証拠の確保」を

騒音トラブルに直面したとき、感情的になって「壁を叩く」前に大切なのは、まず「記録する」ことです。
口頭で訴えても、状況を正確に伝えるのは難しいことが多いため、客観的な証拠を残すことがトラブル解決の第一歩になります。

  • 音の種類・時間帯・頻度などをメモする
  • スマホで録音・録画を行う
  • 騒音計で数値を測るのも有効

これらを記録してから、管理会社や大家さんに相談しましょう。
その際には「通報者が特定されないように」秘匿性を確保してもらったうえで対応してもらうことが重要です。

解決しない場合の“法的アクション”3つ

騒音問題が一向に改善されない場合は、以下の3つの法的手段を順を追って検討しましょう。

1. 内容証明郵便での交渉

まずは、内容証明郵便を送って相手に意思を伝えるという方法があります。これは裁判を起こす前の“交渉”として使える手段で、調停や訴訟に比べて早期に解決できる可能性があるというメリットがあります。

ただし、あくまで相手の“自主的な対応”に委ねられるため、強制力がないという点はデメリットです。相手が無視すれば、それ以上の対応はできません。

2. 民事調停

次の手段として考えられるのが、民事調停の申し立てです。これは、調停委員という第三者が間に入って話し合いを進める制度で、冷静に問題点や妥協点を探ることで、トラブルの解決につなげやすくなるというメリットがあります。

ただし、あくまで当事者同士の“合意”が前提のため、話し合いがまとまらなければ解決には至りません。また、調停は1〜2か月に1回程度のペースで進むため、場合によっては、交渉よりも解決までに時間がかかることもあります。

3. 訴訟(裁判)

最後の手段としては、訴訟(裁判)を起こすことが挙げられます。メリットとしては、裁判官の判決が出れば「債務名義」を得ることができ、それに基づいて強制執行(差し押さえなど)も可能になるため、相手が応じない場合でも強制的に解決へ進められるという点があります。

一方でデメリットは、訴訟は1〜2か月に1回ほどしか期日が開かれず、手続きが長引きやすいこと。また、双方が書面で主張を出し合うため、準備にも時間と手間がかかるという点が挙げられます。そのため、交渉や調停と比べて、解決までに時間がかかりやすいのが実情です。

「関係悪化」を避けつつ、効果的に解決するには?

騒音トラブルは、感情的になりやすい問題です。特に隣人と直接やりとりするのは、逆恨みや嫌がらせなど新たなトラブルを招くリスクがあります。
そのため、以下のような段階的な対応を取ることが理想的です。

  1. まずは管理会社や大家に相談する
    共用部に張り紙をしてもらったり、相手のポストに注意文を入れてもらうなど、第三者を通じた間接的な注意喚起でトラブルを防ぎましょう。
  2. 改善されない場合は、警察に相談
    繰り返される迷惑行為は、軽犯罪法違反に該当する可能性もあるため、警察に相談して注意してもらうことも選択肢です。
  3. 最終的には弁護士へ相談を
     録音や記録などの証拠をしっかり残したうえで、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。状況に応じた適切なアドバイスや、法的手段の選択肢を具体的に示してもらえます。

このように段階を踏んで、冷静かつ計画的に対応することが、騒音トラブルをこじらせず解決へ導くカギとなります。

「壁ドン」は法的リスクの引き金に

騒音に悩まされるつらさは当然のものですが、対処法を間違えると、自分が“加害者”として責任を問われる可能性もあります。

だからこそ、感情的になる前に「証拠を集める」「第三者を通じて冷静に対応する」という基本を押さえておくことが何より大切です。

そして、我慢の限界を感じたときは、弁護士に相談することが、トラブルをこじらせないための最善策です。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。