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医師「逆効果になっているかも」→かえって『夏バテ』を招いている…知られざる“NGな飲み物”とは?

  • 2025.7.28
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

暑い夏、こまめな水分補給は熱中症対策の基本ですよね。でも、意外にも「これ飲んでるから大丈夫!」と思い込んでいる飲み物が、実は夏バテを招いてしまうことがあるんです。暑さによる体力低下を防ぐどころか、逆効果になってしまう原因とは?

医師の視点から、知られざるNGな飲み物を解説しながら、正しい水分補給のポイントをお伝えします。

体が教えるSOS!夏バテは体の総合的な不調

夏バテとは、暑さによって体に負担がかかり、さまざまな不調が現れる状態のこと。具体的には、疲労感、食欲不振、めまい、倦怠感などが代表的ですが、単に汗をかくことや寝苦しい夜だけが原因ではありません。

まず注目したいのは「自律神経の乱れ」。暑さで体温調節が追いつかず、体は汗を出して熱を逃がそうとします。このとき交感神経と副交感神経のバランスが崩れやすく、体調が不安定に。加えて、汗で体の水分やミネラルが大量に失われることも大きなポイントです。特に塩分やカリウム、マグネシウムなどの不足は筋肉の疲れやだるさ、集中力低下を招きます。

それだけではなく、暑さによる食欲減退で栄養が不足したり、夜の睡眠の質が落ちることも重なって、体力の回復が難しくなります。このように「暑さによる複合的ストレス」が夏バテのメカニズムなのです。

<医師からのポイント>夏バテは、体が発する重要なSOSサインです。だるさや食欲不振といった症状を放置すると、めまい、頭痛、吐き気などを伴う熱中症に進行する可能性があります。特に、意識が朦朧とする、汗がかけなくなる、体温が異常に高いといった症状が見られる場合は、命の危険があるため、直ちに医療機関を受診するか、救急に連絡するなどの対応を。

水分補給の落とし穴!夏バテを加速させる飲み物

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

水分補給=とにかく水分を摂ればいい」と思いがちですが、『何を飲むか』はとても大切です。

たとえば冷たい氷入りの水。冷たい飲み物は一時的に心地よい反面、大量・頻回の摂取は胃腸の働きを鈍らせることがあります。結果的に食欲が落ち、栄養吸収力も下がるため、体力回復が妨げられてしまいます。一方で、運動直後など体温が上がっている状況では冷たい飲料が体温低下に役立つ場合もあるため、状況に応じて使い分けることが大切です。

さらに、甘い清涼飲料水やジュースも要注意。大量の砂糖が含まれているため、血糖値が急上昇急降下することで疲労感が増すことがあります。急激に糖分を摂取しすぎると糖尿病予備軍の方を中心に、「ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)」と言う重篤な病態を発症することもあり要注意です。また、糖分の多さから腸管からの水分吸収を遅らせることがあります。

そのため、すぐに水分を補給したい状況では、かえって非効率的になるのです。また浸透圧の関係で体内への水分吸収効率が下がることがあり脱水を促進しかねません。ちなみにスポーツドリンクも糖分やナトリウムは含まれていますが、飲み過ぎには注意が必要です。日常の喉の渇きには水・麦茶を基本にし、汗を多くかいた時だけ適量のスポーツドリンク、さらに水分が必要な際には経口補水液(Oral Rehydration Solution、ORS)を選びましょう。

アルコールや高カフェイン飲料(エナジードリンクなど)言わずもがな。利尿作用があるため水分を排出しやすく、脱水症状のリスクを高めます。暑い季節に冷えたビールやチューハイを飲むのは爽快ですが、がぶ飲みは夏バテを悪化させるもとになるんです。高カフェイン飲料も利尿作用・心拍数増加・睡眠質低下を助長し夏バテ悪化要因になりえます。

夏の水分補給におすすめの飲み物

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

では、夏の水分補給で体に優しく、夏バテを防げる飲み物とは何でしょうか?まず注目したいのは、常温またはややぬるめの水です。冷たすぎない飲み物は胃腸に負担をかけにくく、内臓の働きを助けてくれます。

スポーツドリンクは適切に使うと効果的。運動後や大量の汗をかいた時に、塩分と糖分をバランスよく補給できる優れものですが、日常の水分補給としては摂り過ぎに気をつけましょう。また、どうしても水分の摂取が難しい場合は塩分補給用の飴などを摂取するのも良いでしょう。

飲み物の温度以外にも、こまめに少量ずつ摂取することがポイント。いっぺんに大量に飲むよりも、体がしっかりと水分を吸収できます。さらに、食事でビタミンやミネラルをしっかり摂ることが、夏バテ予防には欠かせません。

※これらは、ご高齢の方・お子様・心不全・腎不全・利尿薬内服者など“通院中の人”には当てはまるとは限りません。まずは主治医へご相談ください。

夏を元気に乗り切るための水分補給術

暑い季節の水分補給は「何を」「どのように」飲むかが大事。「冷たすぎる飲み物」「砂糖やカフェインが多すぎるジュース」「アルコールの過剰摂取」は知らず知らずのうちに夏バテを招いてしまいます。医師の観点からは、体を冷やさず胃腸に負担をかけない常温の水や麦茶を中心に、また食欲不振時は具だくさん味噌汁や冷やし茶碗蒸しなど、適度なミネラル補給を心がけるのがベスト。

ちょっとした飲み物の選択や飲み方の工夫で、元気な毎日を手に入れましょう!


監修者:林裕章(はやし・ひろあき)
林外科・内科クリニック(https://www.hayashi-cl.jp/)理事長

国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域を支えている。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。
日本外科学会外科専門医、日本抗加齢医学会専門医